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「録音水準」、またはオーディオということ


 ワタシは団塊の世代よりかなり後の生まれとなりますが、日本が一気に豊かとなった「高度成長時代」を経験しております。「未来は必ず明るい」と信じられた世代の最後尾か?テレビ(当然白黒)が我が家にやってきた記憶もあるし、アポロ11号絡みでカラーテレビに変わったことも知っています。

 小さい頃の洗濯機はローラー式の脱水(というか絞り機能)だったし、冷蔵庫もなかったはず。呼び出し電話(=死語。携帯電話とちゃいまっせ)も知っています。電子レンジも初登場でした。なにより衝撃的だったのは、小学校5年生の時に引っ越して「水洗便所」になったこと。(以来、ワタシはボットン便所には激しい拒絶反応がある)未来はどんどん豊かになっていく、というたしかな手応えがありました。

 「それと引き替えに美しい自然と人間らしさを失った」という論議はさておき、真空管ラジオにプレーヤーをつないで音楽を楽しんでいた我が家に、「トランジスタアンプ・家具調ステレオ」が届いたのは小学校6年生くらいの頃だったでしょうか。当時、カセットも出始めでした。

 大学入学時に、親戚から小さいタイプのステレオ(メーカー記憶なし、但しスピーカーはFosterだった)を譲っていただき、二十歳の時にはバイトしてコンポ(コロンビア)を買いました。初めてエア・チェックしたのは、笠井喜美子(バイブレーション)とBeethoven の8番(ハイティンク/LPO)だったはず。当時は、まだまだ贅沢品だったんですよ。

 やがて社会人となり、カセット・デッキを買い換えたり、アンプを交換したり、CDプレーヤーを買い足したりしつつ、ここまで来ました。20数年間で、いったいどれだけマイ・オーディオは変遷したことでしょうか。おそらくアンプとカセット・デッキで4回、CDプレーヤーとスピーカーで3代目、チューナーは2台目のが現役です。MDプレーヤーは2000年に買ったばかり。


 結論から言うと、オーディオにはほとんど興味はないのです。故障したり、で少しずつ買っていっただけ。だからHPで「音質良好」なんて書いてあるのは、ほとんどあてになりません。「自己紹介」で載せている真空管の「エレキット」は、カセット→MD作業もあって現在お休み中。アンプはDENONのPMA390-U、スピーカーはTEACのS300という小さいもの。CDプレーヤーはPIONEER  PD-TO4S、MDプレーヤーはSONYのMDS-S35、カセット・デッキは長年修理しつつ愛用してきたYAMAHAのK-200Xはお休みして(場所の関係)、PIONEER  T-C3という小さいものを使っております。

 ・・・・・・と、まぁ、曰くありげに型番なんかを書き並べたが、旧いし、安物だし、はっきりいっていちいち調べないと型番など意識したことなし。(買うときも)それでも、息子のミニ・コンポ(AIWA XR-MD110)に比べると、細部の解像度が違うし、奥行き、広がりが自然、聴き疲れしない音質が気に入っています。小さいスピーカーなので、大音量・超重低音なんかはダメですが、マンションですからそうそう大きな音はもとより出せない。


 じつはここからが本題で、「録音水準」のおはなし。テンシュテット/LPOの有名なMahler 全集ってあるでしょう。(ワタシの手持ちはEMI 7243 5 72799 2 5 12枚組8,990円で購入)交響曲第2番「復活」 シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団/東京音大合唱団(1987年サントリー・ホール・ライヴ)のエア・チェック・カセットとの聴き比べに、ひさびさに取り出したんですよ。(シノーポリのは、やや残響過多で音の芯が弱い印象があった)

 1981年の録音で、既にデジタル時代。音質と録音年代は関係ないと言っても、やはり新しい録音ほど条件が整っているのは事実でしょう。でも、この「復活」ワタシが思うに全然ダメ録音というか、スカスカなんです。音が濁るとか、細部が明快じゃないとか、そういったことじゃなくて、乾いて、奥行きがなくて、低音が弱く・・・・って、だいたいEMIの録音はこういうパターンが多い。

 「LPOはこんなに音が薄かったの?」という感想も出てしまう。演奏はとても良いと思います。響きや旋律の歌い回しが悲劇的で泣いていて、かけがえのない遺産。PHILIPSやDGの録音は、うんと鮮明でなくても中低音が暖かくて、とても聴きやすい。でも、こちらの録音はどうも音が痩せてきこえる。オーデイオに詳しい方、教えて下さい。ワタシの機器が安物であることが原因なんでしょうか。(歴代のアンプ・スピーカー、LPで聴いたときにも同じ印象だった)


 ワタシは音質評価には、たいてい甘いんです。安物カセットから(純オーディオ的にかなり問題有とされる)MDにコピーしても、ほとんど気にならない。エア・チェック特有の放送ノイズも少々は平気です。(いろんな方々にエア・チェック音源をプレゼントしたが、概ね評判よろしいみたい)だから自信がないけれど、EMIの音質だけはどうもいけない。

 ここから先はワルのりです。ここ数年、歴史的録音がバカ安でCD化されて本当に嬉しい。ワタシはオールド・ファン世代ではないが、それでもまだまだ買いたいCDが続出するし、けっこう若い方々が喜んで聴いているのも驚き。個性的で、新鮮なんです。それと、時にとても聴きやすい音質(優秀という意味ではないが)に出会うことがあって、さきのEMI録音との「差」を考えてしまいました。

 HISTORY(205242〜6 303)ワルター10枚組の、Dvora'kの8番(1948年録音)、Mahler の5番(1947年録音)は、ちゃんと音楽の勢いが感じられる音質。クーセヴィツキーのSibelius 2番は、かなり以前にFMからカセットへ録音したものだけど、先のテンシュテット盤のような音質上の不満を感じないのは、先入観というか、心構えの問題なのでしょうか。それとも、どんな優秀録音だって、所詮ナマ演奏の足元にも及ばない、五十歩百歩、という現実なのでしょうか。

 針音が盛大なSP復刻盤でも、けっこう堪能できる録音はあるんです。そもそもの演奏そのものの価値か?「音質に左右されるような演奏は、所詮それだけでしかない」という論議もあります。ワタシには縁遠い話しだが「音源と機器との相性」も存在するとやら。

 新しい録音ばかりのNAXOSは音の方向性はバラバラ、ARTE NOVA も様々ながら、時にデジタル臭いカタい音に出会うこともありますね。現在のCDプレーヤーに替えてから、ずいぶんと柔らかい音質になったが、アナログ時代の音質に懐かしさを感じるのは、年齢を重ねた結果でしょうか。

   「未来は必ず明るい」と、信じられなくなった21世紀が始まっております。息子は、生まれたときからカラーテレビのリモコンがあったんです。(2001年5月25日) 


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi