Schumann「おとぎの絵本」〜浪漫派の室内楽


ART(edel) 0029252ART 2枚組1,375円で購入 Schubert

幻想曲ハ長調 作品159(遺作)D934
ヴァイオリンとピアノのための2重奏曲 イ長調 作品162

リカルド・オドノポゾフ(v)/エドゥアルド・ムラツェク(p)((p)1972)

Mendelssohn

ヴィオラ・ソナタ ハ短調

アルフレート・リプカ(va)/ユッタ・チャプスキ(p)((p)1983)

以上一枚目

Schumann

おとぎの絵本 作品113

ディートマール・ハルマン(va)/ヴェーバージンケ(p)(1976年録音)

Schumann

ピアノとチェロのための民謡風5つの小品 作品102

ユルンヤーコブ・ティム(vc)/ヴェーバージンケ(p)(1976年録音)*このCDには演奏者クレジットなし

Brahms

ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 作品100

マンフレッド・シェルツァー(v)/ヴェーバージンケ(p)((p)1964)

Brahms

ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 作品108

グスタフ・シュマール(v)/コーツ(p)((p)1972年)

以上2枚目

ART(edel) 0029252ART 2枚組1,375円にて(いまは亡き大阪「ワルツ堂」にて)購入

 このサイト開設初期(1999年頃?)から、こんな渋い音楽を聴いていたんですね。寄せ集め作品/演奏家ではあるが。現在ならこんな価格、高くてなかなか手が伸びません。息長く聴いていれば、それは充分価値に似合うものなのでしょう。浪漫派のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、各々ソロをフューチャーした配慮ある収録の2枚組也。

 オドノポゾフは戦前のウィーン・フィルのコンマスであるとの由。録音当時57歳辺りだからまだまだ現役。ワタシ、このSchubert 「幻想曲ハ長調」が大好きで、ピアノの低音中心のトレモロから、ヴァイオリンが〜まるで泉が湧き出るように/深い眠りから覚めるように〜そっと立ち上ってくると、もうムズムズ悦びを隠しきれない。まったりと豊かで、暖かい。音の角が丸いんです。技術的に不足はないが、鋭利な表現ではないから”やや味わい系”でしょうか。切りつめた緊張感とは無縁であり、不器用で生真面目な歌。じんわりと感興が高まって、やがて気持ちの良い大団円を迎えました。

 イ長調のソナタも同様で声高に叫ばない、ちょっと古風なオールド・スタイル、朗々と往年の美声で・・・といった安らぎがあります。牧歌的なユートピア物語を聴いているような、暖かい気持ちに溢れました。この作品もお気に入り。エドゥアルド・ムラツェクのピアノは、特筆すべき表現やら美音ではないが、安定して細部配慮のあるもの。音質良好。ここまでで43分超え、LP収録なら充分一枚分だけれど+Mendelssohn ヴィオラ・ソナタ ハ短調収録(24分)とはサービスよろしいでしょう。珍しい選曲に感謝。

 アルフレート・リプカ(va)って、ライプツィヒ放送響の人なのか?くすんでジミ・内省的なヴィオラの個性爆発!劇的な旋律であり、ソロは非常に技巧的であって、ピアノの大活躍(むしろ主役か)も特筆されるべきでしょう。ユッタ・チャプスキ(p)は明快なタッチでヴィオラと絡み合います。いつものMendelssohnらしからぬ、ほの暗い起伏陰影のある旋律が素敵でした。終楽章は、スケール大きな詠嘆の変奏曲となります。

 ヴィオラの作品続きます。ソロはディートマール・ハルマンに交代。表題の「おとぎの絵本」は、第1曲「速くなく」、第2曲「生き生きと」、第3曲「せいて」、第4曲「ゆっくりと、メランコリックな表情をもって」から成っていて、冒頭第1曲から雄弁な歌に溢れた濃厚甘美な(そして暗く、重苦しい)旋律が堪能できます。第2曲は躍動するリズムがあるけれど、ヴィオラが絶叫することはありえなくて主役はピアノに思えます。第3曲は内にこもった焦燥が感じられて、これがヴィオラの感情表現なのでしょう。第4曲に纏綿とした深い歌が聴かれました。ハルマン(va)はドレスデンの人でしょうか。名手ヴェーバージンケ(p)はとても安定しております。

