Mozart フルートとハープのための協奏曲ハ長調
/Boieldieu/Dussek(グレース/ヨーロッパ・シンフォニー/イヴァン=ロンセア(hp))


ARTE NOVA 74321-3104-2 Mozart

フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299(197c)

Boieldieu

ハープ協奏曲ハ長調

Dussek

ハープ・ソナタ第3番ハ長調

ヴォルフガング・グレース/ヨーロッパ・シンフォニー/タルマチウ(fl)/イヴァン=ロンセア(hp)

ARTE NOVA BVCC-6018(74321-34057-2) 1995録音 250円(中古/定価880円)

 2006年よりCD在庫の整理に入り、2007年はなんとか”総量抑制”に成功しました。聴くべき音楽の精査であります。新しい(もしくは中古でも)CDを購入したら、その枚数分のみ処分する〜ということを鉄則としております。”迷ったらオークションへ”が合言葉。1996年にシリーズ化された驚異の低価格「ARTE NOVA」中の一枚だけれど、愛しのヴォルフガングの作品は沢山持っているし、これは出品しても良いかな?と棚中より取り出して考えを変えました。

 音楽を永く、鮮度を以て聴き続けるために大切なことは”聴取の幅を広げる”ということです。千年一日の如く、所謂名曲著名なる名演ばかりを聴いていても仕方がない。このCDはいつ購入したかも記憶にないが、主眼はBoieldieu/Dussekにあったはず・・・音楽の見聞を広げるべく購入したものだった〜はず(類推)。演奏者はオール・ルーマニア勢でして、”ヨーロッパ・シンフォニー”(交響楽団に非ず)は1992年「フィルハーモニア・ルーマニア」として創設され、やがて団体名を変更したらしい。ここでは1995年ウィーンでの録音となっているから、演奏旅行のついでか。RCA(BMG)もSONYに吸収されちゃったから、こんな知名度低い音源はなかなか(再び)日の目を見ないでしょう。

 「音楽を演奏家の知名度で聴かない」という、【♪ KechiKechi Classics ♪】の大原則でもあります。これは”拾い物”の一枚。

 誰も知ってる歌ってる〜Mozart フルートとハープのための協奏曲ハ長調は、有名な作品だし、これほど優雅で屈託のない美しい旋律って希有な存在と思います。”深みと陰影に乏しい”という声もあるようだけれど、人生に苦渋はもうたくさん!なんの苦労も知らない幼いお嬢様が、無心に、楽しげに踊り続ける・・・そんな作品。大好き。

 いったい何種の演奏が手許にあるんだろう?数えたこともありません。歴史的録音だってかまわないが、やはり(こんな作品だし)鮮度の良い音質で聴きたいもの。これは残響たっぷり豊かで、まるで宮殿に極上の空間が広がる快い録音そのもの。その印象もあるのか、予想外に瑞々しく練り上げられたアンサンブルであります。コンスタンティン・タルマチウ(fl)は、アラード・フィル(ルーマニア)の主席だそうで、器用ではないが、しっとりノビノビとした味わいに溢れ、やや素朴なるフルート。目隠しで聴けば「ルーマニア・ローカル・オーケストラの演奏者」とは俄に気付かないでしょ。

   で、このCDの主役はイオン・イヴァン=ロンセアのハープであります。いかにもルーマニア風の名前だけれど、ブカレストの”ジョルジュ・エネスコ”管の団員とのこと。ワタシにハープ演奏の云々を問われても分からぬ粗忽者故、夢見るような甘美なる残響に充たされてひたすら快感でありました。低音がよく広がります。全曲、名曲中の名曲ながら、とくに第2楽章「アンダンティーノ」が絶品、白眉であります。

 Boieldieu(ボワエルデュー)は、1775年〜1834年仏蘭西の作曲家(主にオペラ畑で活躍)だから、Beethoven (1770年生)ととほぼ同世代でしょう。このCDにハ長調の作品ばかり収録されるのは、ハープという楽器の特性でしょうか。軽快でシンプル上品な旋律が美しいが、やはりこの楽器はフルートとの組み合わせでいっそうの華やかさが発揮されるのでしょう。Mozart の後では印象がジミなものとなります。ま、どんな作品だってヴォルガングに敵(かな)うはずはないんだけれど。

 第2楽章「アンダンテ」のほの暗い、歌謡的な旋律はいかにもオペラの人であり、やがて中途安寧の表情へと変化してこれは名曲!続けてそのまま終楽章へ移行するが、静かであり繊細、叫ばない作品なんですね。哀しげなテイストから、やがて明るい表情へ移ろう情景が素敵です。21分ほどの作品。

 Dussek(ドゥシェーク 1760年〜1812年)も似たような世代のボヘミヤの作曲家。ハープの作品は数曲あるみたいですね。これが貴婦人の隠れた涙のような可憐なる、わずか7分ほどの悲劇。ラスト、憂いは解消して晴れやかなる表情が戻って参りました。CDでは入手が簡単ではないようですね(ネットでも探せない)。BOOK・OFF(+@250値付け)での出会いに感謝。馴染みのMozart ばかりではなく、新しい出会いが嬉しい一枚でしょう。

(2008年2月1日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi