Mozart 交響曲第41番/「ドン・ジョヴァンニ」 序曲/
「フィガロの結婚」序曲 /魔笛 序曲 /
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」/交響曲第40番
(フェリックス・プロハスカ /ウィーン国立歌劇場管弦楽団)


Vanguard atm-cd-1183 Mozart

交響曲第41番 ハ長調 K. 551「ジュピター」
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K. 527
歌劇「フィガロの結婚」序曲 K. 492
歌劇「魔笛」序曲 K. 620
セレナード第13番 ト長調 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 K. 525
交響曲第40番 ト短調 K. 550

フェリックス・プロハスカ /ウィーン国立歌劇場管弦楽団

Vanguard ATM-CD-1183 2枚組(1952/3年録音)

 フェリックス・プロハスカ(Felix Prohaska, 1912年-1991年)はデジタル時代迄長命を保ったのに、ウィーンのフォルクスオーパーとかハノーファー等歌劇場一筋の経歴、録音も(メジャーレーベルに)少なかったことから、あまり注目されないようです。日本じゃ1970年頃発売された廉価盤LPの指揮者!みたいなイメージとなっているんじゃないか。リンク先にもけっこう録音があるようだし、立派なMahler だって(意外なる立派な)聴きもの。録音時期情報の件、以前「音楽日誌」では”おそらくは1960年頃の録音でしょう(1952年-1953年という情報はステレオ録音から考えて誤り)”と言及していたけれど、じつは正解!だった。ハ長調交響曲+序曲集はステレオ録音に間違いないが、米ヴァンガード社ステレオ・デモンストレーションとのこと。けっこうエエ音で鳴っております。

 彼の経歴から考えて、オーケストラはフォルクスオーパーのオーケストラと類推するが、当時のウィーン・フィルのメンバーと協奏曲録音があるから、ほんまの国立歌劇場管(≒ウィーン・フィル)の可能性もある。端正な木管の響きなど、かなり説得力のある仮説ですよ。

柔らかくふくよかな響き、優しい歌い口、徒にスケールを強調するのではなく、バランス感覚溢れるモダーンな演奏です。・・・音楽を愉しむ、感動溢れる原点に充たされるような一枚
とは昨年2010年段階での自らの(素っ気ない)評価。中庸のテンポ、楷書の表現ながら、アクセントや間を強調しない、優しい、柔らかい「ジュピター」の開始。リズムのエッヂを立てない、テンポを雄弁に揺らせない穏健派。弦の楚々とした響きも素敵だけれど、木管の暖かい響きがかなり目立ちます。第2楽章もエキセントリックな風情皆無の優雅で淡々としたテイスト。天女が舞い降りる第3楽章「メヌエット」も、ティンパニのアクセントは控え目に鳴っております。清楚清純な天女ですよ。ノンビリとした”舞曲としてのメヌエット”を実感させて下さる。

終楽章はきびきびとして、引き締まった緊張感が増しました。テンポはやや速め。しかし、急いたり、ムリムリなところがない優雅な演奏に間違いない。ラスト圧巻(なはずの)フーガでも、ホルンは牧歌的な音色(金管一般にそんな感じ)にこだまします。東洋の片隅、狭いマンションの一室でド・シロウトが聴くところの”ウィーン(ローカル)風”って、こんな感じですか。

 冒頭劇性を強調せず、優しく優雅な「ドン・ジョヴァンニ」序曲(演奏会用終結部付)。木管が華やか、走りすぎない「フィガロ」序曲。メルヘン香って序奏が重すぎない「魔笛」序曲。金管がなんとなく鄙びた音色(?)ウィーン・フィルじゃないのかな。それとも立派なアンサンブルを作り上げているプロハスカの指示嗜好か。木管はほんまに素敵ですよ。

 「アイネ・ク」以降はモノラルになって、やや音質印象が変わるが、基本かなり良好な状態でしょう。溌剌とした表情を基本としつつ、オーソドックス、中庸な弦楽アンサンブルであります。時代から考えると、意外なほど小編成であって優雅だけれど大柄ではない(念頭にはカラヤン有)。

 哀愁のト短調交響曲は、これも中庸なテンポ、揺れ動きは最低限。しかしイン・テンポといった、乾いて硬派な印象に非ず。最近の演奏に比べるとかなり厚みはあって、ほのかに浪漫と劇性が香ります。(ハ長調交響曲同様繰り返しなし・・・は残念)フレージングは基本さっぱりとして、詠嘆にタメを作らない。旋律の節回しはさらりとしているけれど、優しい歌に溢れ、わずかなニュアンスの変化で情感を語る第1楽章「モルト・アレグロ」。

 第2楽章「アンダンテ」は淡々粛々とした風情に充ち、第3楽章「メヌエット」(こんな劇的なメヌエットって、他で聴いたことはない)は、速めのテンポにて思わぬ切迫感を伴いました。ここも木管が可憐だなぁ。終楽章は、その緊張感をそのまま維持して、厚みのある弦の響きと美しい木管との対比を堪能させて下さいました。

(2011年12月23日)


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written by wabisuke hayashi