Sibelius 交響曲第1/5番(バルビローリ/ハレ管弦楽団 1957年)


Sibelius  交響曲第1/5番(バルビローリ/ハレ管弦楽団 1957年) Sibelius

交響曲第1番ホ短調 作品39
交響曲第5番 変ホ長調 作品82

バルビローリ/ハレ管弦楽団

DUTTON CDSJB 1018 2枚組 1,390円で購入したウチの一枚

 EMIバルビローリの全集を購入したのが、2004年7月。なんども聴いているお気に入りだけれど、コメントは付けられません。こちらは旧録音を集めて復刻した2枚組でして、PEYレーベル録音の2曲はステレオとなります。日本に於けるSibelius (大)人気は、一方の独墺系圧倒的支持の状況を考えると、少々意外なような気もしますね。先日(別件の話題だけれど)BBS上で読者から「この演奏は重厚にして一糸乱れぬアンサンブルで、勢いがあります」〜というコメントがあり、嗚呼、コレ独墺系交響曲に対する嗜好だ、と感慨も深く思い起こしました。(当該作品は小粋なフランス小品であったが)

 人様の嗜好は様々であり、自由自在。皆、各々音楽を楽しめたら、それでよろしいんです。(そのことを前提に)ザンデルリンク/ベルリン交響楽団の全集(1971-1977年)には、個人的に少々違和感有。あまりに立派すぎ、堂々とし過ぎ、構築ガッチリし過ぎ。フレージングがはっきり朗々として、重量感たっぷり〜これは誉め言葉にもなりそうな個性だけど、Sibelius ではないような(この辺り、曖昧だけれど)気もします。ベルグルンド/ボーンマス響が「北欧の清涼」のみで括れない、時に荒々しい厳しさを感じさせることとも意味合いが異なって、むしろカラヤンに近い。閑話休題(それはさておき)

 我らがバルビローリ旧録音は、基本後年の表現と変わりません。”詠嘆の世界”ですね。横流れのズルズル旋律を引きずって、甘美に、時に泣きも込めて、纏綿と歌い続けちゃう。細部曖昧でメリハリが足りない、爆発に不足する、アンサンブルが甘い・・・んなことは、最初っから狙ってまへんで。これで良いんです。ツボにはまると前代未聞、空前絶後の個性的かつ魅力的な(揺れるようなクサい)世界を堪能できます。絶滅した儚い表現。進む世界標準化。工業製品安全性や農薬残留基準じゃあるまいし、ジョーダンじゃないぜ。

 交響曲第5/7番への言及は既に(かなり以前)しているけれど、これはマジックだから、まともな文書になりえないと言い訳しておいて、交響曲第1番ホ短調は、1966年盤より表情がやや濃厚に感じました。アンサンブルの集中力もこちらが上。録音(想像よりずっと状態良好)の加減でしょうか。暗鬱寒冷な冬の原野から、やがて一条の朝日が射し込んで、もう希望が満ち溢れ押し寄せる第1楽章開始。深呼吸するようにフレージングをタップリ歌わせて、テンポのタメ、泣き(弦も、管も、ハープだって!)もあります。でも、”煽り”じゃないんだな。あくまで響き清涼で、走らない。重くならない。そして切なくなる。表情は充分濃厚なのにね。

 第2楽章「アンダンテ」の囁きは痛々しいほど繊細であり、第3楽章「スケルツォ」は慌てず、騒がず、じっくりリズムを刻みました。そうそう、全体にかなりテンポは遅めで全40:44(これは後年でも変わらない)掛かります。じっくり、言いたいことがある、といった風情だけれど、この楽章のアンサンブルは優秀とは思えない。でもさ、Brucknerじゃないんだし、少々緩いアンサンブルを楽しみましょう。中間部の木管が優しいじゃないですか。

 激情の果て、悲劇の行き着く先、といった終楽章は、途切れ途切れのモノローグでしょうか。大音量で叫ばない(オケが鳴らないだけ?)ずっと抑え気味のようであり、悲劇的な旋律を前面に煽りません。重くもない。それをやっちゃうと、うるさい音楽に至ってしまうのか?やや細部アンサンブルの詰め甘く、かなりの快速で走る最終楽章。静謐な部分での”泣き”頻出、”詠嘆”思う存分満喫。

 嗚呼、Sibelius お腹一杯味わいました!的達成感満足感あって、濃厚な味付けだけれど塩分控えめ・・・そんな演奏でした。

 最近、集中力が続かなくて「はい、お次第5番 変ホ長調行きます。よろしく」とはならない。少々休憩下さいね。エエ曲ですよ。初期の息の長い甘口旋律が消えて、短いエピソードの積み重ね(「ヨコハマ、たそがれ・・・」の歌詞を思い起こせ)は難解でもあります。でも、日本では後期作品も人気があって、演奏会に人が呼べるんです。これこそ、「かっちり縦の線が合って、重厚で一糸乱れぬ・・・」というのは似合わないと思うんです。なんせ、全編”幻想曲”みたいな作品だから。いかにも雰囲気で聴かせてまっせ、的アンサンブル。

 なんやらワケわからん愚痴ぶつくさ、息も途切れ途切れに呟いているいるうち(ここを乗り切れ!)に、いつのまにか明るく軽快なる結末に集約される第1楽章。マジックだから計算尽くじゃなくて、ほんまにわかりにくい世界だけど、荒涼たる景色を延々と流れるようで違和感はないんです。第2楽章「アンダンテ」だって、短い(意味もないようなシンプルな)旋律が、繰り返し木管と弦で囁き交わすウチ、どんどん盛り上がっていく哲学的な音楽。不思議な味わい。

 大爆発はついぞやってこない。ささやかな喜びを見出しような終楽章は、細かい音形の積み重ねで、降りしきる雪を表現しているようでもあります。ホルンのシンプルな旋律の繰り返しが、やがて木管が絡んで全体に広がって太陽が顔を出しました。入念な”歌”に充ちているが、粘着質な重厚感は存在しない。ムリにまとめていないようでもあって、「短いエピソードの積み重ね」にドラマを感じてくれ!的作品であり、演奏でしょう。

 かっちり起承転結、大団円!的構成を目指さないバルビローリ。ラスト、どんどんテンポを落としていって纏綿と歌う(哀しみが深まる)ところこそ、彼の真骨頂でした。泣けます。

(2005年8月19日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi