Mozart ピアノ協奏曲第22/23番
(マティアス・キルシュネライト(p)/ベールマン/バンベルク交響楽団)
Mozart
ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調K.482
ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488
マティアス・キルシュネライト(p)/フランク・ベールマン/バンベルク交響楽団
ARTENOVA 82876 82576 2/8 2005年録音 10枚組2,770円(総経費込)にてオークション入手
いつもながらの雑談でございます。
Mozart のピアノ協奏曲は、ワタシの極めつけお気に入りでして、全集は何種も所有〜していたけれど、ここ数年の在庫整理によって処分は進んでおります。ゲーザ・アンダ全集が盤面剥落でダメになったのは残念だけれど、バレンボイム、アンネローゼ・シュミット、イェネ・ヤンドーもオークションに出してしまいました。ごく最近、”歴史的録音”を一気処分しているから、ボックスものに含まれた戦前太古録音もごっそり棚中からなくなりました。
残ったのは、デレク・ハン(BRILLIANT)であり、カルメン・ピアッツィーニ(CASCADE)、古楽器の全集が欲しいな、ということで、マルコム・ビルソン(fp)をHMV通販で購入したが、これは単発一枚物をオークションで処分した上でのこと。マティアス・キルシュネライトはごく最近の録音でしょ?最近の、現役の人の新録音を確認するのも大切なことだな、ということで購入いたしました。もともと新品で購入しても安いんだけれど、オークションだったら、もうちょっとだけお得価格だったので。
我らがヴォルフガングに駄作などあるはずもないが、この2曲も名曲中の名曲!映画「アマデウス」で、夜遊びから朝帰りする情景(だったっけ?)に効果的に使われていた変ホ長調K.482協奏曲。ウキウキとした第1楽章から素敵だけれど、第2楽章「アンダンテ」で管楽器のみが延々と美しい旋律を絡ませて、ここが白眉。終楽章はノンビリとして、一点の曇りもない喜びに溢れます。
キルシュネライトは1962年、ヴェストファーレンに生まれ、となっておりますね。ドイツの中堅か。2007年に来日していたらしい。日本スタインウエイの招待となっていたから、これはスタインウエイなのでしょう。艶のある響きはなるほど、その通りなんだけど、ちょっと馴染みとは違った印象〜つまり、抑制と含羞、ニュアンスに充ちた美しいピアノということです。怜悧な味わいではない。
Mozart には必須の条件だけれど、叩かない、力まないタッチ。細部入念なるニュアンスに充ちているが、要らぬ装飾的表現やらテンポの揺れは存在しないんです。スタインウエイにはゴージャスな響き、といった先入観があるけれど、低音は耳の奥底でフォルテピアノの素朴な記憶が呼び覚まされるような錯覚を覚えます。スタンダードでオーソドックス系。
ベールマン率いるバンベルク響は、大昔カイルベルト時代から40年を経、驚くほど洗練され、技術的にも安定しているが、それがツマらない。”管楽器のみが延々と美しい旋律”は、期待された感銘は薄くて、そつなく、上手く演りました、的印象で、もっと個性豊かに聴かせて欲しい・・・時代はインターナショナルだから、ローカルな個性を許さないのか。
イ長調K.488協奏曲は、これこそ名曲中の名曲であり、第2楽章「アンダンテ」の浪漫は筆舌に尽くしがたい甘美。作品の個性をムリなく表出する上で、なんの問題もない立派で入念な仕上げであります。しかし、脳裏には、昨日聴いたクリフォード・カーゾン/ボイド・ニール/ナショナル交響楽団(1945年)の”陶酔”が木霊しておりました。録音条件乗り越え、聴き手の胸震わせる恐るべき魔法のような説得力。
我らがヴォルグガングの名曲を堪能するに充分なる、キルシュネライトの技量。第2楽章には、先ほどの変ホ長調K.482協奏曲第2楽章と同様の印象を得ました。オーケストラも上手い、録音も極上。日常座右に常備するに相応しい全集に間違いない。しかし、それだけではない”なにか”が存在するはず。だからこそ”クラシック音楽”は奥が深く、楽しみは尽きない、ということでしょう。
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