Liszt ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調/第2番イ長調
(スヴャトスラフ・リヒテル(p)/キリル・コンドラシン/ロンドン交響楽団)


PHILIPS PHS 900-000 Liszt

ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
ピアノ協奏曲第2番イ長調

キリル・コンドラシン/ロンドン交響楽団(1961年)

Beethoven

ピアノ・ソナタ第10番ト長調 作品14-2/第19番ト短調 作品49-1/第20番ト長調 作品49-2(1963年)

スヴィヤトスラフ・リヒテル(p)

PHILIPS PHS 900-000

 20年余年ぶりの再聴。これはSviatoslav Richter(1915ー1997露西亜?)の代表的録音であり、音質的条件が整ったものでしょう。輝かしい音質はMercury録音だったはず。両作品とも単一楽章風に続けられるラプソディックな作品、ほぼ三管編成によるけっこう大きな伴奏でした。腕利きピアニストの登竜門(宣伝)みたいな作品でしょう。威圧感にピアノの技巧をひけらかす空虚な作品・・・そんな先入観を一掃させるリヒテルの息詰まるような技巧のキレ、圧巻の熱狂的な集中力、華やかなスタンウエイに非ず、ちょいと味のあるベーゼンドルファーですよね。

 ピアノ第1番変ホ長調協奏曲。冒頭の金管が響きがちょっぴり濁るけれど、圧巻の低音と厚みあるリアルなオーケストラ。がっちり芯を感じさせる硬質なタッチが輝かしい。自分はLiszt苦手〜そんな思いを一発で吹き飛ばして作品そのものを大好きにさせる魔力。オモロない四角四面な旋律だけど、キレキレっのテクニックがド迫力な「Allegro maestoso」(5:00) 「Quasi adagio - Allegretto vivace」は超絶デリケートな抑制(3:59)トライアングルが印象的に始まる「Allegro marziale animato」のソロには曖昧さや流したところは一切存在しない、華やかな技巧が疾走します。(4:16)

 第2番イ長調協奏曲のほうが浪漫の旋律は優雅に漂って、作品的にはもうちょっとステキに感じます。しみじみと木管が歌う始まりの「Adagio sostenuto assai - Allegro agitato assai」はゆったり落ち着いて剛直なピアノのアルペジオが印象的。ホルンやチェロも優雅に絡みました。やがてピアノも管弦楽も激昂して圧巻の対話が続きます。(7:18)「Allegro moderato - Allegro deciso」この静謐な緩徐楽章部分は前楽章の旋律を受けて輝かしく、デリケートなピアノに、チェロ・ソロが優しく、静かに寄り添います。(4:57)「Marziale un poco meno allegro -」は大柄な歩みに始まって、やがて強烈なピアノ・ソロが叩きつけるように熱く、デーハーに爆発いたしました。やがて冒頭の旋律が戻って懐かしく収束して優しく(6:41)「Un poco meno mosso - Allegro animato」ラストは細かい音型が鮮やかなテクニックに乗って、輝かしく走り出して圧巻のフィナーレを迎えました。(1:54)

 Beethovenのピアノ・ソナタが意外にも可愛らしい、まるでMozartのような作品揃えて、いずれも初心者向けの練習用作品なんだそう。リヒテルの表現は軽妙にデリケート、そして曖昧さのない強靭なテクニックに力強い。音質はかなり良好、PHILIPS録音でしょうか。Lisztには申し訳ないけれど、Beethovenの天才をはっきり確認いたしました。
 ト長調ソナタは優雅に歩みだす「Allegro」(5:36)「Andante」は弾むようリズムに始まる可憐な変奏曲(5:13)気紛れに転がるような「Scherzo, Allegro assai」(3:10)に締め括りました。
 ト短調ソナタは途方に暮れたような「Andante」から始まって(5:27)晴れやかに駆け出すような「Rondo. Allegro」に締め括りました。(3:10)
 ト長調ソナタは明るく軽妙に、ほのぼのとしたテイストを感じさせて始まる「Allegro ma non troppo」(4:23)「Tempo di Menuetto」は七重奏曲 変ホ長調と同じ、有名な夢見るような旋律。とんでもないところで懐かしい知り合いに出会った感じでした。(3:44)

