Mozart交響曲第32番ト長調/第35番ニ長調/第39番変ホ長調
(ジェフリー・テイト/イギリス室内管弦楽団)


EMI TOCE-14330 Mozart
交響曲第32番ト長調K.318
交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」
交響曲第39番変ホ長調K.543

ジェフリー・テイト/イギリス室内管弦楽団

(この写真は)EMI TOCE-14330 1984-1993年録音

 Jeffrey Tate(1943-2017)が2017年6月2日に亡くなりました。身体が不自由でも最晩年迄ハンブルク交響楽団の首席、サンカルロ歌劇場(ナポリ)の音楽監督を務めていたそう。彼のMozart録音を真面目に聴かなくっちゃと思いつつ、後回しにしていたのでこうしてしっかり拝聴するのも追悼でしょう。

 結論のみ云ってしまうとこれがまぁ、なんともオーソドックス。几帳面、中庸のイン・テンポ安定感に溢れて、オケも特異なサウンドやら色彩を誇るものでもなし。けっこう評価も高いようだけど、あまりに常識的というかアーノンクール以降、古楽器系演奏を聴き慣れた耳には悪くないけどちょいとヤワやなぁ、というのが正直なところ。細部描き込みていねい、オケもちゃんとしたアンサンブルに間違いないけれど。音質まずまず。

 交響曲第32番ト長調K.318はご存知単一楽章の「イタリア風序曲」わずか9分ほどの短いシンフォニア。快活な名曲であります。出足「Allegro spiritoso」から慌てず騒がず常識的なテンポにバランスを感じさせ、曖昧さのない落ち着きであります。「Andante」も淡々と特別な色付けもなし(木管は美しいと思います)「Primo tempo」(最初の速さで)に至っても落ち着いたテイストに変わりはありません。まさに過不足のない、力みもムリもない世界。

 交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」はMozart交響曲との出会い=初恋、カール・ベーム/ベルリン・フィルの17cmLP(1959年)でした。第1楽章「Allegro con spirito」は2オクターブ上昇の喜びが吹き上がるような明るさ、ここも前のめりとは無縁のしっかりとした足取り、穏健かつ軽快な足取り、陰影に充ちて美しくも華やかな楽章であります。(6:15)第2楽章「Andante」はスコアを開くと見開き2ページに収まります。セレナード(夜の歌)の色濃い静かな楽章は弦楽器+オーボエ、ファゴットのみ、フルート、クラリネット、トランペット、ティンパニはお休み。繰り返しを実行しているのは時間を見ればあきらかでしょう。端正なテイトの表現はこの風情に似合っていると思います。(7:07)

 第3楽章「Menuett & Trio」。型通りというか、やや厳ついメヌエットも優しくデリケートに表現されて、前楽章とあまりイメージは変わらんのです。「トリオ」の対比もあまり強調しません。(3:17)終楽章「Prest」は一発ハジけてストレス発散したいところ・・・だけど、一線を越えずあくまで端正を旨として、バランスを失わぬのがテイトの個性なのでしょう。ティンパニもあくまで控え目。(4:13)

 交響曲第39番変ホ長調K.543は編成に珍しくオーボエを欠いて、第3楽章トリオのクラリネットが聴きどころ。第1楽章「Adagio; Allegro」は立派な、重厚な序奏が始まって、テイトはかなり頑張っていると思いますよ。(アーノンクールが念頭にあるのか、穏健に感じるけれど)主部に入ると溌剌として、ようやくテイトも本気出したか!序奏との対比も見事な、輝かしい躍動リズムであります。繰り返し有も嬉しい。ここの木管を聴くとイギリス室内管って、ジミな音色やなぁと感じます。(11:44)

 第2楽章「Andante con moto」は陰影に充ちて、符点のリズムも優美な緩徐楽章。短調の弦の旋律(第2主題)も劇的な対比、ファゴットから始まる木管の追いかけ絡み合いも美しさの極みでしょう。テイトはあくまで清潔、ニュアンスていねいだけど、そこを強調しない。(9:41)第3楽章「Menuetto Allegretto」が古典的メヌエット、このシンプルな世界はこどもの頃「どこが良いの?」と思っておりました。かなりゴツゴツしたリズムを強調して、快活であります。期待のクラリネットは愉悦に溢れて期待通り、第2クラリネットの低音アルペジオ、ホルンの間の手も奥行きを加えます。対比が優雅そのもの。(4:09)

 終楽章「Allegro」。ここでは珍しくやや速めのテンポ設定(のように感じられる)。溌剌とした熱気、勢いに木管が途中色付けして見事なフィナーレとなります。ここもちゃんと繰り返し有。(7:50)

 ・・・う〜ん。悪くないけどなぁ、このパターンで全集聴け!というのは少々ツラいかも。オーソドックス系だったら、ハンス・グラーフ/ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団のがあるでしょ?あれは文句なしだった記憶が・・・なにが違うのかな?

(2017年6月4日)

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written by wabisuke hayashi