Mahler 交響曲第2番ハ短調「復活」
(ズービン・メータ/ウィーン・フィルハーモニー1975年録音)


ECHO INDUSTRY  CC-1017/18  2枚組 2,000円で購入 Mahler

交響曲第2番ハ短調「復活」

ズービン・メータ/ウィーン・フィルハーモニー/ウィーン国立歌劇場管弦楽団/イレアナ・コトルバス(s)/クリスタ・ルートヴィヒ(ms)

ECHO INDUSTRY CC-1017/18 英DECCA1975年録音  2枚組 2,000円で購入

 1990年代前半に購入したCDであって、ずいぶんと処分した駅売海賊盤だけれど棚中に(しぶとく)生き残ったもの。長いお付き合いとなります。21世紀は廉価盤の時代、などと力まんでも、現在なら一枚物で、これよりずっと安い。

若きメータ39歳の録音。得意の曲らしく、後2回の録音有。これワタシにとっての実質上「復活」との出会いで、DECCA録音は極上だし、オーケストラは上手くて美しいし、で、10年前は喜んでいたけれど、いま聴くと呼吸が浅く、尻が軽い。完成度は高いが、まだ成熟が足りない。懊悩・苦悩が感じられない。これはこれで「若さの勢い」的魅力かな?スケルツォ楽章はすっぱり気持ちヨロシ。声楽ソロは抜群の雰囲気。終楽章はやや上滑りか?何故かシミジミと盛り上がってくれない。(2002年7月14日)
とは7年前の自らの辛口コメント(とくに終楽章)であります。

 先の引用先ユーザーレビューでも評価極めて高い。こういったマルチ・マイク系鮮明なる(英DECCA)録音は、Mahler に極めて効果的なんです。(ワタシの耳ではこの駅売海賊盤でも充分なる威力)”呼吸が浅く、尻が軽い。完成度は高いが、まだ成熟が足りない”というのは若さの勢いで充分補いをつけて余りある魅力、と現在の自分ならそう感じます。”懊悩・苦悩が感じられない”〜これも嗜好の世界でして、明るく前向きな情熱はこれでひとつの完成であったと思います。その後の再(々)録音には失われてしまった世界(ずばりユルい!感じ)。

 やや早めのテンポ、前のめり急いて落ち着かない、シミジミとした練り上げられた響きではなく、細部仕上げがやや粗い・・・それでも、これは賞賛の対象としてよろしい青春の記録でしょう。第1楽章は尋常ならざる緊張感で開始し、第2楽章「アンダンテ・モデラート」は少々素っ気ない感じ。第3楽章「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」の冒頭ティンパニの迫力は衝撃的だし、リズムのノリが溌剌としてこれが若さの魅力なのでしょう。

 「原光」(おお、紅の小さき薔薇よ)に於けるルートヴィヒの深淵さ(終楽章も同様だけれど)。終楽章前半(「荒野に叫ぶ者」)のウィーン・フィルは若きメータに煽られ、走り、高らかに歌い、これほどアツく華やかに爆発することは希でしょう。第3楽章と並んでスケルツォ風リズムがはっきりしているところでの成果に文句なし。オーケストラ・コントロール完璧、テンポの変化も的確。

 さて、万感迫る最終版声楽合流場面〜数年前は”やや上滑りか?何故かシミジミと盛り上がってくれない”とのコメントは、どの演奏との比較が念頭にあったのでしょうか(記憶なし)。久々の聴取では”何故かシミジミと”とは思わぬが、”やや上滑り”というか表層に流れ、さっぱりとした表現に過ぎる感触はありましたね。しかし、”煽られ、走り、高らかに歌い、これほどアツく華やかに爆発”という若さの表現に魅力が足りないわけでもない。声楽含め、宇宙的広がり迄は行かぬが。

 80分に及ぶ長丁場を、最後まで弛緩させず、一気に聴かせる集中力を賞賛いたしましょう。思えば良い時代だった。新しい録音テクノロジーが開発され、若手が意欲的な録音を次々と出すことができた(=売れた)幸せな時代。アラン・ギルバートがニューヨーク・フィルの音楽監督になったそうだけれど、彼のCDってそんなに出ていないでしょ?前任者の巨匠マゼールだって、このオーケストラとの録音はほとんど出なかったはず。やはりナマを聴いてあげなくっちゃいけないな。

(2009年4月10日)

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written by wabisuke hayashi