Mahler 交響曲第4番ト長調
(パウル・クレツキ/フィルハーモニア管弦楽団/ルーズ(s))


Disky Communicatin(D Classics) HR702922(BX 702932) Mahler

交響曲第4番ト長調(1957年)
交響曲第5番 嬰ハ短調より「アダージエット」(1959年)

パウル・クレツキ/フィルハーモニア管弦楽団/エミー・ルーズ(s)

Disky Communicatin(D Classics) HR702922(BX 702932)  3枚組2,000円で購入したウチの一枚

 このサイト開設当初から掲載していた音源。長いお付き合いのCDですな。現在ではちょっと忘れ去られた指揮者、音源でしょうか。  

第4番はフィルハーモニア管に変わって、オーケストラの響きの違いが楽しめます。つまり軽快で、歯切れよい。アンサンブルの精度は極上、爽やかで現代的。メルヘンな雰囲気を過度に強調することなく、静謐かつ繊細で透明、テンポの恣意的な揺れもほとんどなく、オーソドックスで美しい。(メンゲルベルクと比較すると、テンポの考え方に愕然とする思い。「考え方」であって、美しさの違いではない)

 クールすぎて、アツき情熱、とか、強烈な入れ込み方向とはかなり異なるが、これはこれでひとつの見識。ルーズ(s)の歌声は、クレツキの考えに沿ったもの(つまり、重過ぎたり情念を感じさせたりしない)だけれど、より知的で軽快さも求めたいもの。(メール情報によると、ホルンはブレイン、とのこと)

 第5番「アダージエット」は、全曲録音の予定があったのかは不明。細部まで心のこもった端正なアンサンブル。この曲特有の官能性はあえて強調されず、ストレートな表現が優秀な弦とあいまって、意外と新鮮。

とのコメント有。第1番の余白に第1/2楽章、次に第3/4楽章+「アダージエット」という泣き別れ収録となります。(更にテンシュテットの第10番「アダージョ」収録+という無定見さ)

 いくら長くても平気!大好きなMahler だけれど、第4番のみ少々つかみどころがないというか、たしかな印象が持てずにおりました。もともと(Mahler にしては)小ぶりで編成も小さめ、おとなしい作品ですから。門外漢の頓珍漢コメントかもしれないが、ここ最近EMI録音への印象を変えておりまして、自然で聴き疲れのしないサウンドだな、と。キラキラしないし、強烈な分離や迫力、奥行き強調には欠けるし、中低音が薄い感じはあるけれど、それなりの音量で聴けばニュアンス豊かな細部も感じること可能・・・かも。少なくとも、この1957年録音に不足はない。

 結論的に上記、大昔のコメント印象とほぼ変わらない、ということです。ひとことで要約すると”クール!”、恐るべき精緻ンサンブルで、バーンスタインやらテンシュテットのアツき世界とは対極に位置する演奏か。ショルティのような開放的、体育会的ノリとも異なる。素朴でもない。フィルハーモニア管弦楽団は基本清涼なサウンドで、濃密重厚サウンドではないし、どこを聴いても静謐で知的に抑制された集中力が広がります。ただ一ヶ所、第3楽章「静かに、少しゆるやかに(Ruhevoll, poco adagio)」ラスト付近の大爆発は決然として、オーケストラの底力を発揮いたします。

 全体に、いわゆる”メルヘン”と受け取ることも可能でしょう。でも、ほんわか曖昧なる夢見心地ではないんです。かなり精密緻密に、細部くっきりと正確に表現して情感の表出はほとんどない・・・が、作品の持ち味をストレートに生かす解釈ということでしょう。この時期、フィルハーモニア管弦楽団は絶好調ですね。弦がすっきりとして清涼だし、ホルンは彼(か)のデニス・ブレイン(第3楽章にて妙技が聴けます。第4楽章冒頭のクラリネットを先頭に、木管の絡み合いは痺れるほど美しい。そしてあくまで静謐・・・

 エミー・ルーズ(s)については”より知的で軽快さも求めたい”と(当時)辛口コメントを残しているが、現在の耳ではほとんど不満はない。彼女の経歴はよくわからないが、1950年代独逸での録音がいくつか残っております。1960年代ではバーンスタインの「薔薇の騎士」に登場(マリアンネ)している。可愛らしく、浮き立つような歌声であります。

 交響曲第5番「アダージエット」は2年後の録音であり、音質的にはもう少々メリハリはっきりとして陰影がはっきりとした状態になっておりました。これも基本”精緻精密クール”方面だけれど、作品の個性かな?もっと情感の揺れ動きがはっきりと感じられる演奏になっております。ま、バーンスタイン辺りを期待すると、全然違うんだけれど。全曲録音の予定はなかったのか、残念。

(2009年10月23日)

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written by wabisuke hayashi