Tchaikovsky 大序曲「1812」年
(アンタール・ドラティ/ミネアポリス交響楽団)


MERCURY  434 360-2

Tchaikovsky

大序曲「1812年」作品49(1958年録音)

ミネアポリス交響楽団/ミネソタ大学ブラスバンド

イタリア奇想曲 作品45(1955年録音)

Beethoven

ウェリントンの勝利 作品91(1960年録音)

ロンドン交響楽団

アンタール・ドラティ

MERCURY 434 360-2 日本語解説付き1,500円(このCD以来、@1,000円以上のものは買ったことはない)

 音楽の価値、発見は無限なんだが、肝心の聴き手がオツカレ気味なので、想い出話、四方山話、いつもの戯れ言でお茶濁し更新としましょう。

 ワタシより年下、ネット会では大先輩であったゆらさんが亡くなって数年経ちました。一度、京都で呑んだこともあるんですよ。その店はゆらさんに教えていただいたもので、いまでもときどきお邪魔します。もうサイトはとっくに閉鎖されたが、現役時代は時々お邪魔してBBSにも書き込みさせていただいておりました。21世紀なりたて?未だ、ネット上での遣り取りに熱気と節操がありましたね。ウチのBBSなんか、ずいぶんと(相対的に)活況に充ちているほうだと思うが(読者に感謝)ネットが日常になって、かえって”蛸壺状態”に至ったと思います。孤立ばかりで共感が少ない時代・・・

 ゆらさんのBBSにて「1812年はエリック・カンゼルのが良い」との書き込み有。LP時代、主にオーディオ的な価値から推奨された録音であって、ワタシはツマラない、元気のない演奏と感じておりました。ゆらさんは(例の如く)抑制された調子で「あまり賛同できない」旨返答されており、ワタシも続けて「やはりアンタール・ドラティが横綱」的書き込みをいたしました。すると件(くだん)の「カンゼル」氏は怒り狂って「二度と”ゆらこめ”に訪問しない」といった(しかもゆらさん独特の言い回しのそのまま真似て)書き込みで終了いたしました。

 その件で直後にゆらさんからメールが来たんですよね。「なにか私はマズいことを書いたでしょうか」と大変な心痛ぶり、どう答えたかの記憶も既にありません。ネット上では自分の意見を否定(と誤解)されたら、けっこう怒り狂う人がいるものです。意見は多種多様にあってこそオモロい。ましてや音楽は嗜好品であって、お仕事作業マニュアルではない。「カンゼルの凄い録音に心底痺れた!」で(終わって)よろしいのです。「カンゼルも、ドラティもGood!」でOK。各々の感じ方が違う中での”共感”が重要であって、皆「音楽愛好家」じゃないですか・・・そんなことを思い出しました。

 アンタール・ドラティの「1812年」(1958年)は、演奏録音とも極上、最高の水準なんです。先ほどエリック・カンゼル↑のリンク先を確認したがカスタマーレビューなし、別リンクでも「意外とツマらない」とのコメントが一件のみ。ゆらはん!我らの耳はたしかでしたぞ。

 再聴のきっかけは協奏曲100枚組ボックスの入手であって、その75枚目にTchaikovskyのイタリア奇想曲〜アンタール・ドラティ/ミネアポリス交響楽団(1954年)が収録されます。これってMERCURY1955年録音と一年しか(表記が)違わぬし、タイミングも誤差の範囲でほぼ同じ。著作隣接権は切れているから、せっかくの優秀録音(ステレオ)をモノラルで収録しなおしたのか?と不安になりました。1955年録音は驚くべき鮮度であり、ドラティの歯切れの良い演奏だって、おそらくは「イタリア奇想曲のヴェリ・ベスト」言い切りたいほど。

 1954年は音質はかなり落ちる(1954年を勘案すればそうとうに上質だ)が、演奏解釈の方向は同じです・・・不安になりました。記憶を辿って棚中の書籍を開くと「1812年もイタリア奇想曲も旧録音が存在する」とのこと。よかったぁ・・・というか、協奏曲100枚組ボックスには既存所有ダブりはいっぱいあるんですけど。よくよく見れば、1954年録音はロンドン交響楽団に非ず、ミネアポリス交響楽団じゃないの。冷静に聴けば、例の如し少々コクの足りぬ、安易なサウンドと理解可能。いずれ、新旧録音、きりりと引き締まったテンション高い演奏が愉しめることになりました。

 Beeやんの「戦争交響曲」(ウェリントンの勝利)は前回更新ではほとんどコメントなかったんですね。交響曲全集にもまず収録されぬ不人気作品だが、ま、肩肘張らず軍隊ラッパとか小太鼓の行進、大砲やら銃のドンパチを愉しめばよろしいんです。ま、ドラティのが一枚あれば良いな、と考えていたが、Beethoven 87枚組購入したらオンドレイ・レナルト/スロヴァキア放送交響楽団の演奏が収録されておりました。NAXOS音源かな?

