Debussy/Ravel 管弦楽作品集
(ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)


Leningrad masters  (MASTER TONE) LM1304 Debussy

交響的素描「海」
クラリネットと管弦楽のためのラプソディ
夜想曲より「雲」「祭」

(以上1962年録音)

Ravel

ボレロ
逝ける女王のためのパヴァーヌ

(以上1960年2月26日録音)

ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルハーモニー

Leningrad masters(MASTER TONE) LM1304 $1.99で購入

 数年に一度、棚を整理していたら登場するCD。筋肉質の体脂肪少ないDebussyであります。おそらくはオリジナル・モノラルであって、無理矢理疑似ステレオ化するから金属的不自然、かつ高音先鋭で、聴きづらい音質となっているのは残念。

 それでも「海」の明快さは、好み乗り越えて圧倒的な集中力により”強烈強靱”水準へと至っておりました。「”海”はほんわか」的先入観を打ち破る代表例としてはブーレーズ盤(1966年)が存在するけれど、(Debussyが本来拒否したはずの)まさに交響的な、メリハリかっちりとした佇まいで完成されております。(「海」でトラックひとつ、というのは困りもの)ライヴ故の怜悧なる昂揚感も存分でして、おっそろしく鋭い強面演奏〜オーケストラは上手いもんです。

 「ラプソディ」に於けるクラリネットの硬質な響きは、あながち録音のせいばかりと言えないでしょう。オーケストラは繊細なアンサンブルに間違いないのに、この威圧感というか、厳しさはなんでしょうか。もっとエエ加減に、自由に、気楽に(少なくともそう聞こえるように)演奏すべき作品かと思うが、切れ味あるソロのテクニックはまったく雄弁そのもの。

 「夜想曲」は雰囲気ありますよ、怪しげな。(ここでもトラックひとつ)「雲」に於ける弦の繊細さ、木管の表情豊かな響き・・・でも、やはり暖かさの欠片もない、というか、そんな効果は最初っから狙っていないですか。「祭」は雄弁なる華やかさに溢れて勢い充分。流線型の演奏。先端尖りすぎ。(一部編集ミス?音飛びありましたが。板起こしですか)「シレーヌ」は演奏されなかったらしく、会場の盛大なる拍手で締めくくられました。

 Ravel は(もう少し)聴きやすい音質となります。(モノラル。この日の演奏会のメインは「幻想交響曲」であったとのこと)非常に正確(なイン・テンポ)かつヴィヴィッドな「ボレロ」であって、そのアンサンブル集中力+クレッシェンド効果+テンションの高さは驚異的。各パートはモウレツに上手いですね。まるで露西亜軍隊の行進のような一糸乱れぬ足取り。延々と列は続き、人数はいや増すばかり(のように聞こえる)。演奏者はあくまでクールだけれど、聴き手は手に汗握るばかり。

 ラストに向け金属的金管が大爆発していくから、いや、もうその効果たるや筆舌に尽くしがたいほど。聴衆の拍手も盛大!「パヴァーヌ」はアンコール的存在でしょうか。ビロビロの激甘ホルン(ブヤノフスキー?)が、あまりに怪しく(妖しいとも言えるが)て、ものものしい雰囲気に溢れます。「儚い佳人短命」女王の生命への惜別ではなく、もっと巨大で、朗々とした世界であります。

(2006年5月12日)


 2002年再聴です。ワタシのサイトは無定見に内容が増えていくので、全部を見ることは不可能に近いのでしょう。それどことか、自分で忘れている。BBSでご指摘を受けて「?」状態。このCDを棚から探すのに一時間掛かりましたよ。情けない。これ、↓には触れていないが、ライヴ録音で拍手が入っていますね。音の状態は、なるべく部屋全体を鳴らせて雰囲気を作らないと、細部が粗い。

 先日、図書館でコンドラシンのMahler を借りたら、第6番がレニングラード・フィルなんですよ。何故か。(ちなみに第5番がソヴィエット国立響)これがけっこう粗っぽくて、例えば金管の鋭さが演奏効果につながっていない。ムラヴィンスキーとの録音ではあれほどの緻密さと緊張感を実現するのだから、これは信頼関係というか、相性の問題でしょう。Mahler 演奏にも慣れていなかったのかも。

 以下、1999年くらいに書いたのかな、いいとこ突いてますね。現在聴いても印象はほとんど変わらない。ワタシのDebussy/Ravel はブーレーズが基準なんです。ま、新旧どちらでも。細部まで明快、人工的な自然体、緻密なアンサンブル、ほとんどイン・テンポでありながら、独特の艶を感じさせる〜スタイル。

 やはり、ムラヴィンスキーはやや強面でしたね。冷たく燃える青き炎〜風演奏で、希にしか聴けない演奏か。もちろん、セクシーじゃありません。もっと筋肉質で、愛情ロマンス系映画じゃなくて、本格派格闘系ハード・アクション。「パヴァーヌ」はちょっと、ねぇ。ボレロの緊張感と個々の演奏家の技量はたまりません。

 ま、これも得難い個性と言うことでしょう。音楽のスタイルはいろいろあってこそおもしろい。でも、おそらくコレ、ほとんど先入観そのままだと思いますよ。きっと。(2002年10月23日)


 音源的にはかなり海賊っぽくて、ライヴ録音。そのわりに、まあまあ聴ける音ですが、疑似ステレオかもしれません。やや金属的な音。一時、あちこちのレコード屋さんで@500くらいで見かけたシリーズ。ムラヴィンスキーでフランス音楽というのは、その違和感に期待が高まります。選曲もGood。ムラヴィンスキーが亡くなったときに、FM放送の追悼番組でで「ボレロ」をやっていて、なかなかクール、と思いました。その時と同じ音源と想像されます。

 「海」は驚くほどアンサンブルが優秀で、勢いのある引き締まった演奏。そうとう殺伐とした雰囲気ながら、文句なしの集中力。ホンワカとした演奏ばかりがフランス音楽ではない。尋常ではない「ノリ」。アッチェランド。細部まで指揮者の意志が徹底した怒濤の迫力。この曲のイメージ一新。

 「ラプソディ」はレパートリー的に珍しくて注目ですが、レニングラード・フィルのクラリネットは少々クセのあるヴィヴラートもあって、デリカシーに乏しい。弦のバックは神経が行き届いていて、いい感じ。この曲は強面が裏目に出ました。

 「夜想曲」は繊細さが際だっていて、緊張感を維持した演奏です。でも相変わらず不機嫌な表情。「祭」のリズムの切れ味や迫力はなかなかだけど、お祭りはもっと楽しいものでしょ?ロシアの軍隊のお祭り?(一カ所編集ミスか音が飛ぶ)

 「ボレロ」は、オーケストラの名人芸が売り物。ものものしくも厳しいリズムを維持した演奏で、まるでレニングラード交響曲の第1楽章のようなイメージ。長いクレッシェンドが威圧的で、硬質なオーケストラも迫力があります。拍手も盛大。これはこれで充分存在価値は高い。

 「パヴァーヌ」は名手ブヤノフスキーの、トロけるようなヴィヴラートのかかったホルンが堪能できる逸品。精密で、テンポも遅く、かなり濃厚です。最高です。

 ロシアのラヴェルでもないが、フランスとは縁のない演奏でしょう。ここまでリキの入ったドビュッシー・ラヴェルは初めて聴きました。そうとうに楽しんで聴けました。


その後・・・・・・・
 このCDに収録されたうち、「海」と「ボレロ」はFMで放送されものを、カセットに収録していたことを発見。想像通りの演奏だなぁ、と思っていたら当たり前ですよね。以前に何度か聴いたんですよね。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi