Saint-Sae"ns 交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」
(エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団)


LONDON KICC 8455 Saint-Sae"ns

交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」(1962年)

Ravel

スペイン狂詩曲(1960年)

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団/ピエール・スゴン(or)

LONDON KICC 8455 中古@500にて購入

 

英DECCAの録音は、作り過ぎと思われることもあるけれど、おおよそ、かなりの時代物でも良好なる音質で聴かせて下さいます。これも例外ではない。少年だったワタシは、このLP(+Honegger「パシフィック2-3-1」)にココロ震わせたものです。(おそらく大学入学時に一度処分済)やがて幾十年が無惨にも過ぎ去り、LP時代も含め様々な演奏を聴いたはずだけれど、あの感動は蘇りません。やはりアンセルメじゃないとダメ?

 中学生時代の友人に「クラシック好き」がいて、ワタシが買ってもらったアンセルメ盤(きっと当時2,000円。もちろんLP)をクソミソ言っておりました。どうして?彼の推薦盤はプレートル/パリ音楽院管盤(1963年)〜これは社会人になってからLPで購入したし、もしかしたらCDでも買ったことがあるかも(現在手許にはなし)。豊かな残響と勢いのある演奏だった記憶有。やがてオーマンディ盤(1962年/1980年)、やらマルティノン盤(1970年)、コミッシオーナ盤(1981年)なんかも購入して聴いたが、昔日の感激今何処?状態。

 ワタシはこの作品自体を好きじゃなくなっていたんですね、きっと。第2楽章第2部冒頭「ド・ミ・ソ」のオルガン和音がココロに染みてこない。・・・で、ある日、オツカれ気味草臥れ中年は、東京・新宿でアンセルメ盤と再開しました。数十年ぶりか。その気になれば、なんども買う機会はあったけどね。やっぱり買ってあげないと、こうして500円(税込)で目の前に登場したことだし。いったい、どんな演奏だったんだろう・・・

 結論的には記憶通り。しかし、細部には以前気付かなかったことが沢山〜リズムが甘い、というか、アンサンブルのキレもいまひとつ、ときに推進力が落ちる・・・ああ、このことを指していたんだね、中学生時代の友人は。縦線が微妙にズレたり、ずばりメカニック的にオケが弱い・・・録音がかなり鮮明だから、そのことは明白にわかります。世評などどーでもよろしいが、「名盤云々」(という書籍)に数回登場したコメントを見ても「アンサンブルの精緻なことも特筆」「至極豊かで精妙なアンサンブル」・・・ほんま?

 おそらくこれは違う意味だろうと思います。大音量で鳴っても、オケが重量感を伴わない。華やかである(管楽器群)こと、クールで旋律にしっとりとした歌がある(特に弦)こと、できあがったサウンドには馥郁たる香りがあって、味わい系なんです。それは、きっちりかっちり几帳面・真面目一方なるアンサンブルでは実現されない。微量栄養素が名水を作り出すようなものか。響きはたしかに清涼だけれど、あちこち、ここ彼処(かしこ)に「アンセルメ節」はたしかに存在して、それは「個性」と呼んで間違いないものでしょう。

 再度、結論的には記憶通り。少年だったワタシは、アンセルメの個性を丸ごと、優秀なる録音といっしょに味わっていたのでしょう。それは、後年出会う様々な「交響曲第3番ハ短調」では感じ取ることができないものでした。現在のワタシは、当時の感動を(かなりの比率で)反芻することに成功しました。(「スペイン狂詩曲」は別なCD LONDON 433 -11-2でダブり。但し、音質はビミョーに違うが。ああLP当時フィル・アップだった「パシフィック2-3-1」が聴きたい)

 これは2004年5月27日に上梓した文書であります。Honeggerの交響的運動「パシフィック2-3-1」(1963年)は入手済。爾来9年経過、2度目の転勤、転居をいたしました。古典的音楽は耳馴染むのに少々手間暇は掛かっても、息長く、幅広く聴き続けられることが魅力のひとつでしょう。年令を重ねるごとに体力も集中力も、瑞々しい感性を失いがち、同じ音楽を聴いても印象はどんどん変わります。大昔、紅顔の美少年は心ときめかせ、この作品、演奏を堪能したものです。ドミソのオルガン和音に度肝を抜かれました。この作品を教えてくださった中学校の恩師も、既に鬼籍に入られました。

 このCD、先に「スペイン狂詩曲」が収録され、これがなんとも微妙なニュアンス+曖昧なアンサンブル(のズレ)が味わい深い。ずばり、上手いオケに非ず。個々のパートのピッチが甘いというか、リズムが曖昧だったり、ちゃんと弾けていなかったり(金管など)・・・それでも、なんとも言えぬクールな雰囲気有〜雰囲気で聴かせてエエのかっ!って、かっちり縦線揃ったエリアフ・インバル/フランス国立管弦楽団(1987年)に全面賛同できませんでしたもの(ほんの一例です)。これも個性のうち。

 Saint-Sae"ns始まりました。第1楽章第1部、冒頭辺りの木管、これがキモだったのでしょう。なんともいえぬ鼻声というか、ちょっと隠微に鳴っていませんか。久々の拝聴はFranck の交響曲ニ短調に似ているな、とか、アンセルメの歩みは意外とグズグズして、キレもノリもよろしくないな・・・それでもヴィクトリア・ホールの残響に魅了され、ちょっぴり調子っ外れ、薄っぺらい木管の音色が響き渡ると、嗚呼これだ、このサウンドに魅了されたんだっけ〜そんな記憶も蘇ります。往年の英DECCA名録音の片鱗残しつつ、この国内プレスCDのせい?それとも貧者のオーディオ故か、最強音にて濁りないでもない。

 第1楽章第2部、ピエール・スゴンのオルガン(存在感も低音も抜群)に乗って、弦が粛々と歌います。人生黄昏見える年齢に至ると、こんな緩徐楽章が胸に染みるのだな。(例の)木管が参集、ここに至ってアンサンブル云々の(要らぬ)感想は消えました。オルガンと弦の絡み合いはまるで「祈り」〜最高。実演経験がないのでなんとも言えぬけれど、オルガンってこんなにクリアに存在感を主張するものでしょうか。

 切迫と緊張感溢れる第2楽章第1部開始いたしました。記憶通り(のサウンド)なのに、リズムが微妙にユルい。でもね、きりりとした切れ味リズムはすべてを解決するんでしょうか。ティンパニの存在感、妙に浮わついた木管、思わぬピアノの参入、金管も弦も充分歌って、なんもいえぬ華やかさ+クール・サウンドの魅力有。重厚とは違う世界。感銘深いフーガは名旋律、名曲中の名曲。やがて静謐に転じて終楽章、満を持してオルガン、豪華に参入。

 コラール風堂々たる足取りはバロック風のフーガへと至って、オルガンの厚みに支えられて見事であります。足取りおぼつかない?そりゃミュンシュあたりの熱狂を聴いてしまうと少々分が悪いかも。しかしスイス・ロマンド管弦楽団の爽やかサウンドを充分堪能いたしました。(ちなみに「パシフィック2-3-1」も記憶通りのサウンドなのに、リズム・アンサンブルがユルユルなんです。2012年3月29日)


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written by wabisuke hayashi