Mendelssohn 交響曲第4番イ長調「イタリア」他
(イーゴリ・マルケヴィッチ/日本フィル)


これはLPデザイン Mendelssohn

交響曲第4番イ長調「イタリア」*

Tchaikovsky

序曲「1812年」
バレエ組曲「くるみ割り人形」(モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団1972年)

Schubert

イタリア風序曲二長調D.590/歌劇「アルフォンソとエストレッラ」序曲*

イーゴリ・マルケヴィッチ/日本フィル*(1968年)

SCRIBENDUM/SC 014

 小学生時代から音楽拝聴が趣味(ジャンル問わず)LP時代もCD初期も価格は高くて贅沢品、若く貧しかった頃は日々FM放送をエア・チェックしておりました(懐かしいカセット・テープにて)。やがて幾星霜、お仕事引退世代に至ったネット時代、一生掛かっても聴ききれぬ物量の音源データを貯め込んで、日々選曲に悩む日が来るとは・・・毎週一回の【♪ KechiKechi Classics ♪】更新はせめて、真摯な音楽へ初心を忘れぬようにするため。(要らぬいつものまくらでした)油断すると昔馴染ばかり聴いてしまうから、珍しい作品、できるだけ現役、若い人の音楽を聴きたいと思って結果、こんな懐かしい音源と出会いました。

 日本フィルの素晴らしい実力は渡邉暁雄さんの記録で知っておりました。Igor Markevitch(1912ー1983)はウクライナ出身の往年の名指揮者。悪名高きコンサートホール・レーベルの録音はいかがでしょうか。一点の曇もない晴れやかな青空を連想させる「イタリア」第1楽章「Allegro vivace - Piu animato poco a poco(より少し活き活きと速く)」始まりました。

 軽快なリズムの刻み、それが暗転していく風情はMozartによう似ております。やや奥行き不足、響きは薄いけれど音質まずまず、オーケストラの技量に不足を感じさせぬ躍動、一気呵成に聴かせてくださって好調な開始でした。(7:47)第2楽章「Andante con moto」は淡々として寂しげな緩徐楽章。シンプルに刻む低弦のリズムもマルケヴィッチらしい几帳面なものでしょう。(5:04)第3楽章「Con moto moderato」は優雅なメヌエット、浪漫派だからHaydn風な素朴さに非ず、中間のホルン〜木管の呼応、ティンパニ、トランペットを伴う弦が暗転して陰影を作って素敵です。管楽器も上手いもんでっせ。(6:06)

 第4楽章「Saltarello. Presto」”サルタレロ”って、活発で陽気なダンス、速い三拍子とのこと。ここでは陽気に非ず、緊張感のあるイ短調、弦も木管も細かいリズムを刻んでオーケストラの技量が問われるところ、マルケヴィッチの統率力に疑念はありません。熱気に充ちた誠実な響き、といったところ。(6:07)

 オーケストラは変わってモンテカルロの歌劇場(当時はマルケヴィッチがシェフ。現モンテカルロ・フィル/山田和樹が音楽監督)「1812年」はなぜか日本録音より音質が落ちて、例の懐かしいコンサート・ホール・レーベルの焦点の甘い、ぼんやりとしたもの。サウンドには色気があって、パワフルさが加わっております。アンサンブルは日本フィルのほうが上なんじゃないの?金管の足並みは揃わず、荒く、やや調子外れっぽい(あまり上手くはない)。この作品のキモである”大砲炸裂!”は場違いなボワンと大太鼓?風に違和感有。(15:04)「くるみ割り人形」も大味な音質、しかも前曲より音量レベルが上がっております。珠玉の旋律作品はリズムのキレもよろしくノリノリ、ヴィヴィッド+メルヘンな雰囲気満載であります。但し、さほどに上手いオーケストラには聴こえない。ラスト「花のワルツ」は賑々しく華やかでした。

 残りは珍しいSchubertの作品、CD2枚目に序曲ホ短調が押し出されました。いずれ初耳作品かも。イタリア風序曲(7:49)は序曲+主部+ストレッタ(緊迫感を保って)、Rossiniのオペラ序曲風(ほとんどクリソツ風情)。そしてロザムンデに流用されたもの。歌劇「アルフォンソとエストレッラ」序曲(6:45)は劇的な、なにか事件が始まりそうな予感を孕んだ序奏、やがて快活な表情を見せてテンポを上げるもの。ここでの演奏も「イタリア」同様指揮者の指示に反応のよろしいものでした。

(2018年7月8日)

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written by wabisuke hayashi