Bach 管弦楽組曲第1番ハ長調BWV1066/第2番ロ短調BWV1067/
第3番ニ長調BWV1068/ 第4番ニ長調BWV1069
(レイモンド・レパード/イギリス室内管弦楽団)


PHILIPS 426-145-2 Bach

管弦楽組曲
第1番ハ長調BWV1066
第2番ロ短調BWV1067
第3番ニ長調BWV1068
第4番ニ長調BWV1069

レイモンド・レパード/イギリス室内管弦楽団/ニール・ブラック(ob)/マーティン・ガット(fg)/リチャード・アデニー(fl)/ジョン・ウィルブラハム(tp)/フィリップ・ジョーンズ(tp)/マイケル・レアード(tp)/レイモンド・コーエン(v)/レスリー・ピアソン(cem)

PHILIPS 426-145-2 1968年録音

 Bachの管弦楽組曲との出会いはロリン・マゼールヘルベルト・カラヤン辺り、あと偉大なるパブロ・カザルスかな?マゼール盤は既に手許にないけれど、カラヤン辺りじっくり再聴したいもの。小さい編成なのにやたらと”大きな”音楽に感じて、かつては大指揮者のレパートリーでした。世評高いカール・リヒター(1961/62年/音質最高)の峻厳なる重厚さにはちょいとご遠慮気味、軽快軽妙自在なるトレヴァー・ピノックとの出会いが作品印象をすべて変えてしまいました。爾来、古楽器一辺倒へ。「本来オリジナル版は小規模な室内合奏を想定されていた」(Wikiによる)とのこと。

 Raymond Leppard(1927ー)はご存命のようですね。1970年辺り迄はバロック音楽専門、BachHandel辺り、かつてLPにて馴染んだものです。やがて彼はフル・オーケストラの指揮者へ転身、更に亜米利加に活躍の場を遷したとのこと。来るべき古楽器隆盛時代に、現在生き残ったモダーン楽器録音は(上記言及した)ビッグネームばかり、それでもパイヤール、ミュンヒンガー辺りにはオールド・ファンがついているかも知れないけど、レイモンド・レパードはすっかり忘れられ、挙句PHILPSも身売り、いまや貴重盤かもしれません。

 英国名手をズラリ揃えて、たしかレイモンド・コーエンはロイヤル・フィルのコンマスだったし、アデニーはロンドン・フィルの首席でしたっけ。トランペットも著名な人ばかり。浪漫的重厚さを廃してスッキリとした響き、古楽器系のようにキレのあるリズムに非ず、穏健かつオーソドックスなサウンドを誇って、耳あたりがとてもよろしい。フツウと云えばフツウ、オモロない、おとなしい、刺激が足りないと感じる方もいらっしゃることでしょう。

 第1番ハ長調BWV1066は三本のオーボエが活躍して、冒頭からウキウキする舞曲連続。第3番第4番同様立派なスケールのフランス風序曲に威圧感はありません。表現はあくまで穏健バランス。じつはソロ・クレジットは抜けていて名手ニール・ブラック(先年2016年に亡くなったそう)は類推、あとはジェームズ・ブラウン、セリア・ニクリンでしょうか。

 実質的にフルート協奏曲である第2番ロ短調BWV1067は、ほの暗い浪漫に充ちた魅惑の旋律、モダーン・フルーティストの腕の見せ所、19世紀浪漫の残滓世代にはいくらでもたっぷり歌いたいところ。たしかパブロ・カザルス(1966年)の重く”揺れる”風情には閉口したもの(オルヌルフ・ガルブランセン(fl)のヴィヴラート過多も)。スティーヴン・プレストン(Flauto traverso)の軽快躍動と出会ってから、作品イメージがひっくり返ってしまいました。こちらリチャード・アデニー(fl)中庸の美、古楽器演奏を素っ気ない、急ぎ過ぎと感じられる方にはぴったりかと。

 第3番ニ長調BWV1068/第4番ニ長調BWV1069はトランペット+ティンパニ大活躍!マゼールの大きさ「アリア」の美しさに目覚めたのは中学生時代(17cmLP)、往年の名指揮者はラストにルバートを掛けて朗々たる詠嘆に締め括る・・・これもトレヴァー・ピノックとの出会いに天地ひっくり返りました。ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調を聴く度「トランペットとリコーダーの音量バランスが納得いかん」と思ってきたけれど、古楽器時代の楽器はもっと素朴に鳴らぬものなのですね。旧態浪漫大柄な響きのアンチとしてのレパードの問題提起、今となっては中途半端な”大人しい演奏”になってしまったのかも。それでも名曲は名曲。

 著名な「G線上のアリア」(第3番ニ長調第2楽章)ではレイモンド・コーエン(v)による、装飾音の水準超えた、かつて聴いたことのない美しい旋律が延々と奏でられます。これはレパードの研究成果なのでしょうか。音質は現役だと思います。

(2017年8月14日)

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written by wabisuke hayashi