R.Strauss 「死と変容」「4つの最後の歌」
(チェリビダッケ/イタリア放送トリノ交響楽団/イタリア放送ローマ交響楽団/ヤノヴィッツ(s))


CETRA   CDAR2012
R.Strauss

交響詩 「死と変容」作品24(1970年録音)

イタリア放送トリノ交響楽団

「4つの最後の歌」(1969年録音)

イタリア放送ローマ交響楽団/ヤノヴィッツ(s)

チェリビダッケ指揮

CETRA CDAR2012  11枚組 5,000円(ほど?)で購入

 海賊盤で有名なチェリビダッケだけれど、彼の没後続々と発売された「正規ライヴ」のおかげで値下がりした「非正規ライヴ」CD。(1999年頃購入したはずだけれど、いまだったらもっと安いか)オケの機能に対して厳しかった彼が、あまりその辺りのことには期待できないイタリアのオケを盛んに指揮していたとは、意外な感じもあります。年代から考えればパッとしないが、この類の海賊録音としては出色の音質〜つまり、ちゃんと音楽の姿は理解できる水準。

 ワタシはR.Straussはようワカランのです。しかし、さすがに量をこなしてくると見えてくるものがあるような気もするし、この2曲はお気に入り方面作品でございます。チェリビダッケも、この時期はまだ例の「微速前進」方式ではなくてフツウのテンポ(それでも28分は長いほうですか?)、しかもアツい疾走さえ聴かれます。細部まで念の入った緻密な演奏スタイルは既に完成されていて、グラマラス、スタイリッシュな雄弁さには比類がない。オーケストラ・コントロールはたいしたもので、アンサンブルの乱れはほとんど感じさせない。

 「死と変容」は「死の床にある病人が、激しい闘病の末に最期を迎え天国へ〜」的な筋があったと記憶しているが、これほど全曲の見通しがわかりやすい演奏に出会ったのは初めての手応えでしたね。頻繁なるテンポの揺れ、官能的な節回し、時に断固とした爆発があり、最終場面での(昇天ですか?)息の長い詠嘆の表現はまったくお見事、というか上手すぎるくらいの手練手管にだめ押しの「喝!」(チェリの一声)も入ります。

 よ〜く聴けばフルート(この作品のキモか)、金管群には少々魅力ある深みに欠けることが気になるでしょうか。指揮者の断固たる個性に染め上げられて、その説得力たるや驚くべきものと思います。

 「4つの最後の歌」は例外的に初めての出会いから、しっくり馴染みの作品であります。(お気に入りはマルギオーノ盤)最初のうち、オン・マイク甚だしくヤノヴィッツの声はきつく響いて少々聴きづらい。ライヴ故の音程の不安定さも曲が進むにつれて、落ち着いてまいります。後半に至るほど美しく、気高い。ワタシはこの作品を聴くたび、「人生の美しい黄昏」が眼前に浮かんで眩しい。ホルンの音色に魅力が足りなかったり(やや不安げでもある)するが、チェリビダッケの伴奏は入念静謐でした。まるで薄靄のかかったようなサウンドの充満。

 「春」「9月」「眠りゆくとき」と、やや遅めのテンポでじっくり(いつ終わるとも知れず、といったテイストで)聴かせるが、ラスト「夕映えの中で」はむしろテンポはやや速めに仕上げて下さる。(しかし、いずれ”しつこい”感じは不変)艶やかなるヴァイオリン・ソロとの絡み合いは絶品であり、ここでのヤノヴィッツはチェリビダッケと完全に息が合いました。

 毎度毎度の感想だけれど、一聴、この人!的個性の際立ちは、好き嫌いを越えて尊重すべきでしょう。ずいぶんと楽しめた一枚。

(2006年1月20日)


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written by wabisuke hayashi