Bach ゴールドベルク変奏曲(ヴァルヒャ)



EMI  7243 4 891612 9 Bach

ゴールドベルク変奏曲 BWV988

ヴァルヒャ(cem)

EMI  7243 4 891612 9 1961年録音。5枚組4,000円(税抜き)で購入したうちの一枚。(これ、再プレスされていて、2001年の相場は3,000円でお釣りが来ます)

 再聴感想です。

 この曲はピアノで聴く機会が多くて、こうしたチェンバロ、ましてやかなり「鳴り」の良い現代楽器で聴くのも珍しい。ヴァルヒャの演奏には怒濤のスケールを感じました。金属的なチェンバロの音色は少々気になるが、微妙な音色の描き分けがあって、いろいろと楽しめる仕掛け充分。

 表現的には「ガンコ一徹」(星一徹の由来か?)〜盤石の安定感で、少々息苦しささえ有。リズムが重い。ワタシはここ最近、バロックには自由で即興的なノリ、カルさ、を重視しているので、この演奏は遠慮したい方面なんです。いろんな国々の舞曲をベースにしているはずだから、もっと軽やかに踊るような楽しさが欲しいもの。

 でも、聴き続けていくと負けてしまうというか、心の奥底に潜んでいたアツいものが滲み出てくるようであり、ジ〜ンと来るんです。ちょうどこの軟弱な時代に貴重な、ガンコ親父に人気が集まるような意味合いでしょうか。Bach は立派で威圧的、重々しいものであった時代。その圧倒的な存在感。

 技術的には優秀な若手が存在しますが、この重厚さは貴重で、既に亡んでしまったものかも知れません。けっきょく75分間一気に、充分楽しんで聴き通しました。(2001年9月28日)

(以下、1999年執筆分そのまま)


 ヴァルヒャをご存じかな。そういえば最近ちょっと忘れられた感じも有。1977年に70歳で引退したドイツの名演奏家でした。もう亡くなったはず。ワタシにとっては子供の頃から神様みたいな人で、LP時代、この演奏を愛聴しておりました。(買ったのは中学生時代)ン十年ぶりに聴いた演奏。もしかしてチェンバロを聴いたのも、この録音が初めてだったかも。

 「ゴールドベルク変奏曲」といえばグールド。ワタシも好きですよ。ちゃんと旧録音は海賊盤(!?)で買ってあります。新しいほうもカセットでアエ・チェックしてある。でも、ワタシが面倒見なくても、みんな大絶賛でしょ。曲的には大好きですので、数種類のCDが手元にある。チェンバロでもピアノでも(弦楽三重奏でも、なんでも)大好き。

 繰り返しを実行して75分の長丁場。でも、飽きさせません。

 現代楽器による、かなり「鳴る」チェンバロでした。(ドイツ製のアンマー・チェンバロとか。これって会社の名前?)しっかりとした足取りで、ある意味イン・テンポで、装飾音も最低限。主題の「アリア」は、グールドの新盤なんかもの凄くていねいに、入魂の細やかな入れ込み的演奏でしたが、ここではさっぱりしたもの。それでも味わいは深い。

 堂々として、落ち着いた雰囲気もあって、音色的にも時代錯誤はそう感じさせません。問題は楽器ではなくて、演奏ですよね。(逆に、その雄弁さが妙に新鮮でさえある)集中力、盤石の安定感、軽快なリズムとは言い難いが、淡々とした音楽を聴き進むうちに「ノリ」を感じてきて、音楽の持つ本質的な「熱」に行き着く思い。やはりワタシにとって、この曲の原点はこれだ、と確信しました。

 チェンバロの多彩な音色。とにかく長いけれど、ステレオの前に釘付けにさせる魅力。録音も出色。ジャコテの演奏(PILZ)とは、やはり雲泥の差でした。貫禄が違う。音色はちょっと金属的ですが、この曲の構造を明らかにするような、わかりやすい、美しい演奏です。(1999年)


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written by wabisuke hayashi