Rossini 弦楽のための四重奏ソナタ集 第1番ト長調/第2番イ長調/第3番ハ長調/第6番ニ長調
(ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィル1968年)
Rossini
弦楽のための四重奏ソナタ集 第1番ト長調/第2番イ長調/第3番ハ長調/第6番ニ長調
ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー
DG UCCG-90319 1968年8月(スイス、サンモリッツ、ヴィクトリア・ザール録音)
オペラはあまり聴かなくて独墺中心、伊太利亜仏蘭西辺りの拝聴機会も少ないもの。躍動するRossiniも序曲を少々、といったところ。数少ない例外はこの弦楽のための四重奏ソナタであって、真面目に音楽の見聞を広げていた20世紀中にはちゃんと全曲を聴いていたり、記憶を遡ってLP時代、たしかネヴィル・マリナーの2枚組(1960年代前半録音)を持っていたような?テイストとしてはMozart の嬉遊曲辺り、なんと12歳天才早熟の産物は天衣無縫、素直、懐かしく、わかりやすく耳当たりの良い旋律続いて大好きな作品です。二挺のヴァイオリン、チェロ、コントラバスといったオモロい編成になって、すべて急緩急の三楽章、他通常の弦楽四重奏版(元々の出版譜)とか管楽アンサンブル、フルート四重奏版(ニコレによるCDが棚中に有)も存在するんだそう。このオリジナルの姿が確認されたのは20世紀中盤とのこと。友人との愉しみのために作曲したんですって。
日本では悲痛な爆発!苦難を乗り越えて勝利!みたいな作品(代表例「運命」「革命」)が未だ人気ですか?少なくとも1960年台には「人類の懊悩はすべて自分が背負う」風眉間にシワなお兄さん(おそらく当時長髪)を京都の音楽喫茶に目撃されたことでしょう(自分は1970年代の学生)。それとは対極にあるような、こちら優雅な肩の力が抜けたような粋な音楽であって、もともとはヘタクソな友人達とシロウト演奏するためのもの、そこに御大カラヤン登場!とは。この人は日常演奏会レパートリーとは別途、どんな通俗名曲風なものも含め、音楽普及に掛ける意欲に溢れて、きちんと美しい録音を残してくださって立派。所謂大指揮者、売れ筋著名指揮者がこんな録音フツウしないでしょ。
ベルリン・フィルの弦の美点をたっぷり活かして、くつろいだ余裕演奏也。各声部は対等平等、特別にコントラバスが目立つ(低音強調している)わけでもなし。
選曲もエエ感じに並んで、ウキウキ新鮮な風情漂う第1番ト長調、けっこうもの哀しい短調への変化豊か、落ち着いて陰影のある第2番イ長調。ぞくぞくするほどセクシー、瑞々しい小編成の弦、それでも本来の作品イメージからはずいぶん豊満な”オトナの世界”横溢。いつものレガート満載優雅な歌に充ちて、纏綿たる濃厚浪漫は第2楽章「Andante」に顕著な効果であります。
第3番ハ長調は屈託ないのびのびとした作品、そこはカラヤン、まったりとした余裕のスケールとニュアンス、仕上げは入念であります。ここも第2楽章「Andante」の嘆きがちょいと大仰過ぎるかな?ラスト第6番ニ長調を据えたのはいかにも!大団円的雰囲気が締めくくりに相応しいから。ラスト第3楽章「Tempesta: Allegro」はめまぐるしい細かい旋律音型が疾走して、カラヤンは一気にテンション(+厚み)を上げて、もの凄い盛り上がりと興奮を作り上げます。昔馴染みの作品のはずなのに?こんな経験初めて。どんな軽い(?)作品でもカラヤン色に染め上げる技量に拍手。彼の膨大なる録音中、ちょいと忘れられた一枚に感心いたしました。 (2015年2月14日)
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