 何種も聴き比べて、個性の違いを堪能!すべき音楽でもないでしょう。音質の良いもので、機会があれば聴くのは吝かではない。

(2010年1月1日)

 MERCURY のCDは日本で@1,500で売られたので、良心的なほうだと思います。でもねぇ、なかなか安くなってくださらない。中古も滅多に出ない。それだけ質が高くて、人気がある証拠でしょう。たしかこのCD、1996年くらいに買ったはず。どうしても欲しかったんですよ。その鮮明なる録音、大砲とマスケット銃のド迫力。デジパック仕様の美しいジャケット。(CD時代になってからは、そんな楽しみは少なくなった)

 そしてなにより演奏が優れております。

 テラークがカンゼルの指揮で「1812年」を録音していて、音質が売り物で有名だったでしょ?でも、演奏がホントつまらなかった。それだったらストコフスキーが、大砲をぶっ放して「ヒュ〜ン」と残響が付いているやつ(但しLP時代)のほうが、ずっと楽しかった。たしかこのドラティ盤、LPのときはチャイコフスキーだけの収録だったはず。

 Beethoven 「ウェリントンの勝利」(戦争交響曲)はどうでも良い曲で、このCDでも滅多に聴きません。ま、銃の迫力はたいしたものだけど、音楽がひどすぎますね。思い出したけど、LP時代のコロムビア・ダイアモンド1000シリーズでは、ウェルナー・ジャンセン指揮/ロサンゼルス交響楽団の演奏が出ていて、最悪な音質だった記憶もあります。(ライナー・ノーツではLAPOといっしょくたにしていて、いい加減なもの)懐かしい。(片面がクリップスの序曲集だったはず)

 「イタリア奇想曲」は1955年録音。(信じられますか?)冒頭、金管の立ち上がりがはっとするほど鮮烈で、濁りはまったくない。このCDは、やれ大砲だ銃だ、とそんなところばかり話題になっているけど、じつはこの曲がもっとも凄い音。金管、木管、と旋律が弾き継がれて、弦のトレモロをバックにシンバルの一撃。その鮮度、定位のたしかさ。

 オーディオ類には金をかけない(正直、よくわからない)ワタシですが、音は良いに越したことはない。どちらかというと、自然な奥行きとかライヴの臨場感が好きだが、なんかこの録音は人類の英知を集めた「音の技術集大成」みたいなものが感じられて、感動しきり。各パートの分離の良さに驚愕します。腹に響く大太鼓、タンバリンのたしかな位置。

 演奏は、さすがのアンサンブルの優秀さ。ドラティは現代的な明快さで、バランス感覚も最高。ロシア風粘りすぎの節回しでもなく、やや物足りないくらいすっきりとしているが、ロンドン交響楽団のテンションは絶好調で(おそらく現在より上か)、迫力充分説得力有。

 大序曲「1812年」は、スコアに大砲があるんでしょ?ラストの鐘は?ま、チャイコさんも、山師というか、エンターテイナーというか、凄い曲を作ってくれたもの。おそらく4・5種類この曲は持っていると思うけど、これが一番堪能できます。さっきはイタリア奇想曲の音が凄い、と書いたけど、3年分新しいこの録音の鮮度はいっそう上。

 金管、打楽器の音の立ち上がりの切れ味はいうことなし。朗々と響いて、そしてド迫力。のけぞります。どのパートも明快。

 オケがねぇ、アンサンブルは優秀なんだけど、ロンドン交響楽団に比べると音色にコクが少々足りない。響きに奥行きが足りない。(録音のことじゃないですよ。軽いような・・・)ミネソタ管となった現在でも、この個性のない音色は健在なんですよ。でも、清潔なフレージング、キリリと引き締まった筋肉質の演奏ぶりは、いつも通りのドラティの解釈。

 ・・・・・・で、あるからこそ大砲も鐘も生きる。大砲が、めちゃくちゃな爆発をしても音が濁らないのは何故?響き続ける鐘の音色の中でも、オケの旋律が明快に分離しているのは何故?たまに聴くとストレス解消に最高。

 「ウェリントンの勝利」はマスケット銃が聴かれます。Beethoven が生きているうちは人気があって、ずいぶんもうけたそうですね。鉄砲が「パン!」と鳴ると、思わずよけてしまう。

 全世界で200万枚以上売ったそうで、ディームス・テイラーというひとの語りと、大砲、銃、鐘の録音がたくさん入っています。鐘は、いくつもの音を組み合わせて厚みのある音に仕上げているんですね。スタッフの雑談も一緒に入っており、その生々しいこと。大砲の音は、なんど聴いても仰け反ります。なんといいますか、「音」だけじゃなくて、「辺りの空気」が見えます。

 ジャケット・デザインはLP時代のものを忠実に再現していて、素敵。ナポレオンの絵もかっこいい。

 バカにされるかも知れないが、唯一狙って買った1,000円以上のCD。後悔しておりません。こんなことも、タマにはあるんです。(1998年頃執筆か?)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi