Vivaldi 管楽器のための協奏曲集(ニコラス・クレーマー
/シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア)


NAXOS 8.553204 Vivaldi (1678-1741)

管楽器のための協奏曲集

2つの狩猟ホルンのための協奏曲 ヘ長調 RV 539
ティム・カイスター、ステーヴン・スターリング(hr)

2つのフルートのための協奏曲 ハ長調 RV 533
デボラ・デイヴィス 、ドビング・デューク(fl)

協奏曲 (シンフォニア) ニ長調 RV 122
ジョアンナ・グラハム(fg)/クリストファー・フッカー 、ヘレン・マックイーン (ob)

2つのトランペットのための協奏曲 ハ長調 RV 537
マイケル・ミークス、クリスピアン・スティール=パーキンス(tp)

2つのオーボエと2つのクラリネットのための協奏曲 ハ長調 RV 560
クリストファー・フッカー 、ヘレン・マックイーン (ob)/ルース・マクダウェル、デイコッド・リクス(cl)

2つの狩猟ホルンのための協奏曲 ヘ長調 RV 538
ティム・カイスター、ステーヴン・スターリング(hr)

オーボエとファゴットのための協奏曲 ト長調 RV 545
クリストファー・フッカー (ob)/ジョアンナ・グラハム (fg)

ニコラス・クレーマー/シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア

NAXOS 8.553204 1994/95年録音

 シティ・オブ・ロンドン・シンフォニアはリチャード・ヒコックス(1948-2008)が創立したオーケストラ、彼の急逝後活躍しているんでしょうか。ニコラス・クレーマー(Nicholas Kraemer 1945-)は著名なバロック音楽の大家(モダーン楽器中心かな?)今回検索したら自分とお誕生日が同じでした・・・閑話休題(それはさておき)Vivaldiは”イ・ムジチの「四季」”から入った世代、爾来ぼちぼち半生記ほどのお付き合いとなりました。毎週【♪ KechiKechi Classics ♪】の更新を欠かさないのは、音楽に対する自分なりの緊張感やら真摯な姿勢を維持するため。毎日音楽は聴き続けてVivaldiには一種不思議な気安さ、気軽さを感じております。

 例えばALBIINONI(1671-1751)は同時代同エリアの作曲家、先日、協奏曲集 作品9(クラウディオ・シモーネ/イ・ソリスティ・ヴェネティ1969年)哀愁のオーボエ旋律にしっとり黄昏れました。こちらVivaldiは明るく、屈託なく、清々しい気分ばかり、陰影とか深みに非ず、もっとノーミソ空にして素直に受け止めるべき音楽じゃないか。著名になり過ぎた「四季」はリズムやら装飾音の過激さを競うようになって、ちょっと疎遠となりました。作品8だったら1-4(四季)より5-12のほうがずっと愉しいと感じます。この「管楽器のための協奏曲集」を棚から取り出した意味はとくにありません。6月梅雨の中休み、ノンビリ好天気な週末休みに相応しい音楽かな、と。胸を締め付ける涙の感動を!みたいな世界とはちょいとちゃいまっせ。

 ソロはオーケストラのメンバーと類推、どれも皆上手いもんですよ、クレーマーはオーソドックスに引き締まったスタイル。ヴィンタートゥーアでの立派なライヴ録音を拝聴したことがあるけれど、ここでもモダーン楽器を駆使して古楽器並みの引き締まったサウンドと、躍動リズム、ちょっぴり生真面目だけどね。音質ぴかぴか極上。

 2本のホルンの掛け合い協奏曲2作品は細かい音形自由自在、ほとんど超絶技巧。ここではモダーン楽器だけど、作曲当時”ほんまのコルノ・ダ・カッチャ”だったらちゃんと吹けるんでしょうか。バルブなんてなかったんでしょ?ちゃんと名人はいたのかも。フルートもMozart が音程の不安定さを嫌ったとの言い伝えがあって、ここではのびのび朗々とした金属製フルートがしっとり、みごとに鳴っておりました。どれもシンプルなリズム、旋律はワン・パターンといえばその通り。後のほうのはもっと堂々たる風情+洒落た味わい有。緩徐楽章はホルンは登場せず、チェロの切々ほの暗いソロがアクセントになっております。4分間はけっこう長い。終楽章の落ち着いた歩みにスケールたっぷり。

 どれも各々4−8分ほど、短くてあっという間。シンフォニア ニ長調は3楽章計わずか4分弱、朗らかに躍動する目まぐるしい旋律が一気に駆け抜けます。トランペット協奏曲はお馴染み、売れ筋作品でしょう。ソロの輝かしい、柔らかな切れ味はもちろん、バックとのバランスも抜群。わずか1分に充たない緩徐楽章にソロは登場しません。

 天上からそっと降りてくる風情なオーボエとクラリネットのための協奏曲はLargoの開始、Haydnを連想しました。クラリネットが入るとずいぶんと時代が下ったような錯覚に陥ります。おそらく作曲当時はシャリュモー?もっと演奏しにくい、粗野な音色だったんじゃないか。ラストのオーボエとファゴットの組み合わせは珍しいもの、オーボエのソロが入るとファゴットがオブリガートする、といったなかなか魅惑の旋律也。第2楽章には弦楽合奏が入らず、オーボエと通奏低音(ファゴットとチェンバロ)ための作品に仕上がって落ち着いたものでした。

 ラスト「Allegro Molt」は一気に青空が広がったように躍動して、ここは陰影たっぷりでした。

written by wabisuke hayashi