Mahler 交響曲第10番「アダージョ」「プルガトリオ(煉獄)」
(ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団)


Mahler

交響曲第10番 嬰ヘ短調「アダージョ」「プルガトリオ(煉獄)」(1958年)

Walton

管弦楽のためのパルティータ(1959年)

Stravinsky

組曲「火の鳥」(1919年版)(1961年)

ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団

SONY SRCR 2553    580円(中古)で購入

 Brahms 交響曲第4番ホ短調にはとことん痺れました。名付けて「正しいBrahms 」〜ジョージ・セルの実力には、こうしてCDを通してでも確認できるが、ワタシは中学3年生の時にナマで聴いております!というのが自慢か。先日、中古屋さんで「ん?」と見つけたこの一枚。ここで再び「正しきMahler 」に出会おうとは!

 Mahler は大好きで、遣る瀬ないセクシーかつ甘美な旋律がたまらぬ魅力。余裕あるオケ、自然体、かつ薄味、隠し味やら裏地に凝ったような演奏(ハイティンク?クーベリック?)が好み〜なのは基本。いえいえバーンスタインによる「愛と激情の果て」みたいのも悪くないし、バルビローリの「泣きの涙」には、聴き手も袂を濡らします。カラヤンの「とことんとろ〜り激甘」やら、インバルの妙に根暗で隠微な世界も、それはそれでひとつの世界。

 でもね、セル爺さんのは、あくまで「清き正しきMahler 」でっせ。おお、そうだったのか!と発見横溢・怒濤の驚愕連続技。第10番は未完成作品だし、作曲者自身による部分のみ録音したのはセルの見識と思います。(Kr'enek版との説もありました )未完成作品だからこそ、Mahler がそのまま元気だったら、もっといろいろ手を加えたかも知れない〜録音の相対的少なさも含めて、なかなか混迷深い作品でしょうか。そこにジョージ・セルが登場。これが答えだ!と。

 真っ当に、ていねいに、あれこれ逡巡せず、ストレートに表現される音楽。清潔、かつ明快なるフレージング。そこから生まれる抜群の説得力。各パートの技量になんの問題もない〜というか非常に正確に、美しく演奏されるが、それさえ聴き手に気付かせない。アンサンブルの集中力は、「縦の線が合っている」〜ことさえ感じさせない水準に達していて、しかも息苦しさ、堅苦しさがない。まさに、最盛期のクリーヴランド管弦楽団の完成された世界がここに。たしかに。

 「正しきMahler 」とは〜音楽の美しさとはなにか。例えば濡れたような弦のすすり泣き、痺れるような甘いヴィヴラートのフルート、森の奥深くから響き伝わり渡るホルン、地鳴りするコントラバスの濃い存在感、ああ、チカラあるオケってなんという説得力!例えばそんな(別な)演奏を聴いたあとに、このCDを聴いたときに感じる「正しさ」への確信。納得。説得。

 個別のパートが突出しない。めだたない。管弦楽はトータルとしての完成されたひとつの楽器であり、その凄まじき説得力。存在感。考え抜かれ、磨き抜かれたバランス。聴き手は集中力を強要され、非常に地味な、渋い、美の発見を求められます。「混迷深い作品」は、迷路をを抜けだし、明快な姿を現しました。これほどわかりやすい演奏はない・・・・。


   英国紳士界に於いて、ピカイチの暴力的迫力を誇るWalton も、いやはや、なんとわかりやすい。曖昧さ皆無。スッパリと気持ちよい演奏であり、ちょっとねぇ、そんじゅそこらのユルフン・オケではこうは楽しめない曲でしょう。3楽章約15分間の、快い緊張感の強要。なんやら喜びに溢れていませんか、この世界。

 有名なる組曲「火の鳥」〜不気味なるイントロダクションのコントラバスが、これほど正確なリズムを刻んでいることを発見しました。これは「火の鳥の踊り」〜「ヴァリアシオン」でも、まったく同じ印象。正確、正しい演奏なんです。こう演奏すれば、音楽はちゃ〜んと真価を発揮するんだよ、とでも言いたげに。

 「ホロヴォード」って、ちょっとテンポを揺らせたり、詠嘆の表情を作りたくなるもんだけど、ストレートでちゃんとした説得力がある。これに近い印象はブーレーズ/BBC響の1911年版組曲くらいかな? 「カスチェイ王の踊り」は凶暴じゃなくて、ずいぶんと知的だし、整然とした印象もある。(ここは正直不満ね)でもラスト、テンポ・アップのアンサンブルに唖然としますが。

 「子守歌」は、ちゃんと歌も知ってるぜ、といった貫禄有。このファゴットは演奏者のお手本じゃないかな。「終曲」は、ピタリと無駄なく盛り上がって満足させてくれます。それにしても、全曲、ぜ〜んぶ録音がとてもよろしい。(2003年5月16日)


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written by wabisuke hayashi