Schubert ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調(ヴュルツ)


素敵なヴュルツお姉さんのお写真ジャケット

Schubert

ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調  遺作 D960
ピアノ・ソナタ 第9番 変ロ長調 遺作 D575
「人生の嵐」イ短調D947(4手のための)

クララ・ヴュルツ(p)/ヴィンケル(p)

BRILLIANT 99678/1  2000年録音  11枚組 2,790円で購入したウチの一枚

 BRILLIANTの「容姿端麗」シリーズより。ワタシが「容姿短足」なので、憧れもひときわ。ハンガリー・ブダペストのご出身だそうで、先日のタマラちゃんより少々年上です。Mozart ピアノ・ソナタ(全集)も自然体が魅力的で、ワタシは全集揃っていないので、ダブっても買い直そうか、と一瞬迷いました。*

*この後、ほんまに全集購入しました。ちなみにこのCD「人生の嵐」D968表記というのは間違いで、D947が正しい。インターネット検索してエラく悩みましたぞい。

 「優秀な演奏に録音水準など関係なし」と、日頃豪語するワタシながら、そりゃ音質はよろしいのが有り難いにきまっている。ピアノ・ソナタ第21番は、若い頃からのお気に入りで、LP時代スコダの旧録音で馴染んでいました。大曲でっせ。CD時代になって、シュナーベル(1939年)も、クリーン(VOX)も素敵な演奏だったけど、音質は潤いが足りなかったのが残念。

 ヤンドー(NAXOS 1991年)も立派で誠実だけれど、色気はもう少し欲しいところ。ヴュルツ姉さんのピアノはまったく素直で、まっすぐで、静謐で・・・・ココロが洗われるような演奏。変ロ長調ソナタは43分はかかるという長大なもので、ゆったりと息の長い旋律が溢れ続ける作品。ま、演奏家が油断すれば冗漫な音楽になってしまうし、聴き手の(根性の)真価も問われます。「眠らずに、最後まで楽しめるか」と。

 漆黒の闇のなかを、手探りで一筋の光明を探し求めるような第1楽章(ナント21分以上)。途方に暮れた背中が、夕映えの風景に浮かぶ第2楽章。一転、軽やかでで明るいステップが聞こえる第3楽章「スケルツォ」、すべての悩みが爽やかな春空に解けていく終楽章。

 ヴュルツはしっかりとしたテクニックと、細部まで配慮の行き届いた表現で魅了します。著しい個性とか、クセはほとんど見あたらなくて、空虚に響く強い打鍵も存在しません。瑞々しい潤いある音色だけれど、特異な美音じゃないんです。聴き進めていくと、波だった精神が凪いでくるような感覚におそわれます。極上の「フツウの演奏」というところか。

 D575、もうひとつの変ロ長調ソナタは、もっと気軽で明るい雰囲気を持った名曲でしょう。22分ほど。第1楽章は行進曲風にリズムがハズんで楽しげであり、第2楽章「アンダンテ」の懐かしさ、ユーモラスな第3楽章「スケルツォ」、なんとなく牧歌的にノンビリとした終楽章。Schubert の歌曲がそのまま器楽曲になったような、小粋で素敵な作品なんです。

 ヴュルツ姉さんの演奏は、あえて繰り返すまでもない「不純物なし。但し、南アルプスの天然水の味わい」(時代が荒れているせいか「淀川の水」みたいな演奏が最近多くってね)風。この11枚はいろんなピアニストで分担しているが、彼女の担当は2枚だけなんですよ。できれば全集で行って欲しかったけど、ま、この価格ですから文句言っちゃいけない。

 「人生の嵐」は、劇的な作品です。ワタシにとっては昔馴染みの作品だけれど、ややゆったりめのテンポで、細部の様子、曲の構造ががよくわかって楽しい。間違いなく名曲であることを再発見。これは録音状態だけの問題ではないでしょう。(2002年8月23日)


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written by wabisuke hayashi