弦楽のための音楽(オードラン/ヨーロッパ・コミュニティ室内管弦楽団)


IMP  PCD 2044 Hindemith

「弦楽のための5つの異版」 作品44

Barber

「アダージョ」作品11

Britten

シンプル・シンフォニー 作品4

Puccini

「菊」

Warlock

「キャプリオル組曲」

Bartok

「ルーマニア民族舞曲」

アイヴィン・オードラン/ヨーロッパ・コミュニティ室内管弦楽団

IMP PCD 2044  1991年録音  中古200円

 指揮者(EIVIND AADLAND)はノルウェイのヴァイオリニストらしく、そこでは「ヨーロッパ・ユニオン室内管」の音楽監督となっているが・・・オン・マイクな音質印象もあって、整った、骨太のアンサンブル(ややザラリと大味だけれど)を聴かせて下さいます。選曲は一筋縄でいかぬ凝ったもの。IMPは既に活動を止めているし、演奏者も知名度が低いから音源復活の望みは薄いでしょう。出張先金沢BOOK・OFFでの出会いに感謝。

 HIDEMITHは初耳でした。辛気臭くも乾いた、いつも馴染みな情感薄き旋律連続13分ほど。好みではないが、次のBarberとの”甘美な哀しみ”との対比が浮き立ちます。どこでも、いつでも聴けるわい、と油断していると、意外なほど入手機会が(聴く機会も)ない作品でもあります。(サイト内検索実施/フォスター/モンテカルロ・フィルは処分済/トスカニーニは流石に日常聴きに相応しくない/ヤニグロ/ザグレブのマニアック音源発見!/アンドルー・シェンク/ニュージーランド響のもあったな)アンサンブル的にはいまひとつの洗練を望みたいところ。

 Brittenの「シンプル・シンフォニー」はもっと入手しにくいはず。ワタシも初入手と思っていたら、ボイド・ニール/ボイド・ニール弦楽オーケストラ(1938/39年)を昨年聴いておりました。名前ばかりで、旋律も知られていないんじゃないの。第2楽章のピツィカートが楽しげに躍動するし、第3楽章「センチメンタル・サラバンド」の糖度はBarberに負けません。これは全曲、勢いがあって立派な演奏です。16分ほど。

 注目は「菊(CRISANTEMI)」であります。これは聴き手の胸を鷲掴みするような詠嘆と哀愁の(婦女子のお涙頂戴的)メロディ(7:13)でありまして、CDでは未入手だったもの。(FMエア・チェックで出会った名曲中の名曲)ま、これが欲しくて買ったCDですな(200円だし)。いかにもバルビローリに似合っていそうな作品だけれど、録音はないのか。このCD中の白眉。

 Warlock「キャプリオル組曲」は、擬イギリス・バロック風の作品であり、古典的佇まいの格調高き名作。世間的人気ともかく、録音はけっこうあります。ワタシは英国音楽好きなので幾種類も音源所有してますよ。わずか10分ほどの穏健派懐古的舞曲連続の愉悦。ワタシは大好き。ラスト少々不協和音に走るところが、なんとも味わい深い。

 ラストはBartok。ルーマニア民族舞曲はピアノのほうが好きだなぁ(そちらがオリジナルですか?)。”いかにも”的クサい民族的旋律は魅力的です。アダム・フィッシャー盤(1990年)には木管が加わっていたけれど、ここでは弦楽のみ。いろいろな版があるみたいです。表現的にはもう少々陰影とか、繊細が欲しいところ。ラスト「マヌンツェル舞曲」のノリ、最高。

 全体として耳馴染みの良い作品が並ぶが、すべて20世紀の音楽だったんですね。音楽の見聞をちょっとだけ広げて下さった一枚也。

(2008年5月16日)

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written by wabisuke hayashi