Wagner「指環」への道〜「余話」Wagner 楽劇「ニーベルングの指環」(全曲)を聴いて ギュンター・ノイホルト/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場管弦楽団(1993年〜1995年ライヴ) BRILLIANT 99625 14枚組 $27.86 (日本で買えばもっと安かった) 2000年12月の後半を使って「指環」全曲を聴き通しました。ノイホルトもバーデンのオペラ・ハウスも知名度が低くて、逆にはワタシは「欧州の日常の音」が聴けるはずと推測しておりましたが、まさにその通り。数千円で「指環」全曲を聴けるようになったなんて、幸せな時代になった思います。「黄昏」の終曲まで聴き通して、いまは爽やかな気持ち。 「買ったCDはちゃんと聴く」というのは鉄則でしょうが、「積ん読」ならぬ「積んCD」の効果はないわけではなくて、棚の奥で眠っていたCDも、聴き手の変化に伴って宝物に変貌する可能性を持っています。ワタシのエアチェック・カセット約400本(最盛期1,000本はあったはず)も、いまになってみればたいへんな価値。当時は金がなくて、しかもLPは高くなかなか買えなかった「代償行為」であり、「録るだけ」が楽しみだったものです。 「指環」は、有名だけどなかなか全曲聴く機会はないでしょ?LP時代、フルトヴェングラー/スカラ座の全曲を所有していたけど、対訳はないし、音は悪いし、でちゃんと聴けませんでした。 CD時代になって、クレメンス・クラウスの1953年バイロイト・ライヴ(ANF -7〜10)〜歌い手は最高との評価で、たしかCDを買い始めた1990年頃12,000円で手に入れたもの。「音が悪いから聴けないのか」と思い、スワロフスキーの1968年録音(WELTBILD CLASSICS 703769 14枚組)を数年後に購入、これはちゃんとしたステレオで7,490円。しかし、やっぱりちゃんと聴かない。 だからノイホルト盤を買うかどうかは悩んだんですよ。でも、経済的に許されるのなら買わないとあとで絶対後悔するので、買ってしまいました。それなりに「聴くぞ」と、今回こそ決意を固めたものです。ま、音楽はまず「積んCD」がないと、音が出ないから話しにならない。あらためてCDを買いに行くと、別なCDが欲しくなったりすることもある。
今回、経験に基づいて、ワタシなりに「指環」攻略法を考えてみました。 1) ワーグナーの有名管弦楽抜粋にじゅうぶん馴染んでおくこと。けっこうコレ重要です。「云々の動機」とかいう「ライト・モティーフ」は身につけておくと、あとあと楽。(ワタシはセル盤で長いおつきあい。FICの海賊盤でショルティのも手に入ります) 2) 全曲のCDを買う。これは歴史的録音じゃなくて、それなりの音質のものを買うこと。ワーグナーは、音そのものの快感も重要です。ノイホルト盤がダントツに安い(3,300円くらい)ですが、高名なショルティ盤だって10,000円でお釣りがきます。 3) 対訳を買う。できればライト・モティーフ付きで。これがけっこう高くて、CDより高い可能性も有。A4版くらいのでかいサイズのほうが見やすい。これがないと、まず全曲制覇はムリ。 4) 「ラインの黄金」をプレーヤーに乗せつつ、流れてきた音楽に身を委ねつつ「対訳」を読み込む。一夜ずつしっかりと概要を把握すること。好きずきなので、「黄昏」でもOK。 5) 粗筋を自分なりにメモしてみること。なんせ筋がわかりにくいんですよ。筋というか、血縁関係というか、各々の役回りというか。 神々の長ヴォータン、フリッカ夫妻。ジークムント、ジークリンデという双子の兄妹であり、夫婦。そして、その息子ジークフリート。しかも、ヴォータンの孫。ヴォータンとエルダ(知の神)のこどもであるブリュンヒルデ(ヴァルキューレの一員)、巨人族のファゾルトとファフナー(のちの大蛇)、小人族の王アルベリヒ、その息子のグンターとハーゲン、いまだにワタシがよく理解できないフンディング、等々。 6) 根性出してCDを聴いていきます。「一楽劇一夜」はムリですので、バラバラでよいから筋を確認しながら聴きましょう。(対訳を見ながら)でも、途中で止めないこと。何日かかっても全部聴かないともったいない。聴く順番にはこだわらず、黒田恭一さんの「オペラへの招待」(朝日文庫)を参照しても良いと思います。(ワタシはこれにほぼ従った) 7) 気になったところ、気に入ったところは、なんども聴く。これはCDならでは贅沢です。途中つまづいても、回り道しても最期まで聴くこと。粗筋、人間関係がわかると、ワタシみたいな声楽オンチでも「この役柄にはこうあってほしい」というのが見えてきました。 8) 自分なりの感想をまとめること。 〜ここまで来て、べつな演奏のCDを聴くとガラリと印象が変わります。ワタシの場合は、Brucknerがとても聴きたくなりました。Brucknerは以前から大好きでしたが、聴き慣れた曲、演奏でもずいぶんと新鮮に聞こえました。(不思議) (2000年12月29日)
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