Weber クラリネット五重奏曲 変ロ長調 他
(ヘンク・デ・グラーフ(cl)/シューベルト・コンソート)



COLUMNS 99168 Weber

クラリネット五重奏曲 変ロ長調 作品34

Crusell

クラリネット四重奏曲 ハ短調 作品4

Baermann

クラリネットと弦楽五重奏のためのアダージョ 変ニ長調 作品23

Spohr

クラリネット、弦楽4重奏、コントラバスのための幻想曲と変奏 作品81

ヘンク・デ・グラーフ(cl)/シューベルト・コンソート

COLUMNS 99168  1998年録音 $2.99

 たくさん音楽を聴いているので、お気に入りのはずだった、この作品もしばらく(6〜7年?)聴いておりませんでした。2006年「Mozart セレナード、嬉遊曲 & 舞曲集 」23枚分(BRILLIANT)入手したら、このヘンク・デ・グラーフ(cl)が登場、COLUMNSはBRILLIANTと同系のレーベルらしく、オランダの腕利きを登用しているみたいですね。まさに”腕利き”と評するに相応しい、スムースな技巧を誇って、爽快〜で、このCDを棚奥から取り出したものです。

 透明なる諦念に充ちたMozart 、中年男性の苦渋に満ちた後ろ姿を彷彿とさせるBrahms 、クラリネット5重奏曲には圧巻の横綱が存在します。Weberは世間的には知名度(人気も?やや)低く、録音は少ないでしょうか。第1楽章は明るく躍動し、憂愁の雰囲気漂う第2楽章「ファンタジア」はMozart /Brahms に負けないほの暗い曲想が魅力的であり、しかもクラリネットは縦横に技巧を披瀝します。

 第3楽章「メヌエット」はスケルツォ楽章であって、剽軽かつアクロバティックな細かい音型を自在に操って楽しげ。最終楽章は(例の)”ドイツ民衆の素朴な歌”が、陰影豊かに疾走いたしました。楽しい作品ですね。シロウト耳には、相当の技巧を要求されている作品、と聴きました。約27分の作品。

 ヘンク・デ・グラーフは驚くべき超絶技巧であって、”スムースな技巧”はクールな表情のまま軽快・正確であります。ワタシはレジナルド・ケルのヴィヴラートが掛かった音色を愛するけれど、このクラリネットはいかにもモダーンでスマートであります。ちょっと”ふっくらとした暖かさ”には欠けるか?(数年前、”暖かいクラリネット”なんて自らコメントが残ってエエ加減だけれど)

 Crusell(ベルンハルト・ヘンリク・クルーセル 1775-1835) はフィンランドの作曲家であり、優れたクラリネット奏者としても知られていたとのこと。ハ短調という調性から想像されるように、劇的な暗い曲想が多く全曲を支配して、哀愁の旋律はWeberと好対照であります。第2楽章「メヌエット」の中間部にはノンビリした味わいもあり、第3楽章「パストラーレ」は題名通りの牧歌的平和であります。終楽章はBeethoven 的緊張感がありました。Weberのような”アクロバティックな細かい音型”ソロは登場しないが、いかにもクラリネットの機能を知り尽くして生かした、そんな感じの佳曲であります。20分弱の作品。

 ・・・なるほどBaermannは(ハインリヒ・ベールマン 1784-1847)、もっと浪漫の世界に至っていて、繊細な息遣いと心象風景が広がりますね。絶品の「アダージョ」だ。この人にはクラリネット協奏曲やら、クラリネット五重奏曲があるらしい。Weberとのも接点があったそうな。Spohr(Baermannと同年の生まれ 1784-1859)の作品は、この人らしい華やかさと多彩さを誇って、スケールの大きな変奏曲となっておりました。時に劇的な旋律が顔を出します。

 ベヴァリ・ルント(v)率いるシューベルト・コンソートは、繊細なアンサンブルを誇ってクラリネットを支えております。少々マニアックな(クラリネット偏愛主義的)一枚だけれど、録音も優秀、たっぷり愉しめる一枚。

(2007年3月16日)


 Weberはお気に入り(Spohrも)、その中でもクラリネット五重奏曲は大好きな曲。たしかFMでストルツマンの演奏を聴いて一発で惚れました。

 しかもこのCD、1998年というずいぶん新しい録音じゃないですか。暖かくて、親密な音。COLUMNSって、なんと読むのでしょうか。(メールで教えていただきました。カラムって読むそう。日本語で云うコラムのこと)売れなくて残品処分か、このレーベルのCD2・3枚この値段で買いました。演奏家は写真も含めて詳細説明があって、オランダの人々のようです。ヘンク・デ・グラーフはロッテルダム・フィルの主席とのこと。

 Weberのこの曲は、軽妙で、素朴、生き生きと踊るような旋律が全編に広がっていて、楽しいこと限りなし。クラリネットのめまぐるしい音形は、おそらく相当のテクニックを要求されるはず。ヘンク・デ・グラーフのクラリネットは、すべての音域でムラなく、艶やかな音色です。ヴィヴラートの少ない、素直な響きですが、奥深くて厚みがあり、自然でスムースな歌が続きます。技術的にも文句なし。

 Crusellという人の作品は初めて聴きました。Beethoven とWeberの間くらいに生まれた人で、世代的には一緒のよう。曲的には、旋律がグッと素直というか、まっすぐでやや工夫が足りない感じも有。でも、哀愁に満ちていかにも日本人好みの音楽でしょう。18分ほどの曲。ここでも、ヘンク・デ・グラーフの暖かいクラリネットは絶好調。

 初耳のBaermann(ベールマン?)の「アダージョ」。Weberとほぼ同年で、ミュンヘンの名クラリネット奏者だったそう。わずか5分弱の短い曲ですが、絶品の安らぎの名旋律。いかにもクラリネットを知り尽くした人の、ゆったりと調和のとれた作品。

 Spohrは、彼らしい劇的で躍動感のある主題で始まり、ゆったりとした部分との対比が素晴らしい。ソロとバックの緊張感もある立派な曲です。クラリネットはかなり雄弁。

 シューベルト・コンソートは、オランダ室内管のリーダーを務める、ルントという女性ヴァイオリニストが率いているとのこと。やや大人しめで、クラリネットを前面に立てたアンサンブルですが、実力はじゅうぶんです。


おまけ

 Weberのクラリネット五重奏曲は、Brahms 、Mozart に負けない名曲だと思うのですが、いかんせんCDは少ない。ましてや廉価盤となると・・・・・で、上記のCDもなかなか売ってないでしょうから、別のCDを紹介しておきます。

NOXOS  8.553122 Weber

クラリネット五重奏曲 変ロ長調 作品34
クラリネットと弦楽4重奏のための序奏、主題と変奏(遺作)
クラリネットとピアノのための「グラン・デュオ・コンチェルタント」変ホ長調 作品48
ジルヴァーナからの主題による7つの変奏曲 変ロ長調 作品33

ベルケシュ(cl)/アウアー弦楽四重奏団/ヤンドー(p)
NAXOS 8.553122 1994年録音  800円で購入。

 クラリネットの雄弁さはヘンク・デ・グラーフに負けませんし、しっとりとしたロマンティックな味わいも有。ソロの変幻自在ぶりはこちらの方が上かも。録音がややオフ気味で、残響が遠くから聴こえてくるようなバックが、ちょっと散漫な印象かな?

 選曲もおもしろい。内容的に相当ハイC/P。

 


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written by wabisuke hayashi