Wagner/R.Strauss 管弦楽曲集
(ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団)


TKCC-15037 Wagner

楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
楽劇「ラインの黄金」第1幕への前奏曲
楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲

R.Strauss

楽劇「薔薇の騎士」第1幕第2幕第3幕のワルツ

ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団(旧東独逸)

Deutsche Schallplatten TKCC-15037  1977年録音

 Heinz Rogner(1929ー2001)は往年の独逸の名指揮者、日本でも馴染み、読売本交響楽団とのBeethovenn交響曲全集も録音していたと記憶します。爽やかなMah lerとか、快速Bruckner、かつては熱心に聴いていたもの。1990年台に1,000円盤シリーズを喜んで入手して聴いたものですよ。現在では(このCD含め)入手困難な音源もあることでしょう。久々の拝聴でした。このオーケストラは現ベルリン・トイツ交響楽団とは別物。

 8年ほど前の「音楽日誌」コメントに曰く

クールで冷静、ゆったりとしたテンポ、なかなかのスケールで聴かせてくださるが、収録が一筋縄ではいかない。「マイスタージンガー」ともかく、「ラインの黄金」前奏曲が単独の作品として取り上げられることは稀だし、「トリスタン」に至っては、前奏曲に「愛の死」テイストの終結部を加えた独自の判であります。オーケストラはあまり豊かに響かず、上手いオーケストラではない感じ。大物評論家U氏の「解説」が収録されており、その独断と思い込みは高度成長期〜バブル迄の”いけいけどんどん”風、はっきり言って音楽鑑賞の邪魔になるもの。
 なるほど。当時は解説もちゃんと読んでいたのだな。”オーケストラはあまり豊かに響かず、上手いオーケストラではない感じ”とは失礼な物言い、R.Straussへの言及がないのは、当時苦手意識があったのでしょうか。当時からオーディオ環境も変わって、もちろん聴き手は華麗なる加齢を重ねて印象一変!シミジミ味わい深く、選曲の妙、R.Straussも華やかな雰囲気たっぷり、オーケストラの響きはこの当時絶頂期?だったのか(ごく最近は聴いていないけれど)。アナログ録音の最盛期でしょう。このCDどこにもタイミング表示がないのも不親切でした。

 誰でも知っている勇壮なる「マイスタージンガー」前奏曲、出会いはカール・バンベルガー/フランクフルト歌劇場(1956年)、数年前に懐かしく再会して久々の印象は”これが〜泣けるほどショボい演奏(音質)、そして泣けるほど懐かしい”シルヴィオ・ヴァルヴィーゾのバイロイト・ライヴ(1974年)をしっかり聴いてから、前奏曲のあと続けて合唱を期待するようになりました。レーグナーはもちろん演奏会用集結。噛み締めるような地味渋系サウンドは、8年前”オーケストラはあまり豊かに響か”ないと受け止めたのでしょう。テンポは通常〜やや遅め、徒に大柄な厳つい表現に非ず、朗々たる金管もくすんだ響きに載せて、悠揚たる風情に充ちておりました。ラスト辺りのタメも決まっております。極東亜細亜のド・シロウト(=ワシ)が想像するところの”独逸風”サウンドに満足。

 楽劇「ラインの黄金」第1幕への前奏曲を単独の管弦楽として取り上げるのは珍しいでしょう。やや掴みどころのない「リング」序章、あまりに超大4夜に渡る楽劇の冒頭であります。しっかり全部通して聴くような気力体力は失せて、「ラインの黄金」(短いし)「ワルキューレ」は第1幕のみ、「ジークフリート」すっ飛ばして「神々の黄昏」はしっかり聴く、みたいな不遜な作品への対峙が通例となってしまいました。それなり(なんちゃって状態でも)全曲に馴染むと、茫洋とした「前奏曲」も有機的に感じられるもの。息の長い、千変万化するホルンの音色が魅惑のサウンドであります。

 楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲はフツウ「愛の死」とのセット、ところが前奏曲のみ、独自の終結部を加えてそれなり、まとめております。官能性や情感を強調せず、端正ていねいな表現のまま深い魅惑のサウンドで聴かせるもの。弦も木管もホルンもお見事、しっとりサウンドでっせ。Wagner三曲、続けると見事な調和と流れになって、静かな感銘がありました。

 R.Strauss 「薔薇の騎士」ワルツは通常馴染みに+アルファしてたっぷり聴かせてくださいます。Wagnerとはオリジナルの組み合わせですか?録音時期は近いよう。きらきら華やか、脂粉が漂うような旋律サウンド、ここもキモは深いホルンやなぁ、誰やねん!”上手いオーケストラではない感じ”なんて云った奴(ワシ)。ややノンビリとして抑制気味、慌てぬ力まぬ風情に品がありますよ。たっぷり歌っても恣意的なテンポの揺れもほとんどなし、細部ニュアンスも自然な色合い、ここ迄聴いて刺激的鋭角な響きはどこにもありません。盛り上げ方、要所のタメもお見事、これが旧東独逸ローカルなサウンドだったのかなぁ、シミジミ聴き惚れてしまいましたよ。

 これって懐古的ウィンナ・ワルツ(但しゴージャス・サウンド)ですよね。オペラ全曲に馴染んでいる人はさておき「第3幕のワルツ」は珍しいものでしょう。

(2018年5月20日)

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written by wabisuke hayashi