Schubert 交響曲第5/6/7/8番(歴史的録音による)


History  205193-303 Schubert

交響曲第8番ハ長調D944「ザ・グレート」

カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー(1946年録音)

交響曲第7番ロ短調D759「未完成」

メンゲルベルク/コンセルトヘボウ管弦楽団(1939年録音)

交響曲第5番変ロ長調D485(1938年録音)
交響曲第6番ハ長調D589(1944年録音)

ビーチャム/ロンドン・フィルハーモニー

History 205193-303 10枚組 2,286円で購入したウチの2枚

   「浪漫派の作曲家は、交響曲より室内楽曲、器楽曲のほうが楽しめるかも知れません。Mozart の天性の魅力に及ばず、Beethoven の完成度に満たない。後期浪漫派のBruckner、Mahler のめくるめく大規模管弦楽の多彩さには聴き劣りがする・・・というのはワタシの勝手な言い草でしょう」〜とワタシがかつて書いた「Schubert iade」10枚組のウチ、件の交響曲2枚。しかも、第6番以外は既に同じ音源を所有していた、という曰く付き。(番号表記はCDに従った)

 数回続けて聴いた結論は、古典的な均整が目立つ第5/6番〜Schubert は「未完成」「グレート」へと浪漫的深化を遂げた、ということです。ラストの遺作交響曲に至っては「すべてが天衣無縫の歌に充ち」ている(音楽日誌より)んです。全曲すべて同じ表現方法では、曲の魅力を引き出すことは出来ないでしょう。続けて聴くには、ノーミソの切り替えがたいへん難しい。

 戦後間もなくて、まだ公式活動が出来なかった(戦犯容疑?)若きカラヤンに目を付け、ウォルター・レッグが録音させた有名な録音(のひとつ)が「グレート」です。これはまったく素晴らしい。録音は想像通りか、それ以下の水準。ヨロしくありません。でも、美しく、流れの良い演奏です。耳あたりの良さは後年の巨匠時代と変わらない。

 いや、清潔だし、キリリと引き締まって若々しい魅力だと思います。後年のような「砂糖甘さ」はなくて、劣悪な音質の中からウィーン・フィルの魅力横溢。戦後すぐの、必ずしもベストな状態ではないはずですけどね。冒頭、牧歌的なホルン・ソロ、艶やかに泣く弦、木管も柔らかい。(コレ、全曲を通して常に気になる存在)自然な躍動感に充ちたメリとハリ。オケのふくよかな厚み。

 やや早めのテンポで、重すぎず、引きずりません。微笑みがこぼれるような推進力。第2楽章もなんやらハズむような軽快なるリズム感が好ましい。この楽章は一歩間違うとダルになっちゃいますからね。ここを聴くと、たしかに録音はヨロシからぬが、いろいろな声部がちゃんと認識できて、わかりやすいことにも驚かされます。

 第3楽章スケルツォの動的な魅力は想像つくでしょ?ここかな、後に失った若々しさの魅力は。颯爽とした推進力爆発だけれど、けっしてうるさくならない。響きが濁らない。アンサンブルの優秀さはここではっきりわかります。最終楽章の爽やかさ、フレージングの明快さ、潔癖さは文句なし。快速だけれど細部を流さない。各パートの音色の魅力も存分に生かされます。音質はともかく、ずいぶんと”現代的”な演奏。「なんの悩みがあろうか」といった風情か。

* コレ、例の100円ショップダイソーの「若き日のカラヤン」(素材発信 ザ・ダイソー CD-9 @100 )と同じ音源です。但し、シロウト耳にも明らかにピッチがちがう。ダイソー盤が低い。音量レベルを上げて収録しているみたいで、大音響になると音が濁って割れるが迫力はある。History盤の方が、音質が落ちるように思えるが、じつはバランスはこちらの方がよろしい。



 お次の「未完成」ね。この作品はほんとうに難しい。メンゲルベルクの主張は常に明確で、わかりやすい〜濃密なる浪漫的な作品を「とことん浪漫的」に表現するとどうなるか、ということですよ。オケの濃厚な響き、各フレーズは「これでもか」というくらいに味付けがしつこい。しかもライヴですね、これ。(SP復刻モロっぽい)

 乾いて、奥行きが足りない音質故でしょうか、旋律の伸び縮みに説得力を欠きます。Brucknerのように、優秀なるオケから発せられる「無為の為」みたいなもの〜優秀なる団員の自主的なニュアンスの結集みたいなものを望みたいところ。これは、まだこの録音の魅力を発見できないのは、ワタシの耳の修行不足かも知れません。


 第5/6番は、戦前にひとつの黄金時代を築いていたビーチャム/ロンドン・フィルの演奏です。これはMozart の世界に近いかな。変ロ長調交響曲に於ける優しくも、まったりとした表情とオケの表現が細かいこと。微笑みで表現された明るく、希望に充ちた旋律の魅力。第2楽章の溜息が出るような安らぎ、ほのかなポルタメントも甘い弦。

 メヌエットも優しさを失いません。終楽章もけっして急がない、落ち着いた表情が続きます。録音は良好なはずもないが、瑞々しく、しっとりとしたアンサンブルはちゃんと理解できます。

 「グレート」に対比される「小ハ長調交響曲」も、古典的均整を感じさせる佳曲です。まるで春の日の散歩日和を連想させるような、晴れやかな表情。小鳥のように囀る木管の魅力。ビーチャムの自然体は特筆すべきものでしょう。暖かい、無理がない、やさしく説得されるような幸せな味わい。

 第2楽章以降は、第5番となんら評価は変わりません。ぽってりとふくよかなアンサンブルは、鋭角的な表現が主流の現代では消え去ったものでしょうか。スケルツォ楽章中間部の木管は出色の美しさでしょう。終楽章のノンビリとした味わいは、まるで一昔前の牧歌的オペラのような不思議な安らぎです。(2003年2月7日) 


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written by wabisuke hayashi