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アンサンブル・フリー第10回演奏会(尼崎アルカイック・ホール)


2008年11月30日(日) 13:30開演〜尼崎アルカイック・ホールにて  入場無料

Prokofiev

交響曲第1番ニ長調「古典」 作品25

Tchaikovsky

ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35

馬淵清香(v)

Stravinsky

バレエ音楽「春の祭典」

浅野亮介/アンサンブル・フリー

   アンサンブル・フリーの演奏会は壱年半ぶりナマ演奏は半年ぶりです。心身共の体調問題、(出不精故)ご近所で、しかも休日のマチネじゃないと出掛ける気が起きないんです。今回はその条件がそろった、希有な演奏会となりました。ぎっくり腰やや回復した女房も連れて行って来ました。

 演目がエエのか、大ホールであるアルカイック・ホールは意外なる集客。ここはけっこう低音の響き具合も含めて、音響もよろしい。三々五々団員が登場して勝手に音馴らしを始めるアメリカン・スタイル、スリムな浅野さん登場して「古典交響曲」始まりました。まだ、手探りでアンサンブルは慎重だけれど、ここで前回の演奏会を思い出しました。テンポは比較的ゆったり、勢いノリを少々犠牲にしても、細部入念なる描き込みが個性だったんですね。

 それにしても「古典交響曲」は名曲!しかも一捻りある、意外と演奏会に登場しないもの。古典的な衣装をまとって、モダーンで素敵な旋律リズム続きます。弦も管も出足、少々不安だったが、徐々にアンサンブルが暖まって終楽章の肌理細かい表現と、ノリがやってきました。

 Tchaikovskyのヴァイオリン協奏曲は、例の如しの露西亜風クサい甘美旋律が苦手です。馬淵さんは青いドレスが似合っているが、若手にありがちの細身で神経質なタッチではなく、むしろ骨太でよく鳴るヴァイオリンは(言うまでもなく)完璧技巧也。日常、滅多に聴かない作品だけれど、ワタシは見直して新鮮に受け止めました。ここでもアンサンブル・フリーは、ややゆったりめのテンポで細部の描き込みが入念なんです。

 15分の休憩挟んで、ナマ初体験の「春の祭典」〜噂には聞いていたけれど、すごい編成ですね。打楽器だけで5人。ワーグナーチューバ(持ち替えで)二人加わりました。月に2回は絶対に聴くお気に入り作品だって、ナマ体験しないと理解できないもんです。50年前はプロでも苦戦していた”現代音楽の古典”も、21世紀にはアマオケのレパートリーにいたるとは・・・

 冒頭、非常識な高音での息苦しいファゴットが開始されるが、まさに作曲者の意図通り。例えば弦の各パートでも違う演奏をしたり、ティンパニは予想していたけれど、大太鼓のド迫力(ラグビー部出身風)+ドラの効果に圧倒されました。浅野さんの解釈は、ゆったりとしたところでは入念に味付け、速い部分ではモウレツなテンポで走り抜けます。個々のパートの小さなミスは云々するべきではなく、CDでは体験できない音の鮮度を堪能しておりました。

 浅野さんの指揮は独学らしいが、独特のパフォーマンスながら指示や意図は明快でした。ワタシのリファレンスはピエール・ブーレーズ(新旧3種の録音)だけれど、ナマ体験でその意義を確認できました。つまり、ナマでは激しい音響の混沌に細部が不明確になるんです。ブーレーズは細部までクリアな世界を目指したんでしょうね、それが革新的であった、と理解しました。ほとんどの作品は、ナマのほうがいままで見えなかった声部が発見できるものだけれど、「春の祭典」は別格か。鮮度と迫力は言うまでもないが、録音の方がいろいろと細部が確認できる・・・

 打楽器群メンバーが協力して、残響を抑えて静謐を作り出すのも興味深かったですね。貴重なる体験をさせていただきました。

 鳴りやまぬ拍手に、女性が花束を〜って、私服に着替えた馬淵さんでして、団員に投げキッスを!ユーモラスで、素敵な女性でした。   


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi