Stravinsky バレエ組曲「火の鳥」(1919年版ハイティンク1961年)
バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版ロスバウト1962年)


PHILIPS PHCP-20425 Stravinsky

バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

ベルナルト・ハイティンク/コンセルトヘボウ管弦楽団(1961年)

バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)

ハンス・ロスバウト/コンセルトヘボウ管弦楽団(1962年)

PHILIPS PHCP-20425

 1999年に発売された廉価盤のシリーズらしい。ハイティンクの録音も膨大、「火の鳥」はベルリン・フィルとの全曲盤(1988年)が著名でしょう。こちら組曲版はほとんど日の目を見ない感じ。ロスバウトに至っては録音の存在そのものがほとんど認知されておりません。両作品ともパブリック・ドメインに至ったから、どなたかネットに拠出していただいて、広く聴かれることを希望しましょう。(自分でやれ、ってか。勘弁して)

   「火の鳥」との出会いは中学生?バーンスタインの1919年組曲版(17cmLP)でした。夢見るように美しく、暴力的な爆発に心奪われた記憶も鮮明、長じて全曲版を愛するように至って、世間でもそれが主流となったのでしょう。組曲版の新録音って少ないと思います。20分間、集中力減退甚だしい自分にはちょうどよろしい長さ、上手い具合に”聴きどころ”揃えて愉しい音楽に間違いなし。

 若いころのハイティンクはオーソドックスに過ぎてオモロない、そんな世評は最近見直されつつあるでしょう。中庸なテンポ、大仰なる節回しとか、デフォルメ甚だしいテンポの揺れとは無縁、オーケストラの技量を素直に引き出して、32歳若手の演奏は見事でした。ボリュームを少々上げて拝聴、中低音充実したPHILIPS録音に不足なし、充実したサウンドを堪能いたしました。序奏のバスの音型、これをリズミカルに奏して下さるのって、意外とないもの(ブーレーズとかジョージ・セル辺り、ちゃんとしております)バランス感覚溢れてオーソドックス、特異特殊な表現に非ず、基本のリズム感の良さ、コンセルトヘボウの暖かい、厚みのある響きを活かして、「カスチェイ王」の爆発、続く「子守唄」の優しさ美しさ、終曲へのクライマックスの作り方、そのバランス感覚に不満なし。

 現代音楽の闘士・ロスバウトの「ペトルーシュカ」って、ありそうでなさそうな存在。なぜ、オリジナルな1911年版じゃないのか。録音の都合かも。ハイティンクより一年後なのに、音質はやや(かなり良好なのは前提として)ちょっぴり落ちます。演奏は同じオーケストラでありながら、ハイティンクとは好対照、重い、オーケストラをごりごりコントロールして、ひりひりするような高圧的威圧を感じさせるもの。「ペトルーシュカ」もメルヘンでエエやないの、ロスバウトは”現代音楽の古典”として、怪しい切迫感満載、少々時代掛かった柄の大きさをたっぷり伝えるもの。

 強面印象は録音印象ではないと思います。全編ユーモラス、第4場「謝肉祭の夕方」は遊園地の喧騒が愉しいと思っていたけれど、この緊張感、鋭い切れ味は怒りに充ちておりました。サウンドそのものは1947年版の薄さを感じさせません。切れ味たっぷりなピアニストのクレジットなし。

written by wabisuke hayashi