R.Strauss 「4つの最後の歌」/管弦楽伴奏付き歌曲(7曲)
(シャルロッテ・マルギオーノ/エド・デ・ワールト/オランダ放送フィルハーモニー


BEILLIANT 6366/1
R.Strauss

「4つの最後の歌」

管弦楽伴奏付き歌曲(7曲)
献呈 作品10-1
夜 作品10-3
あすの朝 作品27-4
解き放たれ 作品39-4
子守歌 作品41-1
親しき幻影 作品48-1
森の幸福 作品49-1
東方より来た三博士 作品56-6

シャルロッテ・マルギオーノ(s)/エド・デ・ワールト/オランダ放送フィルハーモニー

BEILLIANT 6366/1  1993年録音 4枚組1,690円(ちょっと値上がりしたな)で購入したウチの一枚

 R.Straussは苦手としております。というか、どういう演奏が「Good!」なのかようわからんのが正直なところ。そうだなぁ「メタモルフォーゼン」とオーボエ協奏曲くらいかな?無条件で楽しめるのは。皆、晩年の作品ばかり。でもね、自分で音楽の世界を狭めるのも残念だし、「やれ聴け、それ聴け」と五月蠅い外野からのヤジは飛ぶし、で4枚組買っちゃいましたよ。ま、まず聴かないと音楽は語れない。(その後1,000円で目撃!)閑話休題(それはさておき)。

 「最後の4つの歌」〜これもお気に入り。初めて聴いたのがシュヴァルツコップ/セルのだったかな、ラスト「夕映え」を聴くとたしかに部屋中が黄昏(たそがれ)ました。人生の夕映えは、言葉の壁を越えてしっかりと伝わりましたね。

 シュヴァルツコップはこれ以上ない!というくらい表情が細かくて横綱相撲。FMも含めてその後数種聴いたけど、シャルロッテ・マルギオーノで「ああ、これ好きな声だな」と確信しました。(音楽日誌2002年11月には「自然体、静謐さ、ゆっくりと時間を掛けて深呼吸をするよう」とある)1955年生まれ、円熟した声で楽しませて下さいます。オランダの人らしい。売れっ子で最近の録音もたくさん有。

 こういう静謐さが支配する音楽は、R.Straussのもうひとつの側面なんでしょう。「英雄の生涯」「ツァラトゥストラ」「ドン・ファン」「ティル」「アルペン交響曲」等々、やたらと派手な大爆発は、草臥れ中年にとって少々ツラいものがある。これは、どれをとってもシミジミと人生を反芻するような、慰安が横溢しました。言葉の意味などなにもわからないが、題名と声と管弦楽ですべてが語られます。

 デ・ワールトの力量でしょう、きっと。オランダ放送フィルは、強烈なる個性とか、厚い響きを持つオーケストラではないはずだけれど、ほとんど囁くような音の連続でも音楽が弱くならない。ホルンは高い空をゆっくり流れる雲を表現して、遠景を眺望します。オーボエは聴き手を驚かせるような官能的な色合いではないが、いつのまにか全体を淡い色合いに染めます。弦は音もなく流れる大河か。いつのまにやら辺りを包む緩い霞か。

 威圧でもない、説得でもない。恭順?いや同化というのが相応しいかな。マルギオーノの発声は素直で、極上の滑らかさであり、上品な甘さもあります。叫ばないのは音楽そのものも、オーケストラの表現も同じ。「歌い出す」のではなく「声が生まれる」といった感慨。響きは濁らない。

 どの曲も旋律にはすぐ馴染みます。「あすの朝」でソプラノに絡むヴァイオリン・ソロが泣かせますね。「子守歌」には懐かしさが溢れました。「4つの最後の歌」って、静かな、静かな作品だったんですね。

 クリスマス・ソングを教会で聴いているような気分か〜懺悔したくなることも人生にはたくさんあります。(2003年11月1日) 


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written by wabisuke hayashi