Mussorgsky/Ravel 組曲「展覧会の絵」(1938年)/
Tchaikovsky 交響曲第6番ロ短調「悲愴」(1947年) トスカニーニ/NBC交響楽団


HISTORY 204577-308 Mussorgsky/Ravel

組曲「展覧会の絵」(1938年)

Tchaikovsky

交響曲第6番ロ短調「悲愴」(1947年)

アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団

HISTORY 204577-308  10枚組 3,490円

 いや増す未踏峰”ミチョランマ”。ビンボー症が一生抜けないので、かつての憧れ名盤が激安で登場すると注文してしまう。いくら大不況でも、かつてのCD相場の1/10、いや1/20にもなっちまうと動揺します。経済的に買えないことはない。で、結局ちゃんと聴かない。聴いても粗雑な音楽への対峙姿勢になってしまう・・・著作(隣接)権の切れた歴史的音源はネットでデータ入手可能となったし、いまのうち処分しようかな?と、棚中在庫を眺めたものです。

 ところが!関連記事をネットで検索すると、(時に)自らのサイトでコメントが登場して驚愕。”ミチョランマ”(だけ)ではなく、聴いたことさえ失念しているんですね。もっと質(たち)が悪いか。トスカニーニは10枚組ボックスが3セット、しばらく聴いていないし、そろそろオークションにでも〜とアト・ランダムに取り出したのがこの一枚。聴いているウチに記憶も感動も蘇ってまいりました。音質問題なんのその。う〜む。

 トスカニーニの「展覧会の絵」は数種の録音が存在するらしい(他は聴いたことなし)が、これが一番初期のもの。(ライヴ録音/71歳)例の如しで残響のない、むき出しの強烈サウンドに、冒頭のトランペット・ソロから少々驚くことでしょう。とにかくオケが滅茶苦茶上手い。テンションが高く、アンサンブルの集中力、強靱で明るい歌にココロ奪われます。テンポは速くはない。足取りしっかり、確信に充ちて貫禄たっぷり、堂々たる劇的演奏であります。途中から音質云々(そうとう、かなりの劣悪さ+針音)忘却の彼方へ。こうだから歴史的録音は止められない。ライヴです。

 専門の方によるとRavel の楽譜とは少々相違があるらしいし、”トスカニーニはイン・テンポ”という先入観から外れて、”テンポの揺れ”はあちこち存在します(非常に効果的)。静謐なる第2プロムナード〜「古城」の歌心(サキソフォーンとファゴットの絡み合い〜弦へ)も朗々とセクシーであり、ゆったりとした足取り(リズム)もたしか。録音は悪くても表現は常に明晰、かつ強靱であります。

 「テュイルリーの庭」は遅めのテンポで神妙であり、「ビドロ」に於けるトロンボーンは妙に妖しく、弦が参入して一気にアツくなりました。「卵の殻をつけた雛の踊り」もけっしてあわてない。「シュムイレ」を表すトランペットは正確であり、「リモージュの市場」には華やかな勢いがありました。でも、テンポはそう走らない。「カタコンブ」も荘厳な強弱、陰影が味わい深い。この辺り、ややアンサンブル(金管)に乱れがあるが、それは枝葉末節なこと。

 その深遠なる雰囲気を継続したまま「死者とともに死者の言葉で」へ。「鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤーガ」は強烈な迫力だけれど、やはり安易に走らない。静謐な部分の怪しさとの対比も充分。「キエフの大門」の輝かしい大団円は文句なしでしょう。これは恐るべき巨大さと、高いテンション集中力を誇る演奏です。全部で35分ほど。熱狂的な拍手も収録。

 前回、「悲愴」にコメントしたのはリッカルド・ムーティ(1979年)で2年ほど前か。あまり泥臭くなく、都会的な演奏が好みであります。ナマ演奏ともかく、CDだったら時々聴きたくなる甘美なる旋律。ここではやや速めの(急いた?)テンポ、前のめりでアツい演奏なんです。露西亜風の暑苦しい表現ではなく、あくまでもイタリア風に朗々と洗練され、かなり揺れ動く個性的な表現。オケはやはり(モウレツに)上手いですね。アンサンブルの集中力は(ライヴである)「展覧会の絵」を上回ります(音質的にも)。金管の爆発強烈。

 第2楽章「アレグロ・コン・グラツイオ」は軽妙甘美で粋であり、スケルツォである第3楽章は颯爽と快速で、ピタリと縦の線が合っている。この推進力、クレッシェンドは聴き手を興奮へと導きます。終楽章の詠嘆ももたれない、重くならない。響きは明るく熱狂的であり、集中力は途切れない。「悲愴」としては少々異形かも知れないが、ワタシは好きですよ、こんなスタイル。足りないのは”静謐”か、それは音質故の先入観か。(これを執筆後、この10枚組はオークションにて処分してしまいました)

(2009年2月27日)
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