許 光俊vs鈴木淳史 「クラシックCD名盤バトル」洋泉社 2002年発行 880円 お二人ともレコード評論ではニューウェイヴの方々で、既に数冊の著作を読ませていただいております。正直、こういう本が出てしまうと、「嗚呼、難しい時代になってしまった」とか「本で聴く音楽」なんつうサイトも成り立たないのかな、なんて嘆息しておりました。既存の権威にグズグズ言っていたワタシも厳しい立場に・・・・。 貧し(かった?)いから、高いCDは買えない。知名度の低い演奏家や、作品のレコード(CD)は安かったんですよ。いまはねぇ、そりゃ高いのを選べばいくらでもあるけれど、廉価盤を探すのにそう苦労はなくなった・・・・閑話休題。あれほど、呆れるほど毛嫌いしていた「権威的演奏」がここまで消えてしまうと、ある種感慨が湧いてくるくらい。某廉価盤サイトと出ているものはそう違わない・・・、こうなりゃ、「1970年頃まではこの演奏が絶対的評価を得ていた」みたいな論評が新鮮になるのかもしれません。 その手は既にこの本で使われていて、BACHのゴールドベルク変奏曲!って言ったら「グールド」じゃないですか。フツウ。鈴木さんが「リヒター」(しかも、ミスタッチだらけの来日ライヴ〜ふたひねり半している)、許さんは「ケンプ」ですもんね。主張し、論評していることは哲学的すぎて、ワタシには理解不能。ちなみに、ワタシの推薦は「ブルーノ・カニーノ」(ERMITAGE ERM412 1993年)〜踊るような、軽快なるリズムに乗った、しかも繊細なる、明るい演奏です。 海賊CDRなんかもバンバン出してくるから、これは「ワタシはレコード・メーカーの提灯持ちは絶対しませんよ」という宣言か。(安ければ、怪しげプレスCDでもどんどん買って、サイトに載せてしまう某にも共通点がある?)〜ちなみに、コレBEETHOVENの交響曲第9番(テンシュテット/ロンドン・フィル)〜(許)。対応する鈴木さんは(出ました)アンセルメ/スイス・ロマンド管〜いかにも、という変化球でした。(ワタシは王道を歩んで、クレツキ/チェコ・フィルで) ジャケット絵への論評も時に拙サイトで使う手法だが、悪口は言わない自覚はあります。BEETHOVENのピアノ協奏曲第1番で、許さんはシフとハイティンクの顔が好きではないとのこと。コレはねぇ、あんまりストイックに「音一筋」という姿勢を避けているのね。そういうのは恥ずかしい世代か。(わかる)でも、そんなこと本に書いてもしかたがないじゃない。ちなみにシフのピアノに節拍感がないとのこと。じゃ、なんで?というと悪徳官僚のような顔をしたハイティンク指揮するシュターツカペレ・ドレスデンの音が素晴らしいとのこと。 シェエラザードは小澤/シカゴ響(許)、チェクナヴォリアン/アルメニア・フィル(鈴木)〜これもキマり過ぎの選定で、生真面目一方の若気の至り演奏(ワタシもけっこう好き)と、オケの技量に少々疑念あろうともクサい旋律をとことん、と言う方向はわかりやすい。でも、チェリビダッケとは言わないから、なぜ激甘・豪華・叶姉妹的カラヤンがご出馬されないのか?当然、ワタシはこれを一押し。 MAHLERはほとんどワタシと好みが裏目に出ていて、妙に納得。唯一第5番にカラヤンが出てくるのは、合意できなくはない。DEBUSSYの名曲「海」でシルヴェストリ盤を出されると「ワタシの縄張りを荒らすのか」と言いたくなる。(許)対する鈴木さんはヴァクターン・カヒッゼ/トビリシ響だから、ワタシの島ではないが。 「惑星」では、鈴木さんが「私の一番のお気に入りはチェリビダッケ」とのこと。但し、想像上のことでそんな録音は存在しないし、演奏したかどうかも怪しいもの・・・・とまぁ、キリがないが、正直、読了してこれほどなにも学べない音楽書籍も珍しい。これはね「名盤決定版」みたいな権威が消えてしまった21世紀ではしかたがないのか?それとも二極分化した結果なのか。悩ましい。 これを読んでクラシックCDの売り上げに貢献するかどうかは、大いに疑問ですね。え?他人(ひと)のこと言うなって?
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