Tartini「悪魔のトリル」(ヴァイオリン名曲集/ナタン・ミルシテイン(p))


SERAPHIM TOCE-8952 Beethoven

ロマンス(第2番)ヘ長調 作品50

Mozart

アダージョ ホ長調 K.261
ロンド ハ長調 K.373

ワルター・ススキンド/コンサート・アーツ管弦楽団

Tartini/Kreisler編

ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のソナタ」

Corelli

ヴァイオリン・ソナタ 作品5-12「ラ・フォリア」

Handel /Hubai編

ラルゲット

レオン・ポマース(p)

Vitali

シャコンヌ ト短調

アルトゥール・バルサム(p)

ナタン・ミルシテイン(v)

SERAPHIM TOCE-8952 録音年不明(1960年前後) 1,500円

 類似のライヴ録音が残っているので、得意のレパートリーだったのでしょう。1992年の発売となっており、当時はこの価格でも充分”廉価盤”でしたね。棚中長いお付き合いの一枚となり、「日常座右に・・・」という言葉が相応しい愛着ある一枚。選曲も演奏も最高。

 Beethoven のロマンス(第2番)ヘ長調は(恥ずかしながら)実演に参加した経験(わずか2曲のみ)のある数少ない作品であって、それこそ細部に至るまで馴染み深いもの。Beeやんにしては例外的に優しい、柔和で繊細な表情を持った名作です。気品と端正、背筋がぴん!と伸びた誠実演奏であります。続くMozart は、”無条件幸福”中でも極めつけのお気に入りであって、憧憬に充ちた世界が広がります。とくにロンドは走り出したいような、爽快な青空を連想させました。

 ミルシテインのヴァイオリンには”甘美”とか”蠱惑的”という言葉とは無縁の、誠実を感じさせる正確で真面目なもの。甘さ控え目のほうが飽きは来ないもんです。ススキンド(ジュスキント)はプラハ出身、アメリカで活躍した往年の名指揮者であって、1980年亡くなる年までシンシナティ交響楽団の主席であった由。コンサート・アーツ管弦楽団って、録音用のオケですか?1960年前後、米CAPITALの音源にしばしば登場しておりました。意外と上手いオケ。

 ここから先はピアノ伴奏となります。バロック系の(よく配慮された、いずれ馴染みの)作品ばかりだけれど、ミルシテインのヴァイオリンを堪能すべき選曲でしょう。「悪魔のトリル」は、しっかりとした細部曖昧さのないテクニックで表現されました。基本、端正生真面目路線なんだけど、ニュアンスの変化は微細であります。「ラ・フォリア」もお気に入りの作品であって、作品的にオリジナルの魅力にかなわぬが、劇的に振りたいところを抑制した美学が感じられます。

 Handel 「ラルゲット」って、出典はなんでしょう?ほの暗くも落ち着いた味わいある旋律が誠実に表現されました。Vitaliの「シャコンヌ」は、歴代名ヴァイオリニストのレパートリーになっていて、Bach にも負けぬ名作でしょう。最近の研究では偽作かも、との説有力らしい。かなり劇的、浪漫的な旋律であって、であるからこそヴァイリニストには適度な抑制が必要なんです。

 ワタシの刷り込みはフェリックス・アーヨでして、かりっと華やかな音色+チェロの通奏低音が効いておりました。ミルシテインは細部まで配慮の行き届いた、知的な表現で聴かせます。これのみモノラル録音。

written by wabisuke hayashi