 ユルンヤーコブ・ティム(va)は2006年に来日しておりますね。「民謡風5つの小品」は題名通りちょっと洗練されない、ほの暗い、そして剽軽な味わいの旋律リズム続きます。静かな部分でも、喜ばしい部分(第4曲「急ぎすぎずに」)でも抑制が効いていて、真面目でしっとり味わい有。第5曲「力強く、はっきりと」は少々強面な印象でしょうか。

 残り、ヴァイオリン・ソナタ第2/3番は著名な作品となります。マンフレッド・シェルツァー(v)はドレスデンのウェーバー音楽院の先生らしい。線が細く、神経質な印象か。相変わらずヴェーバージンケ(p)は配慮ある繊細な味わいで支えます。グスタフ・シュマール(v)はネット検索すると、ちゃんとソナタ第1/2番+FAEソナタよりスケルツォの録音が存在します。(同じくギュンター・コーツ(p)/BerlinClassics)ややオールド・スタイル、ジミな音色だけれど、浪漫な劇性に溢れました。Brahms の味わいに相応しい。

 散々ヴィオラの中低音+チェロを聴いた後なので、耳がヴァイオリンの高音に慣れるのに時間が掛かりました。

(2008年5月2日)
 

 旧東ドイツ系の演奏者を一堂に集めた不思議なCD。演奏はいずれも立派。ベルリン・クラシックス系の廉価盤レーベルであるARTからの発売で、コッホのブランデンブルクは2枚1,000円だったのに、そのあとそのお店に行ったら1,375円に上がっていました。それでも、ま、安い。音質もよろしい。

 え〜、その道に詳しい人に質問。戦前にVPOのコンマスを務めたオト゛ノポゾフ(このCD表記リカルド。たしかリヒャルトだったはずですよね)その人なのでしょうか。1970年代に録音することはありえますか?別人でしょうか。

メールにて情報を得ました。オドノポゾフはアルゼンチンの人なので、リカルドが正しい、とのこと。コンサートホール・レーベルで録音もあったそうです。つまり、その人、であるらしい。

 演奏者は在庫の寄せ集めですが、選曲的には整合性があって、名付けて「ロマンティックな室内楽」。すべてドイツ・オーストリアのピアノと弦楽器による室内楽です。メンデルスゾーンのヴィオラ・ソナタは初耳でした。この中の何曲かは通常価格で国内盤も出ていましたね。

 だいたいシューベルト・シューマン辺りの室内楽は好きですね。シューベルトのヴァイオリンのための作品集は、VOXでパウクの演奏が格安で全曲揃えられますし、NAXOSにはカンのソナチネ3曲もあります。お気に入りなんですよ。
 「幻想曲」は、「アヴェ・マリア」に似た敬虔な旋律の名曲。
 「デュオ」は、単純なピアノの音形に乗ってそっと歌い出すヴァイオリンが、やがて全開の華やかさに。オドノポゾフのヴァイオリンは、ちょっと線が細くて、切れる感じのテクニックではないのですが、透明で素直な音色です。気のせいか、ちょっと揺れるヴィヴラートなどご年輩の方ではないかと想像するんですけど。

 メンデルスゾーンは、劇的な調性であるハ短調の24分くらいの曲。ほの暗いヴィオラともに、ピアノも活躍する美しい曲です。とくに快活な第2楽章メヌエットが気に入りました。最終楽章の変奏曲も切ない。リプカというヴィオリストは、華やかさはありませんがしっとりとした味わいは充分。

 シューマンの「おとぎの絵本」は、意外と知られていないんじゃないかなぁ。FM放送で2本ほど録音していていましたが、CDは初めてでした。次の曲も同様ですが、気紛れで自由、甘いいつものシューマンらしい旋律で、充分楽しめます。ハルマンのヴィオラはリプカより個性的で説得力あり。ティムのチェロも朗々として実力充分。(このCDにティムのクレジットは抜けている)

 有名なブラームスのヴァイオリン・ソナタ。シェルツァーのヴァイオリンは、ちょっと音が薄くて、力んだときに音が少々つぶれるのが気になります。
 シュマールのほうは、しっとりとした音色が素敵で、ブラームスらしいロマンティックな味わいが深い演奏です。かなり劇的でもあります。

 Berlin Classics系のレーベルは、このART、CCC、なんかが安くてけっこう狙い目ですね。価格は様々ですが、もちろん私は@800以下狙いで頑張ってしました。(もう転居で買えなくなるかも)

(1999年頃の執筆か)


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written by wabisuke hayashi