Tchaikovsky 交響曲第1番ト短調「冬の日の幻想」
(リコ・サッカーニ/ブダペスト・フィルハーモニー)


Tchaikovsky 交響曲第1番ト短調「冬の日の幻想」(リコ・サッカーニ/ブダペスト・フィルハーモニー)

Tchaikovsky

交響曲第1番ト短調「冬の日の幻想」

Prokofiev

ピアノ協奏曲第3番ハ短調

リコ・サッカーニ/ブダペスト・フィルハーモニー/クン・ウー・パイク(p)

BPO BPOL1021/14 2001年ライヴ録音  22枚組6,645円

 ワタシが子供の頃、LPはほんまに高価な贅沢品でして、耳にできる音楽は貴重で、大切に拝聴したものです。社会人になって、最初の冬のボーナスで購入したのはグレン・グルードのBach 全集でした・・・嗚呼、自分はこんなに贅沢が出来るようになったとの感慨深かった。やがてCD時代がやってきてしばらくLPで粘って、1990年頃からCD廉価盤一筋!こんな話題、このサイト上に千度書きましたね。【♪ KechiKechi Classics ♪】というアホな題名サイトを開いたのも「CDは高過ぎる!音楽を庶民のものに」という強い願いからでした。

 ・・・そして幾星霜、21世紀になってその夢は”叶った”のです。BPO(ここではブダペスト・フィル)ライヴは岡山タワーレコードにて9,000円弱で並んでいて、ちょっとココロ動いていたし、HMV通販で「22枚組6,645円!」〜購入決意したのが、2005年11月12日、出始めのCD2枚分でっせ。(その後別通販でもっと安く見掛けたのはご愛敬)残された課題は”聴き手の新鮮なる感性”のみ・・・じつはこれこそが一番難しい、無垢なココロで聴いていた子供の感性は失われてしまった、ということに気付きました。ようはするに”TchaikovskyもProkofievも苦手だよ!”という不遜なる思想であります。

 ワタシが世間で言うところの「メジャーどころ」を好まないのは、(かつての)職業的評論家に対する疑念(絶賛するほど良くないな、とか、エエ加減なコメントだ、とか)であり、1970年頃「廉価盤LP」で活躍した演奏家への郷愁であり、”無名でも虚心に音楽だけ聴きましょ”という基本姿勢からでもあります。”22枚一気オトナ買い”すれば、玉石混淆、当然自らの好みから外れるものだって含まれます。でも、聴いてあげなくっちゃ・・・結果として、苦手は克服される・・・こともある。

 Tchaikovskyの交響曲を避けるようになった直接的要因は、きっとカラヤン/ベルリン・フィルの第4〜6番(1966/65/64年)なのでしょう。そこからのリハビリには、リッカルド・ムーティの全集と出会った(今年)2007年迄10年以上は掛かっている計算となります。長々と無駄な講釈垂れてきたが、リコ・サッカーニによる交響曲第1番ト短調に対する特別な感銘やら、感慨があったわけじゃない。嗚呼、素敵な旋律だな、ロシア民謡のテイストが楽しいな、と素直に感じられるようになった、という事実です。

 26歳の作品である交響曲・第1楽章には「冬の日の幻想」との表題があります。民謡風の懐かしい主題が流れて、軽快で明るい、夢見るような雰囲気はやはり若者の音楽なのでしょう。サッカーニはどんな作品も同じような、明快でわかりやすい表現を旨として、オケに艶や重量感は求められないが、颯爽溌剌としております。むしろこんな飾らない方向がワタシには好ましい。第2楽章「陰気な土地、霧の土地」は、幻想的な弦の歌に彩られて静謐であり、晩年ほどのメランコリックが濃厚ではない・・・これもサッカーニの狙いでしょうか。オーボエもフルートもさっぱりとした音色で、それなり哀しげでした。

 第3楽章「スケルツォ」は、まるで「哀しいくるみ割り人形」であって、そっと耳元で囁くような繊細なる旋律。終楽章は暗鬱なる出足が”いかにも”風だけれど、やがて(第1楽章とは別の)民謡風の主題が現れ、纏綿と歌います。これが、ほんま”初耳でも知ってまっせ”的味わいでして、最初っから最後までわかりやすい、懐かしい作品はもっと演奏機会があっても良いのにね、と思います。

 やがて快活なる大団円に向け、オケは大爆発!民謡風旋律は発展し、躍動し、歓喜の叫びへと至る〜ライヴでしょ、これだけ整ったアンサンブルと勢いを維持してくだされば、作品を楽しむ上では充分だと思います。あまり、作品に対して先入観を持たずに、機会があれば聴いてみよう、という成果であります。

 クン・ウー・パイク(白建宇)は1946年生まれの名手。Prokofiev ピアノ協奏曲第3番は、やや外面的虚仮威し的作品と感じて、余り好みではなかったんです。これはまったく鮮やかな技巧の冴えが余裕であって、オケは交響曲よりいっそう快調であって、むしろ伴奏物に適性があるのかもしれません。”作品を楽しむ上では”みたいな前言条件必要なく、おそらくは稀有なる名演奏のひとつ也。

 ハンガリー国立歌劇場でのライヴは、残響過多でも、乾き過ぎることもなくて、良好な音質でした。

written by wabisuke hayashi