Mahler 交響曲第5番 嬰ハ短調
(レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィル1987年)


DG UCCG50015 Mahler

交響曲第5番 嬰ハ短調

レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー

DG UCCG50015 1987年録音

 1963年録音を聴いたのが2007年(もう記憶も曖昧なほどしばらく聴いていない)2020年2月には1972年ライヴを聴いておりました。このウィーン・フィルとの録音はライヴとは云え、録音用に万全のマイクセッティング、ゲネプロから本番まで幾度かのセッションを編集した録音でしょう(拍手や各種ノイズもカット)。オーディオ専門筋の評価は知らぬけれど、音質は満足できる水準と思います。

 第1楽章「In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt.(正確な速さで。厳粛に。葬列のように)」冒頭のトランペットによる葬送行進曲先頭に、臨場感溢れる音質に金管の表情豊かに存在感はクリアにリアル。パワフルかつ微に入り細を穿つ入魂濃厚、入念な重い足取りはどんどん遅くなって、ほとんど止まりそうなほど。その途方に暮れた骨太重厚表現に圧倒されました。(14:53)

 第2楽章「Sturmisch bewegt. Mit grosster Vehemenz. (嵐のような荒々しい動きをもって。最大の激烈さをもって)」はMahlerの指示通りの激烈さ、ゴリゴリとしたコントラバスと金管の掛け合い、切れ味と切迫感と陰影の凄さ。谷間(第2主題)の静謐さ、力の抜き方、テンポの有機的な変化、雄弁な高揚への対比、ドラの不気味さ。ラストに向けてのコラールも輝かしく、壮麗な輝きが待っておりました。(15:06)

 第3楽章「Scherzo.Kraftig, nicht zu schnell.(力強く、速すぎずに)」はホルンの活躍が聴きもの。相変わらず粘着質に重い足取り、金管の饗宴はコクがあり彫が深く、荒々しくも雄大。テンション高いけれど彼にしてはやや抑制気味に抜いたところでしょう。レントラー風に落ち着いて優雅な風情、あわてぬ名残惜しいテンポの揺れもステキな対照でした。(19:07)

 第4楽章「Adagietto. Sehr langsam. (アダージェット 非常に遅く)」はこの作品一番人気。ウィーン・フィルの弦は腕の見せ所でしょう。そっと息を潜めてデリケート、幻想的なほどの陶酔に揺れ動いて、時にほとんど止まりそうに静寂。ラスト崩れ落ちるようなダメ押しに、これ以上のめくるめく官能を感じたことはめったにありません。(11:13)

 第5楽章「Rondo-Finale. Allegro giocoso(楽し気に)」フィナーレは意外と肩の力が抜けて軽やか。表情も晴れやかに徐々に熱を高めて爽やかなフィナーレを迎えました。大曲をラストまで体力を落とさず、たっぷり骨太な演奏を堪能いたしました。(15:00)

(2023年12月2日)

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written by wabisuke hayashi