アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(p)
「知られざる録音」(1939〜1941年)


ERMITAGE	ERM183-2ADD
Liszt

ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調(途中から)(1939年ジェノヴァ録音)

Grieg

叙情小曲集より「メランコリー 作品47の5」/「ゆりかごで 作品68の5」(1939年ミラノ録音)

Granados

アンダルーサ(1939年ミラノ録音)

Galuppi

プレスト 変ロ長調(1941年ミラノ録音)*

Chopin

スケルツォ第2番 変ホ長調 作品31/マズルカ イ短調第47番作品68の2/ワルツ変イ短調 作品69の1(1941年ミラノ録音)

Grieg

ピアノ協奏曲イ短調 作品16〜第1楽章の一部(1941年ジェノヴァ録音)

Debussy

映像第1集より「水の反映」(1941年ミラノ録音)

MARESCOTTI

幻想曲(1941年ミラノ録音)

Vivaldi

ピアノ協奏曲ロ短調より第3楽章「アレグロ」

Beethoven

ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」より第1楽章の一部(1941年ジェノヴァ録音)

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(p)/アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

ERMITAGE ERM183-2ADD スイス・ロマンド放送局による録音  880円

 おそらくは素っ気ない以下のコメントは1999年頃の執筆であります。その後、ミケランジェリの怪しげライヴは激安10枚2巻で集成2005年再発売され、ERMITAGE ERM211-2 1985年ブレゲンツ・ライヴ録音のほうはそちらに収録されております。しかし、「知られざる録音」(1939〜1941年)のほうは不完全な収録だったせいか、(すべては)復活していないはず〜もっとも、最近熱心に新譜を探しませんので、とっくに世間に出ているのかも。*は10枚組に収録される/この廃盤音源にも一部収録されている?ああ、NAXOSにもありますね)

 ミケランジェリは1920年の生まれだから、19〜21歳の録音。天才です。後年の濃い味わいはここでほとんど完成されている驚き。Lisztの協奏曲は第1楽章前半が消失しているのが残念だけれど、キラキラと華やか、輝かしくも気高いスケールを誇って、ありがちな技巧ひけらかし演奏とは桁が違う。揺れ動き、濃厚に歌い、走り、豪快、芯が太いのに気品漂う緻密なピアノ。やがてラストに向け熱狂が待っております。聴衆は演奏が終わるのを待ちきれずに大喝采(拍手歓声もしっかり収録されます)。第2/3楽章が全部残っていることに感謝いたしましょう。アンセルメも快調です。戦前太古録音も全然気にならない(このCD中すべて)。

 Griegの静謐なる雄弁、哀愁、郷愁。ギター作品としても有名な「アンダルーサ」(祈り)は、ちょいと味付け濃すぎか?表情の変化は入念を極めます。Galuppiの平明で明るい表情はヴィヴィッドそのもの。Mozart と並んであまり似合わないと(個人的に)感じるChopin は、輝かしい表情とスケール(スケルツォ)、リズム感のたしかなこと(マズルカ)、粋な佇まい(ワルツ/これが一番針音盛大)が(ここでは)けっこうエエ感じ。

 Grieg協奏曲は第1楽章途中わずか3:23の収録。嗚呼、もったいない。吐息が聞こえてきそうな繊細豪快なる存在感たっぷり。十八番Debussyの幻想に文句など付けようもなし。MARESCOTTI(1902-1995)はあまり聴く機会のない作品でして、超絶技巧を駆使して思いっきり華やかなる作品でした。惚れ惚れするようなテクニックの冴え!Vivaldiはヴァイオリン協奏曲の編曲だろうが、馴染みの旋律ながら原曲を思い出せません。劇的でエエ味わいです。現代演奏会のレパートリーで通用する魅力有。凄い緊張感とスケール。

 ラスト、「皇帝」はわずか2:16の収録(第1楽章の半ば)。Beeやんのピアノ協奏曲は自分の嗜好から外れ作品最右翼だけれど、ミケランジェリの華麗なる世界ならほとんど問題なく作品に入れ込めます。これも彼の十八番で、ほかに良い音質状態の録音はあるけれど、わずかな断片録音からでもキラキラ輝くような世界が広がりました。

(2010年2月12日)

ERMITAGE ERM211-2 Chopin

幻想曲ヘ長調 作品49
スケルツォ第2番 変ロ短調 作品31
バラード第1番ト短調 作品23
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調 作品22
マズルカ ロ短調 作品33の4、 ト短調 作品67の2

ミケランジェリ(p)

ERMITAGE ERM211-2 1985年ブレゲンツ・ライヴ録音

 時代の流れ、と云ってしまえばそれまででしょうが「大物」が次々亡くなってしまいます。
 ミケランジェリをとくに気に入っていたわけではありませんが、その個性は得難いものだったと思うのです。濃厚な密度の高い音色。ERMITGEでたまたま戦前の随分旧い録音と、亡くなる少し前のCDが手に入りました。戦前の録音は890円、1985年の録音は個人輸入で2.98ドル(送料別)だったはず。

 この人は、若いときから晩年まで変わらなかった、というのが結論。Chopin のスケルツォ第2番がダブっていますが、その集中力において若いときのほうが感動させます。まだ19歳ですからね、凄いですね。
 Lisztの協奏曲は1楽章途中からの録音ながら、後半ほど白熱の度合いを高めて興奮させます。「皇帝」はわずか2分少々の断片ですが、驚くほど輝かしく、きらびやか。Galuppiのような珍しいレパートリーは、じつは若い頃からのレパートリーだった納得。どれも硬質で煌めくような音色、当時から堂々としたグランド・マナーを身につけていたことがわかります。「アンダルーサ」なんておもしろいレパートリー。

 音の状態は、想像していた水準よりずっと良心的で、聴きやすいもの。スイス・ロマンド放送の音源だそう。70分間楽しませてくれる、予想外の拾いものです。


 最晩年のChopin には、いろいろ考えさせられてしまいました。

 音質的には、この種のライヴとしては出色ですが、遠くから鳴っているような散漫さが気になります。上記の旧いモノラル録音とは比較にならないほどの音質ですが、戦前のほうが集中できる・・・・・というのは、私の先入観?

 いずれも重量感があって、キマッている演奏と思うのですが、Chopin に必須の軽快さ、爽やかさはない。「アンダンテ〜」はとても好きな曲ですが、アンダンテ・スピアナートの安らぎと、ポロネーズの開放感との対比は表現されません。どの部分も立派で重くて・・・というか濃くて、細部にこだわり過ぎた演奏。

 へんなChopin と感じるのは私の狭量のせいでしょうか。ルービンシュタインで震えるほどの感動をもらった曲なのに、このCDには最後まで違和感がありました。
 この人はDebussyやBeethoven が立派な演奏だと思います。ハイドンの協奏曲も評価の高いものですが、ワタシはこのChopin とほぼ同じ印象で、好きになれませんでした。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi