Classic Press 2000年秋号(株)音楽出版社 2000年発行 1600円 この雑誌、季刊ですでに4号目。少々高めながら、内容充実で充分内容に見合う価格。ワタシ仕事の関係で、四国をまわっていますが、そこそこの本屋には置いてあるから、たいてい手に入ると思います。 30年に渡って愛読していた「レコ芸」から縁を切って数ヶ月。Gramophone Japan は、ますます快調で感じることが多いのはいうまでもありません。例の「容姿問題」は、こっそり復活していて別の評論家が「芸能である以上、容姿は重要」と、ワタシと同じ主張をされておりました。閑話休題。Classic Pressのことでした。 まず特集記事が並のこだわり方じゃない。宇野氏の「クナッパーツブッシュの名盤」(これ、ワルターとフルトヴェングラーに続いて本になるそう)は「売れ筋狙い」の企画でしょうが、濱田さんの連載「もっと知りたい、この作曲家」はなんと「ヒナステラ」(渋すぎる!)、金子さんの「聴振書教」では、CD化なったムラヴィンスキーの1973年の東京ライヴを取り上げていて、その知的な、実践的な、論理的な、実証的な分析に驚愕。(これ読めば、絶対にCDを聴きたくなります。皮相な提灯記事とは桁が四つほど違います) 最近躍進のニューウェイヴ系(?)評論家、許さんの「絶対邪悪」では「ドレスデン国立歌劇場オケ」絶賛の嵐。これも凡百の「礼賛」ではなくて、相当にひねっていて、ナマで、本拠地で、しかもスター指揮者ではない日常のレパートリーで聴いてこそ・・・・というこだわり方。 録音技師シュナップが語る、フルトヴェングラー秘話。オットー・クレンペラーの抱腹絶倒のエピソード集(今回が最終回でした)、堀内朱美さんの「音楽家の食卓」(今回は「大のビール党、ブルックナー」〜料理レシピ付き。こんな凝った記事、滅多にお目にかかれない。)とどめはベルリン・フィル・ディスコグラフィー(今回は1945〜1965年)。 ・・・・・・・とまぁ、もちろん「読み物」だけでも凄いんですが、なんといっても本編のCD Review が本命でしょう。Gramophone Japan もそうなんですが、詳細かつマニアック、適切、わかりやすい。「レコ芸」の敗退はここに主因があります。Classic Pressは、3ヶ月分でしょ。基本的には輸入盤ばかり。取り上げられているCDは並のもんじゃないんです。 BRAHMS、MHALER、BRUCKNERが出てくるのは当たり前だが、歴史的録音の比率が高い。コーコラン、クレストン、ドホナーニ(クリストフのお父さん)、エングルンド、ホル、マニャール(これは名前くらいは・・・)、ペッテション=ベリエル、ヴァージル・トムソン、メレディス・ウィルソン、ドナトーニ、マリピエロ(ここらあたりは少々馴染みか)、パソドプレ、ディーン、ロージャ(ワタシ、ファンです)、ホルンボー、ケクラン、ラウロ、・・・・・嗚呼キリがない。 とにかく、フツウじゃ絶対取り上げられない(だって売れないでしょ。スポンサーだって付きにくいし)CDを、ていねいに経緯を込めてコメントしてくれています。何枚かは、買ってみようかと食指も動く。これこそ、本物の文化の擁護だと思うのです。 それと、先に少々触れましたが「歴史的録音」が多く取り上げられています。オペラ方面なんて九割方そうなんじゃないのかな。トータル数えていないけど、ずいぶんたくさん取り上げられていて、コメントは的確かつコンパクト。必要にして充分。音質への言及も適切。曲目、演奏家がすべて原語というのも(やや不親切のようにも見えるが)ワタシにはかえって好ましく思えます。(日本語表記や、訳が気になることもあるので) 編集長は平林直哉さんです。このまま頑張っていただきたい。広告が驚くほど少ないので、経営的には大丈夫なのか少々心配です。海外レーベルのURLを掲載しているのも親切。
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