Tchaikovsky

大序曲「1812年」作品49
バレエ組曲「くるみ割り人形」作品71a
幻想序曲「ロメオとジュリエット」

ジュリアン・コヴァチェフ/ソフィア・フェスティヴァル管弦楽団

DARPRO　RS 952-0040/A　1992年〜1993年録音　4枚組800円で購入したウチの一枚

　2001年末から体調が悪かったが、2002年の声をきいて徐々に回復、苦手としていたBrahms とかTchaikovskyの管弦楽曲も、なんとか楽しく聴けるようになりつつあります。コヴァチェフは1984年カラヤン・コンクール優勝の経歴の持ち主らしい。ソフィア・フェスティヴァル管のことはサイトを参照のこと。（チャカロフが1986年に設立した実在のオーケストラでした）。

　ワタシが手に入れたのは交響曲第4･5･6番とこの管弦楽曲の４枚組だけれど、交響曲は全曲録音があるらしい。ほか、SchumannとかDvora'kも全集のCDが手に入るから、たいした録音歴です。Tchaikovskyを聴いた印象では、ぜひほかの録音も聴いてみたい、そんな気持ちになります。想像よりずっと立派。

　録音状態は独特でオフ・マイクというのでしょうか、ちょっと音の空間がスカスカっぽい。音量の小さなところと大きなところは極端な差で、あまりいじっていないのかも知れません。自然といえば自然か。これは優秀録音なのかもしれません。オーケストラの音色そのものも誠実というか、妙なアクやクセを感じさせないし、もちろんヘロヘロのヘロ・オーケストラじゃない。

　さて、Tchaikovskyにはなにを求めますか？「1812年」はドラティ/ミネアポリス響（1958年録音）以来、オーディオ的な興味で語られることが多いと思うが、カンゼルのはツマらなかった記憶がある。ストコフスキー（大砲が「ヒュ〜ン」と鳴るやつね）や、オーマンディが合唱を加えたり（マゼールもそうだったはず。楽譜はどうなっているのか？）、実録の大砲、ハデハデしい教会の鐘なんかも収録しちゃって、効果ばかりに目が行く曲でしょうか。

　静かなギリシャ聖歌で開始。ロシア軍の行進を思わせる勇壮な主題、フランス国歌（これ、フランスのナポレオン軍の侵攻ね）、ロシア人民の不安におののく民謡風の旋律、そしてラスト、ロシア軍の行進が大砲とともに回帰し、ロシア国歌で勝利を祝しながら終了するという、まことにわかりやすくも楽しい曲。

　リズム管、金管を中心とした馬力、歌心も必要です。ソフィア・フェスティヴァル管には、特別な色気とか厚みは期待できななくて「鳴り」がよろしくない。（とくに弦）アンサンブルや指揮者の表現としては緊張感があって、悪くないんですよ。でもね、この曲って一種パフォーマンス期待！の世界だから、真面目一方ではツマらないかも。

　金管の技術的な破綻もないんだけど、エグい迫力はなし。大砲も入るし、打楽器も頑張っているが、鐘が奥にこもって目立たないのは残念。努力賞はあげたいが、残念ながら予選通過ならず。

　「くるみ割り人形」は、繊細で緻密なアンサンブル。元祖メルヘンな曲でメリハリもあるし、木管も美しくて、なかなかこれは楽しい。こういう曲が、コヴァチェフ/ソフィア・フェスティヴァル管には似合っているのでしょうか。大仰すぎない表情に好感が持てました。

　「ロメ・ジュリ」こそ、なかなかつかみ所のない曲でしょうか。前半の静かな旋律（ローレンス僧？）をどう明快に表現していただくか？「モンターギュ家とキャピュレット家の争い」の争いを劇的に、力強く盛り上げたあと、ロメオとジュリエットの恋の囁きをいかに甘美に歌っていただけるか。

　金管やティンパニの迫力（ホルンの距離感もよろしい）、纏綿と歌う弦もスッキリ好調です。いつになく全体像が明快です。「1812年」よりこちらの方が、オーケストラの調子もよろしいような気もしますね。但し、重量感とか、「ロシア風粘着気質」は期待できない。爽やかだし、良く歌ってくれるところも評価したい。金管の奮闘など努力の跡が伺えるが、弱音の薄さは気になります。

　ま、でも@200が4枚組ですから。お金のない若い人達に誤った姿を伝えるような演奏じゃないでしょ？音楽は幅広く、あまりネーム・ヴァリューにとらわれずに聴きたいものです。（2002年6月28日）