(2025年7月5日)


Liszt

ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
ピアノ協奏曲第2番イ長調

スヴャトスラフ・リヒテル(p)/コンドラシン/ロンドン交響楽団

エールディスク GRN-564 1961年PHILIPS録音  中古250円

 

 これは十数年間に渡って「いつかは買おう」と思っていた馴染みの、しかも定評ある録音。海賊盤でごめんなさい。いや、もうこれはコメント不要のモウレツ情熱演奏でした。ライヴの熱狂的支持を背景に、別途正式録音されたものだと記憶しております。集中力が凄い。瑞々しい!セクシー!Lisztは苦手!なんて有無を言わせぬ怒濤の迫力テクニックの輝き魅力横溢。コンドラシンのバックがまた(良い意味で)濃厚。(CLASSIC ちょろ聴き(25))

 壮絶な演奏を。これは数十年前から知っていたけれど、昨年末ようやく手に入れたもの。硬質で輝かしい音色が強靱で、それは安物の輝きではでない、鍍金(メッキ)じゃないんです。「Lisztが好きとか嫌いとか云々」とか有無を言わせぬ、絶対的な説得力があって目眩しそう。テクニックがどうの、とか評論不能。録音もオーケストラも最高。曲的には第2番がいっそうアツい。(音楽日誌2004年3月)

 ・・・ここまで絶賛しておいて、ちゃんと正規盤買えよな・・・と言われても仕方がない、久々文句なし一枚!Lisztは苦手、と言い続けて幾数十年・・・正直この作品だってそう好みじゃないんです。でも、この演奏なら痺れます。何度でも聴きたい。上記、二回にわたるコメントでこれ以上付け加えることはないが、テクニックが単に「上手い」とか「指がよく回る」という水準を凌駕していて、それは、すべて音楽の美しさに奉仕するために存在するんです。

 「有無を言わせぬ怒濤の迫力テクニックの輝き魅力横溢」「硬質で輝かしい音色が強靱」〜その通り。細部まで正確であること、豊かに歌うことの完全統合。技術が完璧であるからこその、瑞々しい響き。一本ど〜んと、ぶっとい芯が通って盤石の自信と確信有。しかし、余計なるテンポの動きやら、煽りなど存在しません。「Lisztなんてツマらない」って思ってきました。(いまでも時にそう思うこと有)でも、おそらくそれは「Lisztをツマらなく演奏している」ことに過ぎないのでしょう。「展覧会の絵」でもそう思った(とうとうCD買いましたよ)が、リヒテル以外の演奏では、この曲もう聴けない・・・かも。

 印象強烈なるピアノだけれど、華やかで輝かしい音色〜というのでもないんです。ピアノのメーカーはようわからんが、スタインウェイではないはず。こうしてみると第2番イ長調は、浪漫的で叙情的な旋律美しいですね。いくらでも甘く仕上げられそうな作品だけれど、リヒテルはあくまで硬派。真正面攻撃。細部まで細かいニュアンスに欠けることはないが、妙な色気を付加することはないんです。

  録音は信じられないくらい極上でした。コンドラシン指揮のロンドン響は洗練と骨太が共存しております。モントゥー時代、もっとも色気のあった時代なんです。この生気に充ちたアンサンブルは、聴き手を陶酔と官能と興奮の坩堝(るつぼ)に叩き込むこと必定の棲演。別に、新たに一項目立てて更新するほどの新ネタではないが、いやはやとにかく驚愕の時間が過ごせること完全保証の一枚に、是非言及したい思いでいっぱいの更新でした。お粗末。

 リヒテル、だ〜い好き!。

(2004年4月14日)


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written by wabisuke hayashi