Mozart ピアノ協奏曲第20番ニ短調(ブレンデル)/第21番ハ長調(カサドシュ)Mozart ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466(カデンツァはブレンデル自作) ブレンデル(p)/マリナー/アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ(1973年録音) ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467 カサドシュ(p)/セル/クリーヴランド管弦楽団(1961年録音) Coniel(協和発酵)KY-9110 PHILIPS/CBS音源の海賊盤 中古350円 「リーズナブルな価格で見掛ければ、ほぼ無条件に購入する」お気に入り作品の代表例が、Mozart のピアノ協奏曲となります。この海賊盤はきっと協和発酵の景品か何かだったんでしょう、ワタシが1999年不安な気持ちを抱えつつ岡山に転居し、最初にご近所BOOK・OFFで購入した一枚となります。「激安」「中古」「海賊盤」・・・ワタシの原点(まったくのところ普遍性のない個人的原点だけれど)のような一枚でしょうか。 自分のサイトを検索すると、ブレンデル盤は「自信に溢れ、充実した表現が聴かれます。特異な個性とは思えないのに妙に感じるところがあるのは、LP時代の愛聴盤だったせいでしょう」とのコメント。ワタシはLP時代、ブレンデルのPHILIPS録音をずいぶんと聴いたはずなのに、CD時代になると(より旧い)VOX、VANGUARD録音しか聴く機会を得なかったのです。ましてや最新録音にはほとんど縁が薄い・・・聴く機会を得ません。(マッケラス全集も当然未聴) 先日、人様のブログ上で、ブレンデル評して「だいたい音が綺麗で、その演奏は正統的、格調高く分かりやすい。・・・『純白』ではなく、やや肌色の混じったような白さ。透明でも大理石の白でもないんだけれど、その白さに引き込まれてゆくような優しい白さというか。。。。『学究的』なんて批評もよく見るが、ボクのような素人には、曲の全体的な構造を分かりやすく提示してくれる素晴らしいピアニストだと思う」(「音楽日誌」にも引用済)と・・・なるほど。 ソロ・バックとも、とても素直で特異なる劇的表情ではなくて、粛々淡々と充実した音楽が広がっていく様子が自然体。マリナーは1960年代に意欲的な表現で登場した、との認識があるが、年を追う毎に穏健派へ道を進んでいったようであり、正直ここ最近〜現在ではまったく物足りなく、ツマらなく、興味がなくなりました。この録音時点はまだ”中庸の美”を誇っていた時期でしょうか。作為ではなく、無垢で暖かい”白さ”を感じさせます。品(しな)を作らない、美音でもない。もしかして、なんの変哲もない演奏に聞こえるかも・・・ だからこそMozart の個性〜この劇的なニ短調協奏曲はリキみなく、味わいの余韻を持って表現されました。少なくともCD購入以来5年以上、聴く機会の多い一枚であり、ほとんど至福の世界に浸ること必定保証の演奏であります。幾度聴いて飽きることはない。
どんな経緯から生まれたCDかは与り知らぬが、妙なカップリングですな。(ブレンデル/マリナー録音のみで他の作品を揃えることは可能だったはず。但し、第21番は1981年録音だけれど)ワタシはジョージ・セルの大ファンながら、「特定の演奏家の録音をムリして系統的に集める」といった習慣を持ちません。故に一連のカサドシュとのMozart 録音は、これしか聴いたことがないんです。 一聴、グランド・マナーならざる淡々とした演奏ぶりが、先のブレンデルと一脈通じるか、と思えば大間違い。こちらはより細部の磨き上げ、個性の彫琢が違っていて、淡彩繊細なるカサドシュだって微妙な感情の揺れを感じさせます。つまり、より浪漫的だけれど、抑制と端正がその前提となります。 オーケストラの重さ(というと語弊がある)、存在感がクッキリとして、リズムやらアクセントははっきり。これはマリナーとの思想の違いであって、こちらはやはり、硬派で強面なる一面はあるでしょう。あとは好みの世界。いずれわかりやすい、明快なる個性の表出とは少々異なって、裏地凝り系のワザだから、隠し味をしっかり味わいましょう。録音はさすがに少々落ちますか。(ワタシはほとんど気にしない) 有名なる第2楽章「アンダンテ」(「短くも美しく燃え」)は纏綿と・・・ということではなく、清楚で粛々と表現されました。それさえブレンデルの”白”ではない。ほのかな色気と”揺れ”が感じられ、これもMozart の魅力の一面だと思います。 (2005年7月8日)
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