Villa-Lobbos ショーロ第8/9番
(ケネス・スカーマーホーン/香港フィルハーモニー管弦楽団)


NAXOS 8.555241 Villa-Lobbos

ショーロ第8番
ショーロ第9番

ケネス・スカーマーホーン/香港フィルハーモニー管弦楽団

NAXOS 8.555241 1985年

暗鬱晦渋なShostakovich、眉間にシワ寄せつつ悠然たるスケールを誇るBrahms も良いでしょう、しかし自分の嗜好本流はこちらなのだな。そんなことを昨夜考えておりました。東洋片隅のド・シロウトが連想するところの”アマゾンの密林”〜湿っぽい高温、極色彩の小動物、啼き声、うねうねほとんど動かないとろり粘着質な大河〜そんな情景を連想させる未知の世界、西洋、東欧露西亜、もちろん日本とも話法が根本から異なるエキゾチックな旋律サウンドに痺れます。NAXOS初期、もともとMarcoPoloだったCDは1985年録音、亜米利加の指揮者と香港のオーケストラといった趣向にも興味津々、けっこう上手くてサウンドに厚み雰囲気もたっぷり。驚くべきは鮮明な音質、奥行き広がり鮮度充分、名古屋郊外新興住宅街賃貸マンションの一室に南米大自然がやってまいりました。最高。(音楽日誌2014年6月より)
 Villa-Lobbos(1887-1959)は驚くべき多作家(その数)1,000曲!とか)、聴いたのはほんの一部分。どれもわかりやすい、濃密ローカルな風情を漂わせて素敵です。ショーロ(Choro、Chorinhoとも)は、ブラジルのポピュラー音楽のスタイル(ジャンル)のひとつらしい(ブラジルのジャズ?)。一年で一番寒い時期に、こんな湿度の高い、熱気音楽を聴くのも一興でしょう。

 ケネス・スカーマーホーン(またはシャーマーホーン、Kenneth Dewitt Schermerhorn, 1929-2005)についてかつて勝手なことを書いた、恥ずかしい記録もありました。とうにSibelius のCDは処分済、NMLにて拝聴可能です。当時、廉価盤専門のB級指揮者との失礼な認識、ナッシュビルには彼の名を冠したホールがあるそう。有名な「ブラジル風バッハ」がラスト録音となって、第1番は未収録となりました(アンドルー・モグレリアが代替/全曲録音完成)。いずれ、いくつか拝聴した彼の録音は立派なものばかりでした。香港フィル音楽監督を務めたのは1984-1989、現在の隆盛以前のこと。

 ショーロス (Choros) は十数曲あるそうで、第8番はフル・オーケストラ+2台のピアノ華々しい金管打楽器全開の作品也。ブラジルの旋律リズムは華やかでも短調の哀愁がある(でも明るい陽光を感じさせる)のですね。チャカチャカと鳴る軽妙な打楽器(なんでしょ?マラカスか)に怪しい不協和音に充ちて自在なリズムは激しく躍動して、大太鼓?もズドンとハラに響きました。まさに冒険活劇風一昔前の映画音楽みたい、シンプルかつ牧歌的な旋律とは云い難いのに、わかりやすい大衆的テイストに溢れます。

 ま、シカゴ交響楽団じゃないけど、これが香港のオーケストラ?的充実したオーケストラが鳴り渡っております。音質もかなり良好。18分ほどのヴィヴィッドな世界。

 第9番もかなり大きな編成のオーケストラらしく、こちらピアノは入りません。明るい短調の哀愁といった出足は似たようだけど、神妙に静謐な変拍子など多く出現して「春の祭典」のテイストも連想いたしました。こちらのほうが叙情味は勝った感じ。中間部のブラジル風懐かしい旋律リズム繰り返しノリは、おそらくマイケル・ティルソン・トーマス辺りなら、もっと切れ味があると類推いたします(未聴)。少々ダレ気味かも。

 やがて木琴とかマラカス(?かな)参入して雰囲気暗転気味、それでも第8番ほどの躍動に至りません。やや散漫に盛り上がりきらずに全曲23分半終了、日本では演奏機会もないようだけど、名曲と思うんだけどなぁ。

(2016年1月16日)

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written by wabisuke hayashi