Rachmaninov 交響曲第2番ホ短調 作品27
(ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団)



odyssey(CBS) MB2K45678 Rachmaninov

交響曲第2番ホ短調 作品27

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

odyssey(CBS) MB2K45678 1959年録音 購入価格失念 2枚組1,500円くらいか

 2006年再聴です。↓下のコメントはあまりに情緒的であって、ま、これはこれでこの作品(第3楽章)の美しさを初めて認識した、ということだったのでしょう。やがて、アシュケナージ全集を入手し、このサイトにも他いくつかのコメントをするようになりました。でも正直「完全全曲版」とか「カット有」とか、その辺りがよくわかっていない。(この録音はカット有、らしいが)ひたすら甘美なる旋律を堪能するだけ・・・というのが正直なところ。やれ芸術性が、とか、旋律が受け狙いに安易すぎる、なんてことは市井の音楽ファンには関係ないことで、厚みがあって、甘くてエエ作品だと思いますよ。

 第1楽章「ラルゴ - アレグロ・モデラート」は、艶々とした奥深い弦がひたすら美しい・・・というか、全編そうなんです。旋律リズムの虚飾のなさに於いて、オーマンディはトスカーニ方面の人なんでしょう、きっと。但し、結果として出現する音楽は色彩豊かであって、厳しさを伴わない。どこにもムリがなくて、耳あたりがとてもよろしい。のびのびと屈託がない。常に余裕たっぷりで、響きは濁らない。延々と切なく、甘美な世界が続いていく・・・

 第2楽章はスケルツォ楽章なんだろうが、(弦の活躍前提として)ホルン、木管のスムースな響き、軽快なるリズム感あくまでも豊かでゴージャスであります。アンサンブルは驚くほど見事で、テンポの動きも変幻自在かつ自然。さて期待の第3楽章「アダージョ」久々の再会は・・・嗚呼、そっと耳元で囁くように優しいのだね。クラリネットとファゴットの絡み合い、まったく見事であります。「涙腺が緩みます。臆面もなく、このガム・シロップ+蜂蜜の海に溺れたい」・・・とは、このことだったか。

 さわさわと弦が絡みます。やがて深い眠りからじょじょに覚醒するかの如く、悦びが沸き上がって幻想的な響きの渦に吸い込まれ・・・艶々とした奥深い弦がひたすら美しい・・・とは、先ほど書いた通り。深い溜息を繰り返すように、寄せては返す切ない感情の高まりにも、安易にテンポを速めない。叫ばない。基本は”静謐”であります。とどめはホルン、ヴァイオリン・ソロ、クラリネット、イングリッシュ・ホルン、フルート、オーボエと冒頭旋律を名残惜しく繰り返して、やがて再びの最高潮へ・・・この激甘旋律、大好き。中年草臥れおじさんには少々似合わんが、必要としている安寧の世界。

 終楽章、派手派手しくも大爆発!ということでもなくて、意外と真っ当というか粛々と、そりゃフィラデルフィア管弦楽団の技量ですから響きは厚いですよ。金管の自在なる大活躍には驚愕します。でも、暑苦しい響きじゃなくて、基本爽快。のびのびと喜ばしいフィナーレへと上り詰めました。最高。

 録音は悪くありません。LP時代、やたらと高音の響きが刺激的でノイジーだったのがウソのように晴れやかな、バランスのよろしい音質でしたね。

(2006年11月24日)


 交響曲三曲に「ヴォカリーズ」をプラス。有名な第2番が、CD2枚にまたがってしまいました。でもねぇ、2枚目をプレーヤーにセットして音が鳴り出したら金縛り状態。切なくも甘い哀愁の旋律(メロディ)。とっくの昔に忘れてしまった、青春の胸の痛みが蘇ります。まだ、自分の気持ちを正直に表現することが出来なくて、悶々と苦しんでいた若き日々よ。その愛しさ、頼りなさ、はかなさ、不安に震えるこころ。

 第3楽章「Adagio」ってそんな音楽ですよね。アホみたいに何度も何度も繰り返し聴いて、その響きの渦の中に身を委ねたい。仕事に草臥れ果て、泥のように疲れ、足取り重い帰り道。中年のハートの奥底に、密かに燃え続ける情熱を発見した思い。やれ砂糖甘いとか、ハリウッドの映画音楽とかバカにしたい方は、勝手にしてちょうだいな。

 有名なプレヴィン盤や、評価高いアシュケナージ盤は聴いたことがありません。というか、これ以外聴いたことがないんです。CBSの録音は高音が刺激的で、やや粗さを感じることが多いけれど、ここでは音楽と演奏がみごとにツボにはまっていて、ゴージャスなサウンドが楽しめました。ささくれ立った精神には、Beethoven の激しさより、こちらの甘美さが快い。

 遠くを見つめるようなホルンに乗って、いきなりヴァイオリンが主題を朗々と歌うでしょ?それをクラリネットが静かに受け止め、やがて高揚していく喜び。このやすらぎは久しく味わえなかったもの。さわさわとバックの弦、ホルン、木管も静かで深い。そして銀色に輝く弦がその旋律を引き継ぎ、「愛の旋律(メロディ)」に(タップリこぶしを利かせながら)発展させていきました。

 不安、おののきは木管に受け渡され、弦も嘆き、それがやがて甘い痛みに変化し、官能の高まりが頂点へ。「愛の旋律(メロディ)」が回帰し、平穏を迎えました。ホルンが、ソロ・ヴァイオリン、オーボエ、フルートが「愛の旋律(メロディ)」を繰り返すが、それは懐かしい思い出に変化しており、黄昏に燃える夕日を見つめるようでもあります。

 完璧のバランス、磨き上げられた弦の深さ、管楽器の朗々とした歌声、フィラデルフィアのもっとも美しい姿がここにありました。オーマンディには、こんな音楽が一番似合うんです。これ、ゴスペラーズの「永遠(とわ)に」(Unpluged Version)の世界とほとんど同じ。

 他の楽章?もういいでしょ。きょうはこれで勘弁して下さい。涙腺が緩みます。臆面もなく、このガム・シロップ+蜂蜜の海に溺れたい。おじさんは疲れているんです。(2001年8月3日)


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written by wabisuke hayashi