Mozart ピアノ協奏曲第19/9番「ジュノーム」
(ハスキル(p)/カール・シューリヒト/シュトゥットガルト放送交響楽団)


PRELUDIO PHC2140 Mozart

ピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459(1956年)
ピアノ協奏曲第 9番 変ホ長調K.271「ジュノーム」(1952年)

クララ・ハスキル(p)/カール・シューリヒト/シュトゥットガルト放送交響楽団

PRELUDIO PHC2140 (価格失念。きっと1,000円では買えなかったはず)

 

 予想通り透明で繊細なピアノと、飄々とした勢いのある絶妙なバックが期待通りの演奏。淡々として、ほとんどなんの虚飾もないようで、実は無限のニュアンスに富んでいて凄い(と、ワタシは思います)。

 「ジュノーム」は、冒頭の低弦の効いたシューリヒトのバック、そして可憐なハスキルの旋律が聴こえてくると、もうマジックに引き込まれますね。この曲はとくに「歌」を感じさせる名曲で、全編に幸せな味わいに溢れ、ハスキルは細かいニュアンスが最高で、ちょっとした旋律の節のためらいが効果的。シューリヒトのバックも理想的なバランスと味わい。

 ハスキルのピアノは意外なほど骨太で、明快極まりなし。録音は放送録音らしく、曇っているが、聴きづらくはない。(というのがワタシのデータベースの感想。このCDでは、ライヴ・ノイズは聴こえない。カットしたのかな)

これが10年程前の感想であって、LP時代所有のハスキル音源を未だ全部快復できておりません。この度(2008年4月)ハキスルのBeethoven /Mozart の協奏曲集3枚組(ANDROMRDA ANDCD5003)を入手したら、第 9番「ジュノーム」(1952年)がダブりました。で、思い出したのがこのCD。3度転居し、大阪(正確には尼崎)に戻ってきていて、このCDはいつも一緒だったが再聴は久々です。

 3枚組諸経費込1,900円ほどは贅沢だったか、と反省したものだけれど、この一枚は1,700円くらいだったんじゃないか、との記憶もおぼろげ。時代は移ろいます。CDの購入費用は、煙草を吸わない分と割り切れる(健康的だし)が、もっと不足しがちなのは”音楽を聴くべき時間”+”無垢なる聴き手の精神(こころ)”でしょう。印象は、まず第一に音質がこんなに苦しかったかな?ということ。ちょっと堕落したかな。

 我らがアマデウスに駄作など存在するはずもない傑作揃いだけれど、その中でもピアノ協奏曲は珠玉であります。更に、ヘ長調K.459/変ホ長調K.271「ジュノーム」はワタシのお気に入りであって、ハスキルの素敵な演奏は”音質云々”的戯れ言を忘れさせました。彼女のピアノはいじらしいほど繊細で、玉を転がすような美音であります。しっとり瑞々しく芯のある響きは、臈(ろう)たげな弱さではない。(”骨太”とは言い過ぎ)

 スタッカートの軽快なるリズムで、シンプルな音形が絶妙なる愉悦で開始されるヘ長調K459協奏曲。シューリヒトはノリの良くて軽快、さっぱりした風情で、ハスキルの登場を待ちます。粘着とか強力(ごうりき)タッチとは無縁であって、淡々と虚飾ない表現。しかも細部のニュアンスまで明快なるピアノ。テクニックは暖かく、リズミカルでスムース、雑味なく澄んだ響き。幸せに微笑んだMozart 也。

 そっと秘密の言葉を耳元で囁くような終楽章〜やがて歓びは全身に広がって、部屋中へと放出されます。ころころと玉を転がすような美音(素晴らしき技巧!)とは、ここです。ソロ、オケとも控え目な陰影、床しさが効果的でしょう。(こんな作品、ノーコー強靱に演ってどーする?)

 4年遡るが「ジュノーム」のほうが音質は(やや)マシであって、低音がわりとよく響きます。華やかな楽想に溢れ、突然の開始に嬉しい驚きがある名曲中の名曲(って、どの作品も素晴らしいが)。ハスキルの十八番(おはこ)ですよね、あちこち録音が残っております。ピアノ・ソロの印象は”いじらしいほど繊細で、玉を転がすような美音”であることに変わりはない。ちょっとずつ、自然な呼吸のように揺れ、躊躇(ためら)い、歌います。シューリヒトとの息はぴたり!

 時に強いタッチで高らかに打鍵が響いても、けっして雑にならぬ味わい。第2楽章「アンダンテ」は涙を心の奥底に秘め、哀しみが淡々と滲み出ました。終楽章の流れの良さ、中間部4分過ぎ名残惜しげに、テンポが落ちる部分のしっとりした表現。やがて元のテンポに目覚めて、一気呵成に華やかな幕切れを迎えました・・・

 音質、録音の良し悪しについて、いろいろ考えちゃう一枚でした。いつまで大昔太古録音聴いているんだ、と揶揄されそうだけれど、これはビンテージものの演奏芸術なんです。

(2008年5月9日)


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written by wabisuke hayashi