許 光俊 「世界最高のクラシック」光文社新書 2002年発行 720円 1965年生まれ、慶応大学法学部助教授である許さんの新作。クラシック評論会のニューエイジである、彼の著作はどれも注目です。クラシック音楽向上委員会編 「クラシックB級グルメ読本」中でも、このサイトで既に登場しておりました。既存の価値観を根底から揺るがす(であろう)評論に期待します。 が、読み出してほとんどガックリ。「興味はあるけれど、あまり知識や経験をもっていない人を、いきなり銀座の寿司屋に連れて行く」〜との前書きから期待した内容との格差に愕然・・・とするのは、ワタシがスレっからしの知ったかぶり半可通だから?第1章「ナイーヴ時代の大指揮者たち、または古典主義的幸福」〜まぁ、コレ、フル・ワル・トス・クナから始まって、世代時代(ほかいろいろの理由で)分類し、話しを進めていくんだけど。 岡山県児島在住の「親から子へ伝える岡山の食文化を否定する林 侘助。を糺す会」会長も、この本を読んでいて、「初心者の人は、これでわかったような気になるんじゃないの?」なんて言っていたが、そうでしょうかね。ここで取り上げられたCDを、順番に買い集めて「この演奏はこう聴け」みたいな、そんなことして幸せなんだろうか。「フル・ワル・トス・クナ」は「初心者向け」情報ですか。 表現的にもちょっと読んでいてツラい。「真実として結晶化した録音がある」〜ポリーニ/ベーム/ウィーン・フィルのMOZARTピアノ協奏曲第23番イ長調K488のことけど、「結晶化」というと言葉は大物評論家U氏がよく使うし、なんだかよくわからない。いえいえ、この演奏は、しっとりすっきり、上品で素敵な演奏なんですけどね。(吉田秀和さんは「玉三郎みたい」とFMでおっしゃっていた) 「擬古典主義の平和」「二十世紀が見た夢」「コスモポリタンの喜び」「マニエリズムの退廃と人工美」各々指揮者が分類され、論旨が展開されるが、なんのことやらさっぱりわからない。各々のCDのコメントが中途半端、指揮者としての一般的分析も論旨不足。(中野 雄さんの「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」の具体的証言分析に基づく圧倒的説得力とは雲泥の違い) 読んでいて行間から音楽が聞こえません。結論的に、筆者の好き嫌いだけが明快に浮かび上がる。どこが「銀座の寿司屋」なのか?安い回転寿司だけど、家族揃って和気藹々と食べたほうが音楽は楽しいんじゃないの?「一生懸命アマ・オケ500円演奏会」のほうが、どれだけ幸せか。 でもね、チェリビダッケの詳細分析は白眉ですよ。この本の。18頁費やして、かなり情熱的に彼の音源を語っていただいて素晴らしい。同感します。この調子と分量でケーゲル、インバル、アーノンクールを語って欲しかったが、いかにも量的に物足りない。あんまり分類せずに、自分の好きな指揮者、演奏だけ延々と語っていただいた方が、楽しめたかも知れません。 (いつもながらのド・シロウトのコメント、深く恥じ入ります。ご容赦)
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