Bach 「クリスマス・オラトリオ」(ラルフ・オットー/コンチェルト・ケルン)



J.S.Bach

クリスマス・オラトリオ BWV248

ラルフ・オットー/コンチェルト・ケルン/フランクフルト声楽アンサンブル
ザイサク(s)グループ(a)プレガディアン(t)メルテンス(b)

BRILLIANT 99016 (Delta Musicからのライセンス) 2枚組$3.98にて購入


 2002年も押し迫りました。年末になると「第九」でしょ?ワタシはそれに加えて必ずこの曲を聴きます。神を信じない無粋なワタシをも敬虔なる気分とへと導く、圧倒的に悦ばしい説得力。ことしは第5部「栄光あれと、神よ、汝に歌わん」をナマで堪能いたしました。「人の声」の魅力の奥深さ、驚くべき小編成のオケによる宇宙的な広がりに、ただただ唖然とするばかり。

 このCD録音が抜群。その筋に詳しい方によると、かなり強力ソロが揃っている、とのこと。相も変わらず、ワタシのサイトでは「ああ、おもしろかった」水準のお話しばかりで恐縮だけれど、粗野でハズむような古楽器系のリズムが軽快です。それが明快に、眼前に広がってくれるからタマらない。全編に流れるポジティヴ・オルガンの暖かさにジ〜ンとしちゃうし。

 こう言っちゃまことに申し訳ないが、クルト・トーマス/ゲヴァントハウス管(EDEL 0002312CCC6〜7 1958年録音)のスタイルの旧さ、リズムの重さ、表情の大仰さも(今となっては)気になります。(ピッチの乱れ、合唱の濁りも)

   技量云々はコメント出来る立場にないが、コンチェルト・ケルン/フランクフルト声楽アンサンブルの集中力は並じゃくて、精鋭の古楽器奏者のソロはどれも聴きものです。ソロ・ヴァイオリン、木管のオブリガート、どれをとってもひたすら上手い。どちらも底値で買えるが、滅多にお勧め盤を示さないワタシも(価格・音質・演奏で)ラルフ・オットー盤を推すに些かの躊躇もなし。(但し、解説もトラック表示もないが)

 (一流らしい)声楽陣の、朗々として清潔な歌唱。ノンヴィヴラートを基本としつつ、柔らかで素朴なバックと見事に融和します。ワタシは第3部がむかしから好きですが、ナマで聴いて以来第5部にもすっかり魅せられました。こんな演奏・曲を聴いていると「嗚呼、今年もいっぱいウソを付きました。神様、ごめんなさい」という機運が自ら高まってきます。ワタシはまったり聴いてしまって、なんのコメントも出来ず、ひたすらウットリするばかり。

 ああ、あちこち聴いているウチに第3部が流れてきましたね。幸せ。個人的な想い出は以下に書いたとおり。Bach イヤーであった1985年は、ひとり息子が誕生した年として特別な感慨もありました。(2002年12月21日)

 自分の過去の文書を見るのは苦痛以外の何ものでもないが、そのまま掲載残しておきましょう。ところでこのCDは現役でしょうか?高い方の正規盤だったらありますか?

 


 トラックも時間表示もない、いかにもBRILLIANTらしい不親切なCD。解説も、歌詞も、録音情報もありません。1991年録音(だ、そうです。メールにて教えてもらいました)。録音はハッとするくらいクリア。ここ20年くらいの古楽器復興はめざましくて、「古楽器にあらざれば、バロックにあらず」とまで言われそうな今日この頃。ラルフ・オットーもコンチェルト・ケルンも、ワタシは名前くらいしか聞いたことがありません。歌い手にはもっと縁が薄いので知り合いはいません。

 バロック好きのワタシとしては、現代楽器であろうと古楽器であろうと問題なし。古楽器の古雅な風合いも、味わいがあって楽しいものです。全体として素朴さが支配して、この曲の清楚で敬虔な味わいに相応しい響き。オーボエの粗野な音色、ティンパニが洗練されないところもたまりません。ハズむようなリズムが軽快で、楽しさいっぱい。

 トランペットは、現代楽器の華やかで鋭い音に馴染んでいたせいか、少々物足りない感じ。ま、慣れの問題でしょう。最近では、もっとノリノリで即興的な演奏が存在するので、大人しすぎるようなアンサンブルと感じることもあります。(このほうが飽きは来ないかも)合唱の水準は高い。声楽陣はヴィヴラートを押さえた、清楚な歌いかたに好感が持てます。(メールで情報をいただいたところによると、現代のオーセンティックなバロック演奏に欠かせない高名な歌手達とのこと)

 「オラトリオ」といっても「カンタータ」となんら変わるところはなくて、第1部はカンタータ第214番「太鼓よとどろけ、ラッパよ響け」と同じ曲なんですよね。有名な「マタイ」のコラールも出てきて、親しみやすい。バッハはあちこちに同じ旋律を使うから、ちゃんと調べればいろいろな関連が出てくるのでしょう。第2部のパストラールもよく知っている。全体の79%の小節が旧作からの転用だそうです。

 クリスマスにはこの音楽に限ります。演奏がどうの、とかいうと罰が当たります。なんでもいいんですよ、本当は。心洗われる音楽に間違いはない。静かに一年を振り返るには、「第九」や「メサイア」よりこのほうが似合っています。たしかBRILLIANTは2000年のBach YEARに合わせて、格安のBOXものを出しているはずだから、もっと安く手にはいると思います。


 1985年Bach 生誕300年の前年末に、病気で入院していたワタシ。マルティン・シュナイト/コレギウム聖エメラムが演奏する第3部に痺れてしまいました。クリスマスの朝のFM放送「バロック音楽の楽しみ」でした。

 それ以来、この曲はやすらぎの良薬です。この曲を聴く度「本当の幸せとはなんだろう」とつくづく感じてしまう。無宗教であるワタシにさえ、宗教的畏敬の念を起こさせてしまう、偉大なる音楽のチカラ。(2000年12月24日改訂)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi