Tchaikovsky 交響曲第5番ホ短調(ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィル1975年)


DG 4778005/38枚組 5,182円にて英国アマゾンより到着 Tchaikovsky

交響曲第5番ホ短調

ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー(1975年録音)

DG 4778005/38枚組 5,182円にて英国アマゾンにて購入したうちの一枚

 「カラヤンDG38枚組」は主に1970年代の主要な交響曲を集めているが、けっこう聴き進むのに苦慮しております。それは、おそらく我が家の安物オーディオ機器との相性問題であり、いまいち芯がはっきりしない、ぼんやりとした音質に感じます。Tchaikovskyは子供の頃散々聴いて、やがて大人になったときにすっかり拒絶反応が〜甘美な旋律がとても恥ずかしい!そんな感性も麻痺してした中年世代の今日この頃、けっこう楽しんで聴いております。このカラヤン盤を取り上げるにあたって前段の部がありまして、オーマンディの1981年録音が(きっと)良いんじゃないか〜でも、その期待は見事に裏切られました。じゃ、カラヤンだ。これがビンゴ!

 まず音質がよろしい。中低音が厚く、奥行きも自然、明晰な響きだけれど、きらきらとした輝きではない。

 第1楽章冒頭のクラリネットはゾクゾクするくらい上手いですよ。全体サウンドは濃密に苦甘くて、粘着質なレガートはいつものカラヤンそのもの。たっぷりと歌って立派、ゴージャス。磨き上げられたアンサンブルは揺れ動いて、時に雄弁なるタメあり、時にそっと抜いて鼻歌みたい、それが見事に決まって洗練されている。第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」は長大なるホルン・ソロが聴きものだけれど、意外と抑制が利いていて(いや、滅茶苦茶上手いんですよ、ほんま)露西亜系びろびろのヴィヴラートを回想すれば、意外と地味と言えば地味。それでも、圧巻強烈なる金管合奏の爆発は余裕であって、自在なる木管パートがあちこち遊びつつ、ビロードのような弦が延々としっとり広がっていく・・・最高!

 カラヤン/ベルリン・フィルって、時に安易に音が出過ぎる印象があるんだけれど、あまりに決まっている。この手練手管を嫌う方もいらっしゃるでしょうね。

 第3楽章「ワルツ」はもっとさっぱりと清楚でも良かったのかも。例の如しのそっと囁くように始まって、リズム感は少々老成している感じ。それにしてもエエ音でたっぷり鳴るオーケストラですねぇ。余裕で弾いているように見えて、細部まで(じつは)明晰、雰囲気たっぷりだけれど、雰囲気だけでは聴かせていない。Tchaikovskyだから、こんな甘みたっぷりでもよいんでしょう。大人の甘さだし。

 終楽章は朗々とした弦で魅了させたあと、柔らかい木管、そしてコントロールの良く利いた金管が絡んで、徐々に盛り上がって参りました。どこかしこ、あちこちに優雅なタメと余韻を残しつつ、激しいティンパニの一撃で、白熱の疾走が始まります。高級車のエンジンは余力たっぷりに高速道路を疾走する感じか。車内は静謐。打楽器と金管が咆哮しても、細部のサウンドは絶対に濁らない。音量を抑えても響きが痩せない、テンションが落ちない。露西亜のクサい馬力を期待すると、ずいぶんと洗練され、立派な独墺系交響曲(但し甘みもカロリーもたっぷり)に変貌していて、あまりに上手すぎる・・・けど、この演奏、録音とも絶賛を惜しみません。

 最後のアッチェランド〜勝利の凱旋まで見事に決まってまっせ、悔しいくらい。(蛇足だけれど、Beethoven 辺りを再聴しなくては。現プレーヤーに替えて印象変わったのかも)

(2009年11月21日)


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written by wabisuke hayashi