Bach 「シャコンヌ」/Scarlatti ソナタ集ほか
(アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ)


ミケランジェリ10枚組(membran 223042 321 aura?)1,590円入手
Bach

無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004より「シャコンヌ」(Busoni編1973年)
イタリア協奏曲ヘ長調BWV971(1943年)

Scarlatti

ソナタ集7曲(1943/1952/1969年)
ニ長調K.96/ニ長調K.29/ハ短調K.11/ハ長調K.159/イ長調K.322/ニ短調K.9/ロ短調K.27

Galuppi

プレスト 変ロ長調/ソナタ ハ長調(1941/1962年)

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(p)

membran 2233042-CD7 10枚組1,590円にて購入したウチの一枚

 リヒテルと並んでもっとも敬愛するお気に入りピアニストであり、両者とも(愛しの)Mozart があまり似合わないところも共通しております。正確な技巧を前提として、グラマラスで中低音に艶のあるピアノは個性的かつ魅力いっぱい!正規録音は少ない人だけれど、怪しげ非・正規録音はたくさん存在して、こうして安価で出現して下さったことに感謝いたしましょう。2005年購入、とのレシートが残っておりました。「シャコンヌ」の音質はかなり良好だけれど、他は少々時代を感じさせます。でも、音楽を堪能するに不足はない。音質は玉石混淆だけれど、演奏の質に当たり外れはないんです。

 「シャコンヌ」はいくらでも浪漫に煽ることが可能な作品(事実、Busoniがそう仕上げたんでしょう)だけれど、冷静かつ深遠なる歩みが、ゆったり広がり作って徒に走らない。原曲はヴァイオリン一挺にて永遠なる宇宙の広がりを表現したが、ピアノ版は人間の苦悩懊悩が表出されていっそう劇的であります。テンポの揺れは的確自然であり、入念なる細部描き込みは洗練が極まってキラキラ高貴な雰囲気を漂わせます。凄い。聴き手の興奮の極致へと誘います。会場空気の変化をはっきり読み取ること可能。

 イタリア協奏曲には落ち着いた味わい+ノリがあって、世評高いグレン・グールドの快速演奏よりお気に入りであります。「シャコンヌ」とは30年の収録差があるんだけれど、ほとんど(音質以外の)表現的差異は感じられない完成度。わずか23歳でっせ。豊かな音色の幅、やや粘着質なリズム(軽快さを失わない)は説得力充分、洗練された味わいであります。戦前の録音にしては、ずいぶんと聴きやすい音質。

 Scarlattiのソナタ集はあちこちの音源を寄せ集めて7曲としたもの。けっして叩いたり、ヒステリックなタッチに至らない。しっとり瑞々しく豊かな愉悦に溢れ、端正なノリに充ちて美しい珠玉の作品、そして演奏ばかり。ニ長調K.29(1952年)は目眩く快速超絶技巧であります。ハ短調K.11(1969年)に於けるリズム感と、しっとりとした情感の両立・・・

 Galuppiにも独特の繊細なる気品がある・・・ミケランジェリが取り上げなかったら、存在さえ知らぬ作品であったはず。「プレスト 変ロ長調」は細かい旋律がハズむように疾走し、ソナタ ハ長調は、平易で優しい安寧が広がりました。まるで子守歌のように、ゆったりシンプルで快い陶酔の第1楽章「アンダンテ」、夢見るよう華やかな第2楽章「アレグロ」、いっそうテンポを上げ名残惜しく花火が燃え尽きるような最終楽章「アレグロ・アッサイ」・・・きっと当時の楽器で演奏すればもっと素朴で、別な味わいに仕上がるのでしょう。節度を前提に、浪漫の香りが漂いました。

(2010年1月29日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲

written by wabisuke hayashi