Bruckner 交響曲第5番 (ショルツ/南ドイツ・フィルハーモニカー)
Bruckner
交響曲第5番 変ロ長調
ショルツ/南ドイツ・フィルハーモニカー
ONYX CLASSIX 66302 録音年不明 510円
このCDを購入したのは大阪・日本橋でして、既に購入10年を経過していると思います。(ああ、思い出した。その前週くらいに東京へ出張してドラッグ・ストアで目撃〜逡巡して買わなかった)以下、サイト開設当初の文書でも、たった今現在でも、ワタシゃBrucknerのことはなにもわかっていない。いえいえ、版がどうの、という蘊蓄知識がわからない、というだけじゃないんです。そもそも論として、聴けば聴くほど混沌と混迷の淵に思い沈む今日この頃、小賢しいコメントなどできようハズもない。湯水の如く、大量のBrucknerのCDを購入してきたのに・・・
基本、煽ったり、無用に走ったりせず、虚飾なく、会場の響きをゆったり楽しめれば・・・と思います。ここ最近、歴史的録音やら音質的に(かなり)厳しいものは正直敬遠気味。気持ちよく、まっすぐな気持ちでBrucknerは楽しみたいもの。この一枚は、ワタシの原点です。ショルツ名義だけれど(おそらく)まったく別人の指揮、オーケストラの実体はわからない(下記、バンベルク響を主体とした云々は裏取れず)にせよ。大曲・交響曲第5番 変ロ長調を「510円」で堪能する贅沢。(2004年現在、なんということもない価格になってしまったが)
DDD表記は大いに怪しい水準だけれど、久々、確認してみると悪い音質ではありません。やや乾き気味で音の粒も少々粗いと言えなくもないが、奥行きもそれなりにあります。金管の絶叫をしっかり楽しむのにそう不足はない録音。いえ、音質だけではない。これは演奏がずいぶんと立派です。こんなんだったのだろうか?当時、ティントナーにはずいぶんと入れ込んでいたけれど、今や少々評価は厳しいと感じているのに。
全73分〜これは標準的なテンポより少々短めですか?最終楽章など時に快速な部分も見られるが、さっぱりとしたフレージング基本で急いた印象はない。素直な弦の響き、木管も金管もよく鳴っております。引き締まったアンサンブル、虚飾のないストレート系の演奏。「ちょっと薄いし、響きが濁る」(いま聴けば濁ってなどいないが)とか「落ち着きはもう少し欲しいところ」なんて勝手なこと言ってました。クナッパーツブッシュ辺りが念頭にあったんだろうか?そりゃ、ベルリン・フィルやらウィーン・フィル辺りとは一緒にはできないだろうが。
第1楽章から上記通り、やや速めで〜さっぱりとしたフレージング〜やや四角四面で、劇的な歌い口を期待しているとはぐらかされるかな?色気が足りない。もっと勇壮なる節回しが欲しい!と期待されるかも知れません。「鬱蒼とした浪漫と重量感」の世界からは少々遠目か。まっすぐで推進力有、ノリもよろしい。テンションも高いし。緩い演奏じゃないですよ。ホルンもトランペットも高らかに鳴り響いて、熱は高まります。
じつは再聴は第2楽章から始めました。これが流れよく、グイグイと進めていてますますアツい。ここでも「タメ」はないんです。金管はコクが足りない、という評価は可能だけれど”素直”である〜それが爽快に歌います。弦も低音をゴリゴリさせない、ヒステリックにならない、木管も細身だけれど美しい。そしてBrucknerのキモ〜スケルツォへ。アダージョ、スケルツォと聴いてきて、ああこの演奏は再評価すべき、と決意を固めました。
飛び跳ねるようなリズム〜しかもそれは重くない。金管の爆発が威圧感に至らない、弦がヒステリックにならず、全体として響きの透明感は失われません。演奏家の知名度から連想されるような”粗い”演奏ではなく、アンサンブルの細部にニュアンスと配慮が感じられます。ここは音量のアップに従ってアッチェランドを伴う楽章だけれど、エキセントリックな印象やら、アンサンブルの乱れは発生しないんです。
ラスト〜ちょっと、高らかにカル過ぎますか。ここが第1楽章と似たようなサッパリ系の表現だけれど、リズムはしっかり、流れよく軽快なんです。勇壮に、濃厚に仕上げがちな部分だけれど、快速テンポ維持〜”煽り”もありませんね。しなやかな歌もちゃんと有。淡々と虚飾なく、しかしテンションに緩みを感じさせず、これが爽快なる山場を作り上げます。金管に地鳴りするようなド迫力は求められず、弦の奥行き厚さも不足するかも知れないが、キモチよく鳴り続けました。
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演奏家情報です。CANTUS CLASSICSで「5.00057 ブルックナー :交響曲第4,5番 Suddeutsche Philharmonie デニス・ゾルテイ指揮 録音:1970/1972」というのが出ており、第5番はこれと同じ音源ではないか?と類推されます。しかし、「ゾルテイ」という存在も怪しい。この第4番はホルヴァート/オーストリア放響と同じ音源である可能性もあります。1972年録音というのは、一理あるかも知れません。
ONYX CLASSIXはまだホームセンター系に残骸を見かけることもあります。(2004年6月4日)
読者K氏より情報。この演奏はスワロフスキー/シュトゥットガルト・フィルではないか、とのこと。出典はBruckner録音のディスコグラフィより。演奏内容的に一理あると思います。(2004年6月5日)
以下は以前の文書そのまま。
PILZの衣鉢を継ぐ、(ワタシ個人的に)注目の廉価盤レーベルONYXの一枚。電気屋さんで510円でした。PILZでもショルツの録音はいくつかあって、どれも意外とアンサンブルが整って、しっかりとした演奏で信頼できます。たいてい購入して間違いはない。この1枚も期待通りの出来。
しかし、その後の情報でショルツはとんだ食わせ者で、買い取った音源を、勝手に自分の名前でCD化していたとか。南ドイツ・フィルも録音用の幽霊オーケストラらしい。それも楽しいじゃないですか。
Brucknerは大好きな作曲家ですが、その中でも第5番はとくにお気に入りの曲。かなり長大で、巨大な構成を持っていますが、聴き慣れた主題が全体を統一してわかりやすいと思います。Brucknerの作品はオーケストラの力量が正直に出ますし、指揮者の小手先の作為を許さないもの。自然体で、息が深い演奏が求められます。
南ドイツ・フィルというのは、シュトゥットガルト・フィルのことなのでしょうか。(やっぱり違うらしい。バンベルク響のメンバーを主体とする録音用オーケストラとの情報有)一流のオーケストラではないでしょうが、誠実な響きで、技術的にそう危ういところは見あたりません。洗練されていないが、素朴な味わいは有。
1楽章や4楽章の冒頭、地下室への暗い階段を下りていくような低弦のピツィカートから、いきなり広大な視野が開けるようなトゥッティへの疾走は迫力と勢い充分。金管の爆発はけっこう凄い。(ちょっと薄いし、響きが濁るが)へんにものものしくなることなく、それなりにすっきりと整ったアンサンブルでまとめています。落ち着きはもう少し欲しいところでしょうか。
金管の咆吼と弦のワルツが交錯するスケルツォは、オーケストラの鳴りっぷりが立派で、しかもクドくなりせん。最後まで緊張感が続き、73分間じゅうぶん楽しめる演奏と感じました。時代がかった重いスタイルでもなく、かといって無名ローカル・オーケストラにありがちの、薄くヒステリックな響きでもありません。かなり現代的でアツい高揚もあり、引き締まった入魂の演奏。アンサンブルの水準はまあまあか。
弱音における、深い静謐感には少々不足するかも知れません。(こんなところに、オーケストラの真の力量は出るもの)全体として洗練さに欠けていて、やや泥臭い響き。でも、勢いと熱意は買いたい演奏と言っておきましょう。
録音年代はわかりませんが、目の覚めるような音ではありませんね。音質はあまりよろしくない。というか、このレーベルとしては、ま、フツウの音質。DDDというのは怪しいもの。奥行きと、細部の解像度が足りない。
ONYX CLASSIXは、まだなんとも評価ができるほど聴いてはいませんが、激安で最近ではPonitと並ぶ注目(価格!)レーベルです。(かなり選球眼は必要でしょう。)
その後、ショルツ/南ドイツ・フィルの「グレート」(私は未聴)が1960年代の録音であるとの情報を見ました。とすると、一連のこの演奏家の組み合わせの録音はその辺りのアナログ録音の可能性もあります。音質もいかにもそんな感じ。・・・・・・ というか、この録音そのものがかなりいい加減な出目らしい。でも、そんなことくらいでこのCDの魅力は揺らぎません。ところで、本当の演奏家は誰?(1998年)
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