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岡響 第37回定期演奏会


2003年5月18日(日)PM2:30〜岡山シンフォニー・ホール

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シエラザード」

指揮 田中一嘉/岡山交響楽団

  いつもご招待いただき、ありがとうございます。

 指揮の田中さんは「1953年、東京生まれ。桐朋学園大学音楽学部卒業。指揮を故斉藤秀雄、小澤征爾、秋山和慶、尾高忠明の各氏に師事。コントラバスを江口朝彦、堤俊作の両氏に師事」とのこと。もちろん初耳。久々の演奏会で、ここのところ仕事が建て込んでいたり、風邪をひいていつまでも治らなかったり、で、どうもいけません。いつもの「児島の体操服屋の若旦那」と同行。

 いつもの通り、舞台向かって左3階ロビー席=岡響自慢女性大多数コントラバス軍団真向に陣取ります。真下はハープと打楽器群。岡山シンフォニーホールは上方のほうが、音が明快なんです。下の席では音が拡散するイメージがある。ああ、片山さん、コン・ミスで頑張ってくださってますね。演目も素晴らしい。高まる期待。

 で、結論。3曲ともナマ初体験だけれど、「自分はいままでなにを聴いてきたのか?」ということですよ。「牧神」は中学一年生の時に、音楽室にあったカラヤンのレコードで出会って以来の馴染みだけれど、コレ、ナマじゃないとおそらく何も理解できない。ものすごく緻密で細部まで考え抜かれた「異形の音楽」〜それもとてつもなく魅力的な。

 フルート3本なんですね。ソロをつとめる若き女性は、とても清楚で完璧の技巧。CDでは歴代ベルリン・フィルの色気横溢フルートばかり聴いてきましたからね、でも、眼前の彼女が呼吸してそれがダイレクトに届く快感があります。お隣方面のオーボエの女性はいっそう華やかなヴィヴラートで、「シェヘラザード」でも大活躍でした。(違う女性だそうです。いずれ、明るい音色で素晴らしい)

 Mozart 、Haydnの交響曲を見ても、主旋律は弦、管楽器は色付け程度じゃないですか。(ちょいと乱暴か?)基本、その路線で音楽を考えると「牧神」はなんと革新的なことか。フルートが、オーボエが遣る瀬なく歌う、ホルンが切なく(かなりエッチに)叫ぶ〜さわさわとその下を流れる清流のように、弦が音のグラデーションを作ります。なんという繊細なる岡響弦の響き。

 Brahms 辺りでは、チェロが朗々と歌うでしょ?Debussyではいきなりコントラバスのアクセントが主役なんです。ワタシ、初めて気付きましたが、牧神の夢の中、官能が高まりきる過程では、第1ヴァイオリンはお休みしているんですね。くすんだ色彩を振りまいているのはヴィオラです。

 フルート3本、ハープが二台、それほど大きな編成ではないが、天才は作る音楽が違います。あの鉄琴のような楽器はなんでしょうか。わずか8分ほど、ワタシは舞台に釘付けでした。いままで録音で聴いてきた「牧神」がすべてムダになったような、最高の感動。(お客が拍手を躊躇うような、沈黙もありました。素晴らしい)


 「ローマの松」も結論も同じ。どれだけ凄い演奏・録音水準であろうと、ナマの感動の1/100に及ばない。近代の盛大なるオーケストラの効果とはこれだ!〜圧倒的怒濤の、ヴィジュアル的にも最高のパーフォーマンスがここに。打楽器何でしたっけ?5人かな?ティンパニはもちろん、チェレスタもあるし、ドラもシンバルもある。ピアノはナマで見ると、ものすごく効果的。(「アッピア街道の松」においては現代の通奏低音の役割か〜ここ、コントラバスが二種類の演奏をしております)イングリッシュ・ホルンのソロが「蛇使い」のように怪しげ。

 トランペット3本に、打楽器のM女史がギロギロとゼンマイみたいのを回しますね。この考え抜かれたノイズ的アクセントの衝撃。途中、トランペットが退出して舞台袖でソロを取りますね。ま、このくらいならMahler でも見たことはある。でもね、ラストでワタシの真正面=つまり舞台に向かって右3階ロビー席から、突然トランペット+トロンボーンの絶叫助っ人が!だいたい、舞台上の金管群も並の音量じゃないですよ。それに、別舞台からステレオで、ってコレ反則ワザか。

 ドラを思いっきり叩いたら想像つくでしょ。シンバルも一発激打するのも聴いたことあるはず。でもね、全開のドラとシンバルが交互に叩きまくるのって、ナマじゃないとこの興奮は理解できないはず。最初から最後まで、身動きも出来ない、背中を背もたれに預けることができない。そのくらい驚愕の感動でした。これ、近代音楽のひとつの成果だね。


 これに比べると「シェヘラザード」は、もっとオードックスによく出来ている名曲です。エキゾチックな美しい旋律連続。冒頭、チューバとトローンボーンの低音ド迫力は絶対に録音には納まらない。片山さんのソロをCDのプロと比べるつもりなど微塵もございません。その神経質なくらいに誠実な節回しに、ただただ感動いたしました。チェロのソロもナマで聴けばずいぶんと効果的。

 ヴァイオリン・ソロが楚々と泣くと、ワタシの席真下のハープが「ポロン」と合いの手を入れます。その「間合い」のたしかなこと。生々しいこと。岡響自慢の金管群のラッシュ、木管はいずれも見事(なに、あのバカでっかいサキソフォーンの親分みたいな楽器は?)だけれど、オーボエの歯切れの良い音色は、まるで彼女のところだけスポットライトが当たったように際だちます。

 最終楽章「船は難破する」に於ける打楽器は「ローマの松」に匹敵する音の嵐。ああ、いままでワタシは何を聴いてたんだ・・・と話しは振り出しに戻る〜。アンコールは「リュートのための古風なアリアと舞曲」より「シチリアーノ」〜弦のアンサブルは緻密でした。桃太郎通り沿いに、新しくオープンしたお洒落なカフェに似つかわしくないおっさん二人。コロナ・ビールなど軽く飲りながら素晴らしい演奏会の余韻を少々楽しみました。

 申し遅れましたが、20周年記念おめでとう。来週は倉敷管弦楽団です。

  


【♪ KechiKechi Classics ♪】

愉しく、とことん味わって音楽を
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written by wabisuke hayashi