●外伝へ

吉例【♪ KechiKechi Classics ♪】2009年勝手に各自アカデミー賞

いつの間にか年末月へ。今年も募集いたします。2003年に偶発的に開催され、今年で既に7年目。相次ぐ総合論壇誌廃刊にみられるように、日本ではトータルの哲学が語られなくなっている・・・こととはまったく無関係の話題であります。

音楽話題じゃなくてもOKですよ。年々感動が薄くなる感触がある今日この頃、しみじみと一年を振り返りましょう。お仕事多忙中だろうが、そこをなんとか!

投稿者には「ふるさと創生基金」より金一封が贈呈されます。(ウソ)

■2008年
■2007年
■2006年
■2005年
■2004年
■2003年


■遅れにおくれ:音楽部門(長文失礼) ヘムレン 

音楽部門:アレクサンドル・ラザレフ指揮日本フィル、プロコフィエフ全曲演奏の初回、1番(古典)と7番(青春)、およびそのLive録音CD(EXTON)

今年の<勝手にアカデミー賞:ヘムレンの場合>の音楽部門の最大ニュースは、アレクサンドル・ラザレフ師(またか?!)が、なんと日本フィルの常任指揮者になったことだ。このニュースを聞いたのは一昨年だったけれど、そのコラボが昨年始まった。

ラザレフ・日本フィルの組み合わせは、これまでに何度か、客演という形で実現していた。たしかショスタコーヴィチやキャイコフスキー、グラズノフといったロシアの作曲家が演奏された。その中の1度が、ぼくが不覚にも涙したという、くらんのショスタコーヴィチ11番のシンフォニーでした。

常任指揮者就任初のライブは1月に東京で開かれた。ラザレフ・ファン(追っかけ?)を自認するぼくが行かないわけないでしょ。演目はドボルザークの交響曲9番。随所に素敵なフレーズがあるものの、この演奏を聴いていたぼくはあまりぴんと来なかった。数年のブランクの影響か、などと思ったが、後にでたCD(Exton)で聞いてみると、これが思いのほか良い。ライブと録音ってやっぱり印象違うんだね。

その数日後に行われたのが、プロコフィエフ全曲演奏の初回、1番(古典)と7番(青春)が演目だ。特筆すべきは7番の演奏だろう。1楽章の陰鬱とした、下手をすれば時代的な憂鬱、そして喧騒。さらには長調に転じ、夜明けを連想させるのびのびとしたパッセージ。このあたりでぼくは、ラザレフに手を惹かれてプロコフィエフの音楽世界で遊泳を始めていた。第2楽章は、ちょっといたずらっぽい雰囲気。楽器が入れ替わり立ち代り主題を弾き、見ているだけで楽しい。3楽章のアダージョは冒頭から泣かされる。人生の楽しさ、苦しさ、儚さといったものを感じさせる。

このコンサートは間違いなく今年のNO.1のコンサートだ(今年はたいした数いっていないけれど)。またそのライブ録音のCDをEXTONさんがリリースしてくれた。

その後、2番、3番のコンサートにもいきました。たぶんEXTONさんは本気で全曲を出すつもりですね、きっと。ほんとに頭が下がります。拝みたくなっちゃう・・・パチパチ。

■ ヘムレン書籍部門 

書籍部門:白石昇著、「津波―アンダマンの涙」、メコン社刊

「情けは人のためならず」、とい言葉がある。これをぼくは、情けをかけてしまうと人は堕落するから、人のためにならない、という意味かと思っていた。しかし本当はそうではなく、情けは人のためではなく、自分のためなのだ、人に優しくすることは自分のためになるのだという意味だと知った。

それを思い出したのは、もう5,6年前からの友人である昇ちゃん(本名は白石昇さんです)が、この本、「津波―アンダマンの涙」の中で書いていた――タイ語ではナム・チャイ、つまり心の水という言葉があって、これは日本語でいえば「情け」に当たるのだと。津波直後、2005年元旦の日記のタイトルが「ナム・チャイ 心の水」だ。タイ人の心情でいえば、「人の心には水があって、その水が乾きそうな人には潤っている人水を汲んで与える」。

その元旦を昇ちゃんは、2004年12月26日に起こったスマトラ沖地震と、それによって引き起こされたタイのアンダマン海側地域の津波被害。この時、昇ちゃんは日本からの津波被害取材チームの助手として、津波に襲われた現地で過ごしている。この本は津波の被害を取材する某メディアの取材者といっしょに被害地を回った昇ちゃんの3週間あまりの日記をベースにした本だ。

この日の日記は、タイの国民的歌手エート・カラバオが作曲してみずから歌った、「アンダマンの涙」に由来している。この曲は津波被害の救済のためのチャリティソングとして作曲され、津波発生から早くも5日後の12月31日にはネットやタイのメディアを通して流れていた。ちなみに、日本の新聞にものった、「ツナミって何だ、サシミだったら知ってるけど」というフレーズは、この歌の一節だ。

この曲のメッセージは、最後のフレーズ、♪心の水を流してアンダマンの涙を拭おう♪にあるように、タイの国民が少しずつ心の水を送って―つまりちょっとの心遣いを集めて―津波によって心の水が乾いてしまった人たちを潤してあげようというものだ。

元旦の昇ちゃん日記を読んでいたら、ふと自分の記憶と繋がった。それは津波からおよそ10年前。阪神淡路大震災が起きた時のこと、ぼくはこの災害の現場を見ておかなければいけないと思った。ぼくの仕事は都市を作ることだし、都市防災にも職業的に興味があった。自分の目で見ないと何も語れない。だから地震発生から1ヶ月ほどたったころに神戸にいった。阪神も阪急もまだ開通していなかったから、行けるところまで私鉄でいき、そこからひたすら被災地を歩いた。三宮の駅のあたりではまともに立っている建物がないくらい、地震の被害は露骨で徹底していた。長田の延焼火災の後は、ぼく自身は経験のない戦後の「焼け跡」を思わせるもので、胸がつまり息苦しくなった。

タイ人に心の水があるように、日本人には情けがあった。被災地には「うどん百円」なんて看板が出ていて、困った人が助け合う姿が目にしみた。朝から何も食べていなかったから、そのうどんを戴いたのだけれど、なにか救援物資を横取りしたような割り切れない気がした。その心情は、昇ちゃんの元旦日記にある、被災地で食べ物をもらったときに「いけないものを食べてしまったような」気分と同じ脈絡のものだ。

この本を読んでいて感じるのは、伝える言葉ということだ。報道が書き立てることによって、仄かに関心をもち、報道が書かなくなると簡単に風化していくこと、それは事件報道にとって避けて通れないようにも思えるが、昇ちゃんはそのこと自体を認めないぞといっている。津波被害をもう終わったことのように言い放ったブログの書き込みに、「アホか、お前は」と激しく反応した昇ちゃんは、いままさしく「くさやのタンクに頭を突っ込んだ」ような腐臭を嗅ぎながら、被災地を歩いている。生のことばで伝えないと、何も伝わらないし、もう終わったと勘違いするやからも出てくる。

助手の仕事が割りのいいバイトであることはともかく、ふとそこには表現者としての昇ちゃんが見え隠れする。12月28日、津波発生2日後の日記にこうある。「不謹慎かもしれないが、私は今回の仕事で得た情報を、のちのち自分の言葉で伝えることができることに対してワクワクしているのかもしれなかった。」そのワクワクの結実がこの本だ。

津波報道がとっくに止み、その記憶が茫洋として溶解しようとしている今、この本が出版された。被災地の復興はかなり進んだようだけれど、被災地にながされた涙(ナム・ター、目の水)、そしてそこにもたらされた情け(ナム・チャイ、心の水)を忘れてはいけない。


■ではトップバッターを ぶりちょふ

今年は北海道転勤となって生活が大きく変わりました。音楽環境も変わってあまりコンサートに行けなくなったこともあり、表向き?音楽のサバティカルイヤーとすることにしていました。それでも道内の音楽会がそこそこあって楽しむことができました。そんな1年の振り返りです。

◎徒歩通勤

そもそも小学校に通って以来ですよ、徒歩なんて。中学からは(隠れ)自転車通学、大学は電車で通学、社会人になったら電車や車通勤でしたから。片道20分の歩行は運動としては物足りないけど続けるには丁度良いです。暖かい時期なら緑いっぱいの公園を抜けていきます。今はニット帽に手袋が必須。一昨日(12/11)出社時の気温は−10度でした。まだまだ寒くなるんでしょうね。

◎子供と一週間ドライブ

上の子が中学生になったこともあり、盆休みに子供二人だけで北海道にやってきました。キャンプ場のバンガローからリゾートホテルまで滞在。子供が小さなときから単身赴任なので貴重な機会でした。中でも道北美深町にある羊牧場民宿ファームイン・トントでは極上の羊肉の食事を楽しみ、産まれたばかりの赤ちゃん羊へミルクを飲ませるなど素晴らしい体験ができました。この牧場は村上春樹の初期の名作「羊をめぐる冒険」のモデルになったと考えられているようです。走行距離は1400Km。

◎地方オーケストラ万歳

3月までは仙台、山形のオーケストラを聞くことができ、前者は2008年の地方オーケストラフェスティバル(大阪シンフォニカ)の名演を再現した大山平一郎指揮するブラ2に感激。後者は60名と小編成のオーケストラから繰り出されるブルックナー5番のクリアな響きが忘れられません。3月にはシュナイト指揮する神奈川フィルによるブラームス。二重協奏曲の緩徐楽章でのあたかも春の足音を感じさせるような暖かな音色が出色でした。北海道に移住後は札響のコンサートを楽しんでいます。絶滅危惧種指揮者エリシュカによるドヴォルザークやスメタナ「わが祖国」での熱演と、ボッセによる独逸正統派の響き、高関健の「カルミナ・ブラーナ」、ベルリン・フィルを退職し北海道に移住した安永徹をリーダーに据えたシューベルトやハイドンなど収穫が多かったです。事業仕分で補助金がカットされないよう応援したいです。

◎PMF

毎年初夏に北海道の音楽ファンを羨んでいたPMFに初見参。開設20周年の記念でエッシェンバッハが指揮するマーラー「復活」、人間の声に無条件に感動しました。大通公園でのウィーン・フィルを中心にしたウィンナワルツのコンサートも楽しさいっぱいです。教育音楽祭ということで必ずしも諸手を挙げての賞賛してばかりはいられないけれども、若者らしい直向きなところが良いですね。ホール会場であるKitaraは噂に違わず素晴らしい音響。ホワイエが広くて国際的なフェスティバルにも耐えうる環境です。

◎初デュエット

今年のウィーンオフでは初めて女声とオペレッタでデュエットすることができました。カールマン「伯爵令嬢マリッツァ」のSag ”Ja”,mein Lieb.Sag ”Ja” 。天にも昇る心地よさ、感激しました。歌といえば札幌「みんなのチャリティコンサート」でR.シュトラウス『献呈』でリートにも進出?しました。

◎やっぱりブル8が好き

北海道移住後の唯一の?サバティカル破りはブロムシュテット/チェコ・フィルによるブルックナーの8番でした。立体的な音響は日本のオーケストラからはなかなか聴けないような気がします。堅牢な構造を体現し、かつ熱演で、終演後はオーケストラが退場した後にも指揮者が呼び出されていました。かつて朝比奈やヴァントが亡くなったときに、もはやブルックナーで感動できなくなるのかと心配したものですが、その後もハイティンクや今回のブロムシュテットでも大いに感動できていることに、ある種の安心感を持ちました。

◎訃報 今年の訃報で衝撃を受けたのは忌野清志郎のそれでした。10代のころも基本はクラシック・ファンでしたが、良く聴いていたポップ・ミュージックはRCサクセションでした。カラオーケストラはあまり歌わないけれど、たまに「雨上がりの夜空に」とか歌うんですよね。クラシックでは若杉弘。ケルン放送響を退任するときの来日公演でマーラーの9番を聴きました。凄まじい集中力でフィナーレの最後は息ができませんでした。最後に聴いたのは朝比奈が亡くなった翌日の大フィルの第九でした。一部には朝比奈が振っているかのような演奏だったと伝えられることが多いのですが、むしろ自分には若杉らしい細部まできっちりと目を配った美しい演奏だったように記憶しています。

◎クルマ旅、飛行機旅

元々鉄砲玉?で週末は家にいないのですが、何せ住まいが北海道ですから遠近問わず出かけてしまいます。高速料金割引が利いてコンサートで札幌というのが一番多かったのですが、函館から450Kmを一気に帰還したり、地元帯広のモール泉に飽きて(不遜だ)近郊の上士幌町へ湯治に行ったりとよく出歩きました。単身元への帰省や本社への出張には飛行機を使います。地元空港はJAL単独運行で、報道されている再建問題で廃止や減便が懸念されます。月に1度の帰省には知恵を絞って先得割引やネットの格安航空券を活用。帰省先名古屋への航空便は1便/日で帯広発では滞在時間が短くて、東京で金曜日に前泊して新幹線という不便を強いられています。以前から好んで利用している横浜のホテルではフルーツ盛りが部屋に供されるようになり、ちょっぴり嬉しい。マイレージが貯まり余裕で一往復できるくらいになったのですが、このまま貯め続けて3年後のリフレッシュ休暇に欧州まで行けると良いなと考えています。

◎PCを持って遠征するはずが

今年2月にノートPCを購入し地方のホテルでネットを楽しみ始めたのですが、丁度6月に携帯からのPCメールが使えなくなったこともありi-phoneを購入(というかポイント交換)。そうしたらネットの大抵のことがi-phoneでできてしまうので、ノートPCの出番がなくなってしまいました。今ではそのノートPCを家用に使っています。

今年も一年、お世話になりました。新年はもう少し景気が良くなることを祈ります。皆さま、良い年でありますよう。


■ 年末恒例勝手にアカデミー賞2009年  金田さん(メールにて)

さて、恒例のアカデミー賞ですが、以下のとおりです。

●コンサート:小川典子さんのピアノリサイタル グリーグ、ベートーベン、ドビュッシー、リスト、菅野由弘

菅野さんの新作、光の粒子(A Particle of Light)の抜粋版をアンコールとして演奏しましたが、南部鉄の鈴を鳴らしながら演奏するもので、幻想的な曲でした。

●CD:今年は例年になくCDを買わない年だったかもしれません。体力、気力が衰えているのか?

そのなかで感心したのは、中古屋さんでみつけたミュンシュ/BSOのマルティヌー(交響曲第6番)、ピストン(交響曲第6番)、メノッティ(ヴァイオリン協奏曲)の1枚でした。メノッティはモノ録音ですが、トッシー・スピヴァコフスキーの美音が堪能できますし、マルティヌーとピストンは初演ということもあるのかな、気合の入った演奏。そういえば、去年もマルティヌーをあげてましたね。林さんと渋谷のCD店で待ち合わせした時に買ったのもマルティヌーでした。RCA録音

●書籍

ルイ・ド・ベニエールの小説は「コレリ大尉のマンドリン」しか翻訳されていないのは残念ですね。Birds Without Wingsを読みましたが、いい小説です。オスマントルコの黄昏から第一次大戦を経て近代トルコの誕生までの歴史が、トルコ南東部の小さな村を主たる舞台とし、そこにムスタファ・ケマル(後のアタチュルク)の物語を交えて描かれています。小さなエピソ−ドが積み重なって、やがて大きな物語の骨格が見えてくるというのはベニエール独特の手法です。

石橋湛山評論集と清沢洌評論集 ともに岩波文庫 二人は、長谷川如是閑などとならんで、戦前を代表するジャーナリストと言ってよいと思います。特に感心したのは、植民地経営に対する二人の考えです。簡単に言うと、植民地は金が掛かる割には儲けが少なく割りに合わないということを、具体的な数字をあげて論証しているところ。当時、植民地経営は増大する農村人口を吸収するために必要であると考えられていたのですが、石橋は国内に産業を育成することで農家の二・三男問題を解決すべきという、戦後の高度成長政策を予見したようなことを既に述べています。また二人とも、植民地を経営するよりも、自由な貿易を推進するほうが合理的、かつ国家間の軋轢も回避できると主張しています。しかし、植民地は戦争という血で購ったもの故、それを放棄するなどは、当時の大方の日本人には考えもつかないものでありました。

古本で買った黒澤明の蝦蟇の油は、自伝のようなものとありますが、羅生門のところで筆を絶っているため、中途半端な印象は拭えないものです。しかし師匠の山本嘉次郎を語る部分は真情というか、尊敬と愛情が吐露されています。山本嘉次郎なかりせば、後年の世界の黒澤は生まれなかったでしょう。名伯楽だったのですね。そのうち山本嘉次郎のカツドウヤ自他伝を見つけて読んでみたいものです。

11月の末から川上弘美を集中して読みました。一つあげるとすると、古道具中野商店かなあ。


■吉例【♪ KechiKechi Classics ♪】各自勝手にアカデミー賞2009年   竜一

林様に背中を押していただいたので、恥ずかしながら自分の2009年アカデミー賞を発表します。
(皆様と趣旨がずれていたらすみません。今年自分が初めて聴いて感動したものが基準なのでほとんど新譜ではありません。)

●ガブリエル リプキン Bach 無伴奏チェロ組曲 GAVRIEL LIPKIND 
(お経のような雰囲気になりやすいこの曲集で陶然とさせられる音の美しさと旋律。別世界に連れられていく気持ちです。ところどころにアレンジがあってドッキリです。)

●シモーネ ヤング ハンブルク響 Bruckner 交響曲第8番 Ohems
(新鮮で美しい。でも、圧倒させられる感じではなく、ひたすらココロがさわやかになる感じ。あっさりではなく、Brucknerを堪能できる。林さまのおっしゃっておられるような新しい伝統の継ぎ方なのかと思います。レコードアカデミー賞もむべなるかな。)

●ヤンソンス オスロ響 Mahler 交響曲第7番 Simax
(このコンビ、評判の割にぱっとしないなと思っていましたが、これは録音も含めて素晴らしい。大好きな7番が隅々までしゃぶりつくせる感じ。私にとってのマーラー第7番の決定盤です。)

●シーララ Brahms ピアノソナタ第3番 Ondine
(ブラームスのピアノソナタを好きな方っておられますか?個人的な感想では、ただ力みかえってうるさいばかり。若いころの作品だから仕方ないと思っていました。これでブラームスが評判になったということが理解できませんでした。でも、シーララで聴くと若さと叙情と繊細がわかります。作曲者と同じような年頃の演奏者に拍手)

●ゲヴァントハウス四重奏団 Beethoven 弦楽四重奏全曲 New Classical Adventure
(前期、中期、後期を問わず、Beethoven の弦楽四重奏曲でうっとりしてしまうって考えられますか?練り絹のような極上の音と旋律が美しいのです。幸福感に満たされます。ゲヴァントハウス四重奏なので古いメンバーかと思えば、みんな若い。)

●パスカル ロジェ      Debussy ピアノ曲集 Onyx
(ドビュッシーのピアノ曲には微妙なところがありますよね。美しくて好きなのだけれど、心に刺さってくる感じやモヤモヤしたところ。パスカル ロジェはこの録音で私の理想といえる解釈で、いくら聴いても疲れずに素晴らしい音楽に包まれている感覚を与えてくれます。)

あとは自分にとって大きなインパクトのあったニュースです。

●1 NML (毎月2000円弱、今年1月末加入)
皆さんご存知、泣く子も黙るNaxos Music Libraryのことです。林田直樹さんの本「クラシック新定番100人100曲」で連動企画をしていたのでNMLを知りました。知らない曲をすぐ聴ける図書館と言うつもりで契約しましたが、うれしい誤算でした。喜んでいる点を箇条書きにします。

 A レーベル数が多い。(200以上)

 よく聴くものを挙げます。
マイナーレーベルの雄 BIS, Berlin Classics, Chandos, Cappriccio, Naive, Audividis, Opus111, Ohems, Hungaroton, Profil, Haensller Classic, Onyx, Vox, Vanguard
オーケストラ自主制作 LPO, CSO Resound, BR Klassik(バイエルン放送響)、World Philharmonic Orechestra(無名なのにびっくりするくらい上手です)
個人のレーベル Gavriel Lipkind, Canary(ギル シャハム) SDG(エリオット ガーディナー) Gimmel (タリス スコラーズ)
日本のレーベル Meister Music

 これだけあれば、林様のレビューしているCDをかなりの範囲をカバーできます!(特にBerlin Classicsが感動 スウィトナー ヘンヒェン ラグナ シルマー)
 レビューだけ知っている音楽というのは欲求不満がたまりますから、うれしい限りです。
 それにHMV onlineで、話題盤となっているものが自宅ですぐ全曲聴けると言う幸せは換えがたいです。

 B 毎日新しくレーベル、音盤が増えること
NMLの新譜をチェックするのが大きな楽しみです。毎日、購入しなくても音盤が増えるなんて夢のようです。
 自分が契約してからの新規加入レーベルで、感激したのはBerlin Classics, Opus 111, Naive, LPO, CSO Resound, BR Klassikです。
 とにかく、皆さんの評判を見て、聴いてみたいけれど購入するには敷居が高すぎるレーベルがよりどりみどりです。上記の曲もすべてNMLなので、申し訳ない感じです。(もちろん、私もBOXセットは山ほど購入しています。カラヤンEMI全集第2集、オペラ50曲100枚組。Wagner33枚組。DECCA VIOLIN MasterWorks 35枚。メンデルゾーン全集SONY)

C 手間いらず、高音質
  NMLお勧めのPCサウンドデバイス(Onkyo WAVIO)につないでからアンプに接続していますが、私の安物の耳にはCDを聴いているのと違いがわかりません。
  選曲がマウスのクリックのみでできるので、気に入らなければCDの交換不要ですぐ違う曲に行けるのはすごいです。

2 DG Webshop
  CLASSICAのサイトで教えていただきました。一週間聴き放題で0.99ユーロ(日本円で130円ぐらい)。何枚組でも同じ値段。なんといっても憧れのイエローレーベルです!!! 早速、昔からの自分のアイドルであるリヒテル、クレーメル、ポリーニ、カール・リヒターを毎週、数枚組みで聴いております。

リヒテルはまさに音楽の神様。すべてを呼吸する生き物に変えていきます。9枚組でシューマン 独奏曲 協奏曲 ラフマニノフ協奏曲 前奏曲 チャイコフスキー協奏曲、ショパン、ドビュッシー独奏曲。一番、良かったのがラフマニノフの前奏曲集。初めて、これらがメロディーにあふれた魅惑であることが納得できました。

    クレーメルもバイオリンソナタ集8枚組。アルゲリチとのベートーヴェン全集、シューマン全集。アファナシェフとのブラームス全集。クレーメルが演奏すると何もかも別物。音楽の誕生に立ち会っている気になります。名曲が名曲であることが充分に理解できます。


■遅ればせながら にこらす 

遅ればせながら、自分も参加させていただきます。

・Windows7とパソコンの新調。ノートパソコンの価格破壊。

本年はノートパソコンを4台購入。すべてが5万円以下です。
娘用、自分の主張用サブノート、義父用、家人用と…。
Windows7の発表以降、アップグレードの対象にならないVista Home Basicの機種がバカ安い。家人用のマシンはちゃんとしたデュアルコアのCPU、メモリ2GB、これで3万円でっせ。どういう時代なのか…。 そして私自身のWIndows7導入はまだまだ…、メインマシンはVista→XPに戻してしまう始末。

・脱アンチカラヤン

カラヤンの年は昨年でしたが、自分的には今年。
昨年買った大型BOXを本格的に聴いたのが今年。そのレパートリーの広さと、水準の高さに改めて脱帽。巨大BOXを買ってしまったことで、自分の棚中一番CD所有の多い指揮者になってしまった。そして、この歳で初めてカラヤンが好きになった。
モーツアルト/チャイコフスキー/ベートーヴェン/マーラー/ブルックナー等々のシンフォニーの数々、ロシアものなどの小品集もピカイチ。
来る年もたくさん聴きます、ミチョランマにまだまだ多くあり。

・実演

西本智実さん… ミーハー色タップリの家人と行った大阪シンフォニーホール。
マーラーの第5番に心酔いたしました。RPOの演奏の美しいことと、そのパワーに脱帽。西本さんの実力も見直した。

・ハイティンクのブラームス

地元タワレコのワゴンセールから、ハイティンク指揮LSOのライブ全集。
未だ全曲聴いていないけれど、第3番の味わいの深さに痺れた。

・マーラー

サラステの第5番、エッシェンバッハの第2番、アバドの第3番、バーンスタインの第5番、セーゲルスタムも再認識。新規入手は4月に東京出張がなくなったため、非常に少なくなった。 2010年はマーラーイヤー!実演をいっぱい聴こうと決意!

・マルティノンの幻想

やっと出会えた、大学時代に愛超した名盤…、淡い思い出が今もよみがえる。未だにマイベストでしょう。

・ハイドン

今年はハイドン/メンデルスゾーンの年であったがあまり聴けていない。ハイドンのシンフォニーは聴いて見るとわかりやすく、楽しく聴けることを認識。いつか全集にチャレンジしたい。
バーンスタインの激安BOXを入手すべきであったが断念…。

・DG111周年記念

あのDGが価格破壊? ハードを収集する時代は終焉したのか?
1アーティスト1CDのバラエティBOX、飛びついて購入してよかった。でも結果的にミチョランマの標高UPか。

・スウィトナーの第九

最後の最後にいい演奏に出会えた。
藤田まことより長〜いお顔のスウィトナーさん、今もお元気かな。80年代の演奏は激しく、美しい。

・追悼 露の五郎兵衛師

最後に…。
昭和の上方落語界の混迷期、そして今日の隆盛を支えた巨星のおひとり、露の五郎兵衛師匠が天国に旅立たれた。艶笑落語を演じさせたらピカイチだった。 よく通る高いお声のお噺を懐かしむ。へっつい盗人、皿屋敷などもう一度聞きたい。


■お久しぶりです、みなさんお変わりありませんか?  平田

初年度(2003年)のアカデミー賞に参加させていただいた者です。
お久しぶりです、みなさんお変わりありませんか?
30過ぎてハゲはしませんでしたが、私はすっかり普通の勤め人化してしまいました。

音楽の嗜好も、クラシックから現代音楽やヨーロッパ系のジャズに。女の子の好みも、優しくて可愛い子から背が高くて胸が小さい子に変わりました。
が、なんでもエエってことなので今年聴いて気に入ったCDを何点か書かせていただきます。

>1位なしの2位

Pierre Boulez /Notations & Piano Sonatas /Pi-Hsien Chen

ジョン・ケージ、モートン・フェルドマンといったいわゆる現代音楽を中心に録音している、スイスのhat[now]ARTから発売されたものです。まず、録音が素晴らしく、音の輪郭が非常にはっきりしており、演奏家の意図(作曲家の意図ではない)がダイレクトに伝わってきます。最近は、レーベルでCDを選ぶようになってきました。視聴できない場合は特にですが。
ピアニストのChenは、林さんが昔書かれていた、ナクソスでゴルトベルクを録音された方です。もともと現代音楽を得意とする方で、他にブーレーズとの共演盤や、シェーンベルクのピアノ作品集、バッハの録音が何点かあります。ほんとに、グールドに影響を受けたのかも知れませんね。
珍しく、買ったその日に2回繰り返して聴きました。CDというフォーマットが消える直前だとは思いますが、こういった普遍的と思われるほど美しい作品がリリースされ、それを聴けたことに感謝しています。大げさに言えばですが。

http://www.youtube.com/watch?v=YpdXHOuRmi8

>マズルカ賞

Andreas Meland & Lasse Marhaug /Brakhage

スタン・ブラッケージのサイレント映画を上映しつつ、演奏されたライブ音源を編集されたものだそうです(英語があまり読めない)。Andreas Meland、Lasse Marhaugの2名のスプリットアルバムで、僕は特にAndreas Melandの何重にも積み重ねられた弦の音のような響きにやられました。
生の楽器の音ではもちろんないのだけど、その会場でその日一回だけの演奏の方が、生の音楽のような気がしたりします。電子音だって我々の生活の中で日常的に聞かれているものですしね。スポンサーを気にしながらコンサートホールで演奏するよりはよっぽどリアルな音楽かと。
エレクトロニカと呼ばれるジャンルなのですが、将来、これらの音源はクラシックの延長線上で語られると思います。モーツァルトが今生まれたらパソコンの前にいる気がするんですよ。バッハは音楽を辞めちゃいそうかなーと思うけど。

http://jp.juno.co.uk/ppps/products/1376433-02.htm

>聴衆賞

ルドルフ・ゼルキン、クラウディオ・アバド、ロンドン交響楽団 /モーツァルトピアノ協奏曲集

一流のオーケストラと一流の録音スタッフ(?)がサポートしているので、お爺ちゃんが弾いたモーツァルトなだけではなく、ゆったりとした、味のある、大家の演奏になっています。
凄く好き、大好きな録音なんだけど、聴いているとどうしても途中で眠くなります(実際に何度も寝ました)。でも好きな音楽を聴きながら寝るって幸せなことですよね。
ゼルキンはあの世で会っても、ファンを無視したりしないで、「な、けっこうエエやろ?俺のピアノ」とか言ってくれそうな気がします。 (参考

>ユンディ・リ賞

少女時代 ソニョシデ Girls' Generation - 願いを言ってみて

健康と不健康とのギリギリのラインまで絞られたスタイルが素晴らしい。彼女たちが犠牲にしているものを想像すると芸術とは何なのかと、胸を熱くしてしまいますね。 日本のアイドルは、一部の特殊な性癖の人たちへのマーケットしか得ることが出来なくなっているので、どんどん衰退しています。ハロープロジェクトもローティーンに目を向けたことが結果として、今の状態に結びついてしまったんですね。
その点韓国はTV至上主義なので、普通の若者から支持を得なければCDも売れません。Pefrumeが思い出させてくれた何かが、この国には日常的に存在するのかも知れない!!と思って今年からNHKの韓国語講座でもチェックしようかと思ってます。英語も話せないのにw

http://www.youtube.com/watch?v=2IxvepRk714


■年が明けてしまいましたが、印象に残ったことなど  山本晴望

・プッチーニ「ラ・ボエーム」公演

沼響としては「椿姫」以来2度めのオペラです。
音楽監督は三枝成彰先生。指揮は中橋健太郎左衛門先生でした(長い名前ですが本名です)
http://www.unico-net.co.jp/obj/concert/person/52?name=nakahashi_kentarouzaemon
歌手は若手の実力者を揃え、演出、舞台装置、衣装やかつらまで、東京からスタッフを呼んだ本格的な公演となりました。この不況下にもかかわらずトヨタ自動車の後援で実現しました。
当日はオペラならではの予期せぬアクシデントはあったものの、贅沢な舞台芸術であるオペラを演奏しながら存分に楽しみました。

・オンドマルトノと一ノ瀬トニカの音楽

今年はあまりコンサートには行けませんでした。
数少ない中で印象に残ったのは、地元で聴けたオンドマルトノの演奏会。オンドマルトノを目の前で聴けたばかりか、終演後に演奏者から直接楽器のしくみや奏法を聞くことができたのが大きな収穫でした。

・音盤購入

今年は控えたつもりだったのですが、前半のハイペースが影響し、数えてみたら300枚を超えていました。大部分はネットオークションやHMVやタワーから。

・ラトル指揮ベルリンフィルによるマーラーの交響曲第5番のDVD

2002年ベルリンフィル常任指揮者就任披露演奏会のライヴで、衛星放送でも見たのですが、張り詰めた緊張感と、アンサンブルを極限まで結晶化させた完成度の高さで 印象に残っています。

・辻畑古墳

自分が通っていた高校の近くにある神社が、卑弥呼の生きていた時代に築造された、日本最古級の可能性のある古墳の上に立っていたことがわかりました。
http://fu1to.i-ra.jp/e139156.html
現場説明会に行ったところ、巨大な古墳が出現していて見慣れた景色が一変していて驚きました。

・こどもたちの受験、
今年は二人の娘の大学受験と高校受験が重なり、我が家にとって大きな転機の年であります。


■Upしました kon'no

今年はまにあったかな?今ぎりぎり改訂しました。まだ、追加することは沢山ありますけど。
Linkで失敬します。

http://daphne.fc2web.com/academycd2009.html


■ 林 侘助。2009年「終わりよければすべてよし」

 1月早々サラリーマン生活最大のトラブル当事者として、胃袋に穴が空きそうな経験をいたしました。団塊世代残党の上司は徹底的にその処理から逃げまくって、ワタシが矢面に立つ!というまるで安物サラリーマン・ドラマのような感じ。なんとか、辛くも乗り切って、いったんケリが付いたところで、取引先幹部より「ご苦労様でした」とやや高級料亭にて接待(逆だ、フツウ)され、おみやげまでいただいたことに感激。

 八つ当たり気味(逆ギレ?)だった上司も、盆明けには治まって、不況、実績悪化から必須、職場お仕事合理化の中心メンバーとなって、これが目覚しい成果!(人減らしだけの”合理化”じゃないっすよ、ほんまの、正しい合理化)体調もやや改善して、ま、結果的にエエ年だったかな、と。左膝不調にはまいったが。黄昏を迎えつつあるサラリーマン生活は、来年以降悲惨な予想です。でも、ワタシはもう息子が独り立ちしたし、無財産だけれど、無借金家計ですから。来年もゆるゆるとやってきましょう。なるようにしかならんし。

■ 裁判員裁判開始/戦後初の選挙結果による民主党政権登場

これは”日本の民主主義”の質的転換ということで同根なのでしょう。裁判員制度の強硬なる開始に危惧する声もあったが、裁判に民意の反映、国民の側の視線が変わったことを肌で感じます。政権交代も同様、土建屋国家からの転換、旧態なる”お上に従う”意識からの脱却。政治経済外交は継続性のあるもので、そう簡単に白黒ひっくり返ってがらがらぽん!とはならぬのが当たり前、マスコミはもっと旗幟を鮮明にして報道しないと。ノーベル賞受賞学者が、上手いことを言っていて「天下り人件費の掛かっている現状と、本来使われるべき科学技術予算はちゃんと”仕分け”してもらわないと」ということだね。

これはマスコミも悪いんです。八ツ場ダムで政治に翻弄された現地の住民に光を当てるのはけっこう、でも、すべての人を100%満足させる手法なんてあるはずもない。それに過剰接待漬けの歴史が一部週刊誌にしか登場しないのはどういうことか?自分の狭い、小さなお仕事経験でも、それなりに継続したものをひっくり返す、というのは凄い軋轢があるものですよ。大きな流れに追随せず、多面的な報道、切り口は重要だけれど、”さて、最後はどーしたいのか?”が曖昧。

いずれ、どーしょーもない”不況”についての根幹が語られていない。基本は国内人口減少を前提としない過剰投資ですよ。それとグローバルな競争。ここで教育を(思いっきり)重視しないと(経費ではなく投資だ)100年先の進路を誤ります。但し、”ばらまき予算”は絶対にダメ、要求や自主的運動のないところにカネを付けたって意味ありません。(某政党が得意な地域振興券とか生活給付金とか、あれは経済的にも政治的にも無意味)剛腕・小沢幹事長の見事な選挙の手腕と与党運営の矛盾、民主党幹部の”カネ”問題(但し、鳩山さんの場合、利権絡みの企業裏金ではなく、鳩山家の違法資産運用だけど)にはケリ付けないと。

米軍基地問題の根幹(今まで通り言いなりで従え、ということか?)、待ったなしの年金医療問題、不要なダム道路建設、そして不況対策、教育問題。お上任せではない主権者としての意思表明と行動が求められている・・・政治(というか政党支持)宗教(信教)人種国籍(ワタシにはそんな差別意識はいっさいなし)問題はネットや日常つきあいに持ち込まない、という主義だったが、自分のサイトだし勝手に書いちゃいました。ほんまは言いたいことはたくさんあって、トータル政府政策とは別の(結果?)個人や企業(地方自治体も)努力工夫についてハラ立つことは多いんですが。

■ 演奏会 体調あまりよろしくなかったので、回数少ないです。精神的な後退もあるのか。

SNS管弦楽団 演奏会 2nd IMPACT!

・・・なんといっても演目が凄い!Bruckner 交響曲第9番ニ短調/Messiaen トゥランガリーラ交響曲〜得難い経験です。オンド・マルトノなんて、この先まず経験できんでしょう。11月OE金沢のMahler 交響曲第3番は、甥の結婚式と重なって断念!残念。おお、そうだ

■ 甥の結婚式

ウチの息子より6つ上、でもそんな世代になったのだな、若いって眩しいくらい輝かしい!年齢的に、ここ最近葬式ばかりじゃないですか、いくら物入りでもめでたい!もうだめか、と思っていた北海道の親父がほとんど変わっていなかった(元気だった)ことは嬉しかった〜相変わらずの毒舌ユーモア連続(不肖の次男坊にそのまま引き継がれている)。

■ NMLを先頭に「データで音楽を聴く」という概念の定着

不況と言うこともあるんだけれど、気骨ある地方の”レコード屋”はどんどん閉店していきます。クラシックCD業界では、一足早く”デフレ・スパイラル”に呑み込まれていて、彼(か)のBOOK・OFFだって全然安くないですもん。「音楽を聴く=所有する」概念からの脱却、そして「歴史的音源」は著作隣接権フリーとなってネット上で自由に入手可能となりました。時代遅れのワタシは圧縮音源を再度デコードして”自主CD化”しております。ことし2009年前半には「歴史的音源」ごっそり数百枚単位でオークション処分済(その後、不況の深化?で一気に売れ行きが落ちたが、ぎりぎりセーフであった)

PC用のオーディオ機器を検討しなくっちゃ。

■ 音楽を愉しむべき感性の後退に苦慮、でも(「近況」先月のヴェリ・ベストより/新録音新譜は当然ありません)

Profil  PH07057●Bruckner 交響曲第8番ハ短調〜ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン(2002年ライヴ)・・・ライヴ故の音質不如意少々有。大好きな作品だけれど、おそらくはヴェリ・ベストの演奏。まず、ドレスデンの音がよろしい。クールでひんやりブルー系サウンド(特に弦)を基調として、管楽器には木の質感がありました。ハイティンクの表現は、ほとんど恣意的な作為を感じさせなくて、テンポも強弱のメリハリも、間の取り方だってオーソドックスそのもの。なのに、印象はモダーンであり、沸き上がる感慨やら馥郁たる香り、脳髄に響く深い説得力っていったいなんなのか。洗練されているが、先鋭ではない。穏健ではあるが、旧守的頑迷保守ではない。

フィル・アップはMozart 交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」(同じく2002年ライヴ)だけれど、これも凄い。ハイティンクのMozart はオペラ以外聴いたことはないが、速めのテンポ(とくに第2楽章)で颯爽としたリズム感、明らかに古楽器方面の影響を感じさせます。

SUPRAPHON SU 3880-2  11枚組6,581円(ポイントも活用)にて入手●Mahler 交響曲第7番ホ短調(1977/78年)/第8番(1982年)〜ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィル/合唱団/プラハ放送合唱団/キューン少年合唱団/ハヨーショヴァ(s)/ニールセン(s)/ショウノヴァ(a)/ソウクポヴァ(a)/マーロヴァ(a)/モーザー(t)/モーザー(t)/シェーネ(br)/ノヴァーク(b)・・・この間、ぎんぎらぎんに強靱なショルティの演奏ばかり聴いていたせいか?静謐、透明、上品、気品、自然体、奥行き、歌、すべてに渡って個性の違いを堪能いたしました。威圧感がまるでないのだね。現代の喧噪にはショルティが似合うのかも知れないが、瑞々しくも優しい雰囲気に溢れ、怪しい第7番には夜の妖しさが漂い、第8番に於ける大編成に混沌は発生せず、抑制と秩序が前提となります。

ワタシの嗜好は基本、こちら側なのだね。チェコ・フィルの優しい音色、そして声楽のバランスは最高です。

EMI 5744852 8枚組諸経費込2,700円●Sibelius 交響詩「大洋の女神」作品73/「カレリア」組曲作品11〜間奏曲/行進曲風に/組曲「歴史的情景」第1番作品25/交響詩「タピオラ」作品112/交響詩「フィンランディア」作品26/セレナード第1番ニ長調作品69a/第2番ト短調作品69b〜パーヴォ・ベルグルンド/ボーンマス交響楽団/イダ・ヘンデル(v)(1972/75年)・・・Sibelius には独墺系ではない独特の”言語”があって、馴染みが必要です。英国音楽に似て、濃い表情やら大袈裟な身振り、輝かしい大爆発が少ないから(嗜好によっては)全然ツマらないかも。

それに独墺系かっちりとした骨太濃厚なオーケストラでは、少々違和感有。この8枚組セット(2,700円ほどにて入手/単品ダブり分処分済)中、個性的で魅力ある収録の6枚目であって、なぜか?「カレリア」に「バラード」が含まれないのは謎。知名度的に低い作品もあるけれど、「歴史的情景」第1番のリズム感(カスタネットも入る)も素敵だし、ボーンマス響のサウンドはザラリとして要らぬ艶や色気はなく、清涼な空気に溢れます。ベルグルンドの軸のしっかりとした表現は前提。

「タピオラ」には荒涼とした勢い(金管の粗野な迫力も充分)があり、一見ざっくりとして、じつは練達のツボ押さえも、繊細も有。茫洋として静謐、難解、幻想、氷の荒野を彷徨うようですね。これがこの作品の正しい神髄だ。「フィランディア」は呻くような暗さと詠嘆で始まり、やがて歓喜に疾走し、輝かしい「賛歌」へ。けっして洗練されてはいないし、響きも薄いが、魂の籠もった演奏であります。セレナードは可憐で繊細な旋律が歌います。このボックスにヴァイオリン協奏曲ニ短調が含まれぬのを残念に思うばかり。

GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY 7243 5 75962 2 0 2枚組購入価格失念●Rossini 歌劇「アルジェのイタリア女」序曲(クリーヴランド管弦楽団1967年)/Tchaikovsky 交響曲第5番ホ短調(ケルン放送交響楽団1966年ライヴ)/Wagner 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲(ニューヨーク・フィルハーモニック1954年)/Josef Strauss 円舞曲「うわごと」(クリーヴランド管弦楽団1962年)〜ジョージ・セル・・・GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURYより。最高。車中居眠りしていても、思わず目が覚め、背筋が伸びる恐るべき集中力、スケール、強靱なるアンサンブルの精華。 Rossiniの序曲なんて真剣に聴いたことなどなかったが、こんな深い味わいの音楽のだったのか、と反省を迫るテンションの高さ。

Tchaikovskyはオーケストラが変わっても、ジョージ・セルの表現は微塵も揺るがないという証明です。なんという高潔さ、露西亜風暑苦しさ皆無、クールで引き締まったサウンド(でもちゃんとアツく盛り上がりまっせ)、甘美な旋律は朗々と歌って、時にアッチェランドが掛かっても甘さ控え目。終楽章はカットがあるんですね。クリーヴランド管との演奏は聴いたことはないが、ちょっと興味出ますね。「マイスタージンガー」は、ああこりゃモノラルだね、と気付いたけれど、やがてその剛毅なスケールと推進力にぐうの音も出ないほどに打ちのめされます。

ラスト、粋な「うわごと」とには・・・ギブ・アップ。

こんなもんでご勘弁を!来年も健やかなる一年でありますように。

(2009年12月31日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi