Sibelius 交響曲第4イ短調/第5番 変ホ長調
(ペトリ・サカリ/アイスランド交響楽団)


NAXOS 8.554377  購入金額失念500円ほど? Sibelius

交響曲第4番イ短調 作品63
交響曲第5番 変ホ長調 作品82

ペトリ・サカリ/アイスランド交響楽団

NAXOS 8.554377 1997/8年録音 購入金額失念500円ほど?

 昨年2008年の来日公演予定が、世界的金融危機にてキャンセルになったのは残念でした。ワタシはこの演奏をずっと贔屓にしていて、記憶では清涼かつアツい表現に感動していたはず〜だけれど、なぜか久々聴取の印象イマイチ。録音ボリュームが低いのか、それとも、もともとが”鳴らない”オーケストラなのか、作品が交響曲中もっとも難解な作品である故か?”弱い、線が細すぎ”といった感触で、どーもココロの琴線が震えない。

 どこかのサイトで、コリン・デイヴィスを聴いちゃうと〜みたいな比較があったけれど、ワタシはよく鳴るオーケストラ=Sibelius 指向ではないと思うんです・・・とは(つい先日の)「音楽日誌」での”ちょろ聴き”感想でした。音楽の感動とは人それぞれの嗜好があるし、そのときの体調、精神状態によっても感じ方が異なるものです。十年くらい老けたらぴん!と来た、みたいなこともありますし。オーディオ相性だってあるでしょうが。で、ちゃんと再度時期を変えて仕切りなおし。

 第4番イ短調は超・難解作品であって、暗鬱、深く沈静するような暗い旋律で始まりました。息も絶え絶え、有機的につながらない細切れの旋律が時に幻想的であり、混沌としております。いつ終わったのか?知らぬ間に第2楽章「アレグロ」へ。表情はやや明るく、微笑みを浮かべてメリハリもあるが、”有機的につながらない細切れの旋律”パターンは同じ。先回、”弱い、線が細すぎ”との感触は「繊細」に変化しておりました。荒涼として、ひんやりとしたサウンドのオーケストラがSibelius によく似合う。

 この楽章だって、いつの間にか終わって第3楽章「ラルゴ」へ。瞑想、といえばカッコ良いが、これもつかみ所のない楽章でして、辛気くさいというか、内向きのモノローグが延々と続くような、盛り上がらない(?)深夜向け音楽。終楽章はチューブラベルが指定らしいが、(おそらくここでは)グロッケンシュピール(鉄琴)が使われているはず。テンポ・アップし、明るい旋律も出現するが、薄気味悪い不安はついに取り除かれない・・・

 以上、じつは誉め言葉のつもりでして、これほど北国の厳しい光景を連想させるような、冷涼な音楽ってあまりないと思うんです。で、肝心の演奏なんだけど、朗々と雄弁に鳴り響く表現が似合うのか?作曲者はオーマンディの演奏を評価していたし、ワタシだってバーンスタイン(旧録音全集)やロジェストヴェンスキーの演奏が嫌いなわけじゃない。サカリ/アイスランド響のサウンドは、繊細で洗練された”クール”が存在していると思います。雄弁ではないが、アンサンブルは整って集中力もある。ラスト、金管の迫力にも欠けていない。録音も悪くないと思います。

 上記引用のコリン・デイヴィス盤比較の記事は、たしか最初のボストン交響楽団との録音だったはずだけれど、ワタシはあの演奏は激しくて(?)好きになれませんでした。(全集処分済)いかにも”線が細い”演奏なのだろうが、それは作品に似合っている雰囲気サウンドだと思います。わかりやすい表現ではないが。

 第5番 変ホ長調は爽快、かつ明るい雰囲気を持った作品だけれど、やはり難解かな?3楽章形式。第1楽章「テンポ・モルト・モデラート」は、清涼な空気、明るい光明を感じさせるが、旋律は細切れであり、息も絶え絶えでメリハリがない。サビが微妙、”話法”が独墺系じゃないから、馴染みと慣れが必要なんです。一件穏健だけれど、じつは前衛なのか。8分ほど経過したところで、ようやく歓喜の声が上がりました。

 第2楽章は変奏曲であって、穏健シンプルなる静謐旋律が繰り返されます。これもSibelius 特有の”語法”でありまして、Beeやん交響曲辺りのわかりやすくも、効果的な変奏曲とはずいぶん姿が異なる。上方に発展しないというか、あくまで粛々と横流れ、平板に変化して、情感の高ぶりは抑制的です。ここを独墺風圧巻の盛り上げで熱烈に演って下さると、清涼テイストは台無しになるんです。

 終楽章は、やはり”旋律は細切れ”。細かい弦を主体とした旋律は全貌を現さず、やがてホルンの(まるで鐘が鳴るような)わかりやすい希望旋律に導かれ、安寧の気分が満腔に充ち充ち、あくまで清涼な空気が流れました。そのまま大団円に向かわず、再び不安げなる細切れ旋律が舞い戻って、先ほどの希望旋律が戻っても、不安感は除かれない。

 やがて、ゆったりとその姿を安寧に変化させ、先ほどの”まるで鐘が鳴るような”が種々の楽器に引き継がれ、ほんまの、万感胸に迫るフィナーレがやってまいりました。いつ終わったのか?「間」満載のラストは実演では、拍手一番乗りタイミングに困ることでしょう。(フライング・ブラーヴォを狙うから恥をかくんだ)

(2009年3月27日)

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written by wabisuke hayashi