Dvora'k 交響曲第9番ホ短調「新世界より」
(アントン・ナヌート/リュブリャナ放送交響楽団)/スラヴ舞曲第1/2/3/4/5番


CC013  同朋舎出版。いわゆるPILZ音源。100円Dvora'k

交響曲第9番ホ短調 作品95「新世界より」

アントン・ナヌート/リュブリャナ放送交響楽団

スラヴ舞曲集
第1番ハ長調 作品46ー1(シップウエイ/ロイヤル・フィルハーモニー)
第10番ホ短調 作品72ー2(ショルツ/ロンドン交響楽団)
第3番イ長調 作品46ー3/第4番ヘ長調 作品46ー4(ショルツ/ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団)
第5番イ長調 作品46ー5(ナヌート/リュブリャナ放送交響楽団)

CC013 同朋舎出版。いわゆるPILZ音源(録音情報不明)。中古105円

 2006年9月には連日「新世界」を聴いたものです。子供の時から馴染みの作品だけれど、幾度聴いて飽きさせない名曲中の名曲。当月だけで3種もCD購入してしまった関連だけれど、この「100円CD」の存在を(棚奥より)思い出しました。「芸術は、常に最良のものを!」というご意見にも一理あるが、音楽に於ける「究極の一枚!」的探求精神には少々胡散臭いものを感じないでもない・・・個性や嗜好は多種多様で良いと思うし、そんな論議は一歩道を誤ると、自分の贔屓を引き立たせるために、他の方のご意見を謙虚に受け止められなくなる可能性も・・・

 素敵な作品は、もっと素直に、気軽に楽しめば良いんです。このCDは2004年に出張先の中古屋で”処分”されていたもの・・・ワタシと「新世界」の出会いは、小学生の時、バーンスタイン/ニューヨーク・フィルのアツき大爆発演奏だったが、それは2000円のLP(兄所有)でした。最近のこどもは贅沢になったのかも知れないが、105円での出会いを保証してあげるのも大切なことだろうと思います。

 PILZ系音源のエースはアントン・ナヌート(ナヌート)であります。スロヴェニアの指揮者ですね。リュブリャナが旧ユーゴスラヴィア共和国から分離独立したのが1991年だから、少々以前の表記「ユーゴスラヴィア国立」を勘案すれば、1980年代の録音ということになるのでしょう。少々旧聞だけれど、小川和夫「東欧 再生への模索」(岩波新書)を読めば、旧来型の「西側/東側」(冷戦時代)的視点ではない、欧州の深い伝統(含む音楽)継続を痛感させたものです。

 つまり、サウンド的にややローカルであってもこのオケは「欧州伝統の響き」を引き継いでいる、という事実。「新世界」側の強力オケではなく、郷愁の懐かしい味わい〜技量や迫力、アンサンブルの質に於いて不足はないと考えるが、それがウリではない、あくまで胸がキュンとなるよう(表現旧いかな?)な暖かい節回しが魅力的でしょう。録音も自然体で悪くない。日常座右に置くに相応しい、価値ある一枚。

 第1楽章は提示部繰り返しがないのが残念!散々聴き馴染んだ作品だけれど、まるでこの作品に初めて出会ったように新鮮で、素朴誠実な集中力であります。弦も木管も、そしてなにより金管が粗野(誉め言葉のつもり)で、時に少々テンポを落として良く歌うんです。やや食傷気味なる第2楽章「ラルゴ」は、草の香りが漂うような万感胸に迫るイングリッシュ・ホルンのソロ。「家路」などという歌詞が付けられたが、この演奏はまさにその印象ピタリ!の懐かしいものでした。ジミで艶消しな弦もここでは(うんと)効果的でしょう。

 嗜好は人それぞれで、他の演奏と比べて云々は禁じ手だけれど、ワタシはカラヤン/ベルリン・フィル(1977年)を思い出しておりました。第3楽章「スケルツォ」は元気良く、オケの迫力の見せ所だろうが、ワタシは(あくまで個人の嗜好として)カラヤンの(全体的な)「重さ」「艶」に違和感を覚えたものです。ナヌートはあくまで中庸のテンポ、気持ちよくオケを叱咤激励してどこにもムリがない。会場残響の素朴な奥行きがますます快い。

 最終楽章。ホルン/トランペットの粗野な響きが魅力的ですね。緊張と推進力は失われず、オケのサウンドはあくまで素朴さ、暖かさを失わない。全身全霊で叫んでも、威圧感を与えない。ローカル・オケの洗練されない響きは、時に全曲を聴き通すと、最終楽章辺りで耳障りな濁りが気になる場合もないではないが、リュブリャナ放響、ラストまで万感迫って懐かしいサウンドであります。

 スラヴ舞曲集のフィル・アップは配慮あるところだけれど、アルフレッド・ショルツ名義は嘘っぱちですからね。困ったもんだ。第1番ハ長調(シップウエイ)は少々響きと表現が硬く、第10/3/4番(ショルツ名義)は余裕の楽しげな演奏でした。いったいどこのオケなんでしょうな、ロンドン・フェスティヴァル管(ロス・ポープルのオケに非ず)って。勝手に変名だろうけど。ホ短調 作品72ー2は、ほんまに哀愁の旋律を胸を打ちます。

 ラスト、第5番イ長調 作品46ー5はナヌート再登場だけれど、「新世界」に比べ少々オン・マイク気味で様子が違いますね。素朴な躍動が好ましい演奏であります。   

(2006年10月14日)


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written by wabisuke hayashi